答弁本文情報
平成二十八年十二月二十日受領答弁第二一二号
内閣衆質一九二第二一二号
平成二十八年十二月二十日
衆議院議長 大島理森 殿
衆議院議員逢坂誠二君提出政府の原発の発電コストに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員逢坂誠二君提出政府の原発の発電コストに関する質問に対する答弁書
一から五までについて
各電源の発電コストについては、平成二十七年五月に総合資源エネルギー調査会基本政策分科会長期エネルギー需給見通し小委員会発電コスト検証ワーキンググループ(以下「発電コスト検証ワーキンググループ」という。)が取りまとめた報告において試算を行っている。この中で、原子力発電の発電コストについてはキロワットアワー当たり十・一円以上と試算している。
この原子力発電の発電コストは、資本費(キロワットアワー当たり三・一円)、運転維持費(キロワットアワー当たり三・三円)、追加的安全対策費(キロワットアワー当たり〇・六円)、核燃料サイクル費用(キロワットアワー当たり一・五円)、立地対策や研究開発等に係る政策経費(キロワットアワー当たり一・三円)及び賠償や除染・中間貯蔵等に係る事故リスク対応費用(キロワットアワー当たり〇・三円以上)の各費目を算入したものである。
また、当該試算に際して行った感度分析により、事故リスク対応費用が将来仮に増加した場合の発電コストへの影響を機械的に算出することができるようになっており、平成二十八年十二月九日に開催された第六回東京電力改革・一F問題委員会では、この感度分析と同様の考え方に基づいて、東京電力ホールディングス株式会社の福島第一原子力発電所の事故に関連する費用(以下「福島事故関連費用」という。)が一兆円増加した場合に、発電コスト検証ワーキンググループの試算の基となる原子力発電のモデルプラントの発電コストがキロワットアワー当たり〇・〇一円から〇・〇三円増加するという試算を提示している。その試算に従うと、仮に福島事故関連費用が十兆円増加した場合には、原子力発電の発電コストはキロワットアワー当たり十・二円から十・四円となる。
平成二十三年三月十一日時点における実用発電用原子炉は合計五十四基であり、営業運転開始から同日までの平均稼働期間は、およそ二十五年である。
お尋ねの「「過酷事故」が起きる確率」の意味するところが必ずしも明らかではないため、一概にお答えすることは困難であるが、発電コスト検証ワーキンググループの検証では、事故リスク対応費用の算出に当たって、国際的な安全目標として炉心損傷頻度や大規模放出頻度が一万炉・年から百万炉・年に一回と設定されていることや、確率論的リスク評価を総合的に勘案し、十分に保守的に見積もり四千炉・年に一回事故が起きた場合に対応することを想定した試算を行っている。
発電コスト検証ワーキンググループにおける原子力発電の発電コストの算出に当たって、建設費は、直近に営業運転を開始した国内の原子力発電所四基のデータを基に物価等の補正を行い、一基当たり四千四百四十億円と算出しており、また、東京電力ホールディングス株式会社の福島第一原子力発電所の事故を踏まえた安全対策に係る費用は、最新の見通しを電力会社に聴取した結果を基にして、一基当たり約千億円と算出している。
発電コスト検証ワーキンググループにおける原子力発電の発電コストの算出に当たっては、算出時点の政府予算を基に「もんじゅ」に関する研究開発費を含む核燃料サイクルに関する費用についても政策経費として算入している。
発電コストの試算については、平成二十三年十二月にコスト等検証委員会が取りまとめた報告書において、将来の見通しを示すことが可能なモデルプラントを基にした試算を基本としつつ、参考として発電実績や有価証券報告書の財務諸表等を基にした試算も示している。
他方で、発電コストの検討に当たっては、事業開始から終了までのライフサイクル全体で考える必要があるが、発電実績等を基に発電コストを算出する場合、コスト等検証委員会でも議論があったように、個々の発電所の経過年数等によって発電コストが大きく異なることになることから、将来の電源選択に係る政策検討に当たって発電実績等のみを基にした試算を用いることは必ずしも適切ではないと考えている。