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令和四年六月二十四日受領
答弁第一二八号

  内閣衆質二〇八第一二八号
  令和四年六月二十四日
内閣総理大臣 岸田文雄

       衆議院議長 細田博之 殿

衆議院議員宮本徹君提出東京外かく環状道路大泉JCT発進シールドマシンの損傷並びに掘進停止に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員宮本徹君提出東京外かく環状道路大泉JCT発進シールドマシンの損傷並びに掘進停止に関する質問に対する答弁書


一について

 東京外かく環状道路のうち東京都練馬区から同都世田谷区までの区間(以下「東京外環(関越〜東名)」という。)の工事における同都調布市での地表面の陥没及び地中の空洞に関する事故(以下「陥没事故」という。)の原因については、令和三年三月に開催された「東京外環トンネル施工等検討委員会 有識者委員会」において、特殊な地盤条件下においてシールドカッターが回転不能になる閉塞を解除するために行った作業に起因するものと確認されているが、発注者である東日本高速道路株式会社及び施工者において、陥没事故発生のメカニズムを事前に想定できなかったものと承知している。
 同年十二月には、国土交通省関東地方整備局、同社関東支社及び中日本高速道路株式会社東京支社が「東京外環トンネル施工等検討委員会」を開催し、発注者及び施工者としての再発防止対策を取りまとめており、今後、各発注者及び各施工者が当該再発防止対策に基づいて適切にシールドトンネルの施工を行うことにより、東京外環(関越〜東名)の工事の施工は安全に実施されるものと認識している。
 また、本線トンネル(南行)大泉南工事において、令和四年四月七日に判明した、当該工事のシールドマシンが、大泉ランプと本線トンネルが合流する区間の工事のためにあらかじめ設置していた硬質ウレタン製の地中壁の切削を行っていたところ、当該シールドマシン前面のカッターが鋼材に接触した事象(以下「今般の接触事象」という。)の原因については、地中壁が設置された位置について設計値との差異が生じていたことが原因であると判明しているが、当該工事の施工者において、当該地中壁が設置された位置を決めた設計とトンネルの中心位置を決めた設計が同一の受注者であるパシフィックコンサルタンツ株式会社により実施されていたところ、これらの設計等に誤りがあると疑いを持つに至らなかったと承知している。
 今後、東京外環(関越〜東名)の工事の施工については、@同様の硬質ウレタン製の地中壁は、東京外環(関越〜東名)で十三箇所設置されることが計画されており、このうち施工が行われている七箇所については、トンネルの中心位置との整合性を確認しており、今後施工される六箇所についても同様の確認をする予定であること及びA硬質ウレタン製の地中壁に限らず、東京外環(関越〜東名)の工事の設計について、設計業務の受注者による照査と施工者による照査を改めて徹底することにより、安全に実施されるものと認識している。

二について

 「地中の支障物にシールドマシンが接触し、トラブル並びに事故が発生した国内、国外での過去の事例について関係各省で把握している事例を全て列挙されたい」とのお尋ねについては、調査に膨大な作業を要することから、お答えすることは困難であるが、例えば、国土交通省関東地方整備局管内では、横浜湘南道路トンネル(その二)工事において、令和元年十一月二十日にシールドマシンが神奈川県藤沢市大鋸地先の二級河川境川を横断している際に、地中に存置された鋼材と接触し、掘進を停止した事例がある。
 御指摘の「地中の支障物に対して安全な施工」を行うためには、「シールドトンネル工事の安全・安心な施工に関するガイドライン」(令和三年十二月シールドトンネル施工技術検討会策定)(以下「シールドトンネルガイドライン」という。)において記載されているとおり、例えば、調査面では、「シールドトンネルの掘削断面において支障となる諸物件を十分に調査した上で、必要な対策を講じること」、また、施工面では、「切羽圧力」、「排土量」等の「複数の項目を総合的に計測・分析し、異常の兆候の早期感知に努め、確認された場合には、速やかに関係者間で共有しその解消に努めるとともに、兆候が継続する場合には、その要因を明らかにした上で対策を検討し講じること」が必要であると認識している。

三について

 お尋ねに関しては、埋設物の施設管理者の管理図等を確認した限りにおいては、今後の掘進ルートに支障物はないと認識している。

四について

 東京外環(関越〜東名)の工事の施工については、一についてで述べたとおり、安全に実施されるものと認識しているところ、お尋ねについては、仮定の質問であり、住宅地の状況やシールドトンネルの施工の条件により、個別に判断されるものであるため、お答えすることは困難である。

五について

 シールドマシンが掘進する際に支障物を未然に察知し、掘進を停止する等の技術は確立されていないと承知しているが、シールドマシンが一定以上の大きさと硬さがある支障物に接触した場合については、一についてで述べた再発防止対策において示されている、「カッタートルク」や「シールドジャッキ」の「推力」等の施工データにより、当該接触を感知できるものと認識している。
 また、本線トンネル(南行)大泉南工事においても、東日本高速道路株式会社及び施工者が、こうした施工データを含め、二についてで述べた「切羽圧力」、「排土量」等の複数の項目を確認しながら掘進しているものと承知している。

六の1について

 御指摘の「精確に確認」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、「H二六外環大泉JCT地区構造物設計業務」においては、受注者であるパシフィックコンサルタンツ株式会社から、発注者である国土交通省関東地方整備局東京外かく環状国道事務所に、トンネルの中心位置に誤りがある図面が納品されたところであるが、当該設計業務における照査については、発注者が所要の費用を負担した上で、受注者の照査技術者が行う契約となっており、発注者である同事務所は、受注者である同社から、当該設計業務における照査を実施したという報告を受けているところである。

六の2について

 お尋ねの「CAD」については、Computer Aided Designの略語のことであると考えられるが、「電子納品運用ガイドライン【業務編】」(令和四年三月国土交通省大臣官房技術調査課)において、「設計者がコンピュータの支援を得ながら設計を行うシステムのこと」とされている。
 「H二六外環大泉JCT地区構造物設計業務」の受注者であるパシフィックコンサルタンツ株式会社によると、当該設計業務において使用した書類作成ソフトウェア名及びバージョンは、Autodesk AutoCAD 2013 - Japaneseであるとのことだが、当該ソフトウェアは御指摘の「設計上のトンネルの中心位置と作成した図面の中心がずれていた場合、警告が発せられるような仕様」ではなかったと承知している。また、「このような仕様はそもそも困難なことなのか」とのお尋ねについては、政府としては承知していない。

六の3について

 お尋ねの「図面の作成」については、「H二六外環大泉JCT地区構造物設計業務」の受注者であるパシフィックコンサルタンツ株式会社が行ったものである。

七について

 今般の接触事象については、一についてで述べたとおり、地中壁をシールドマシンで切削する際、当該シールドマシンが鋼材に接触したものであるが、仮設構造物である当該地中壁は、御指摘の「トンネル標準示方書」に記載のある「地中支障物」とは扱いが異なるものと認識している。
 なお、シールドマシンが当該地中壁に到達する前に、施工者において、当該地中壁の頭部を露出させて平面位置を確認するとともに、施工記録から当該地中壁が設計図どおり施工されていることを確認していたと承知している。

八について

 お尋ねの掘進の際に「計測並びに監視している施工データ」については、一についてで述べた再発防止対策において示されている、「カッタートルク」、「シールドジャッキ」の「推力」、「掘進速度」、「マシン方向制御」の「方位」、「ピッチング」、「ローリング」及び「位置計測」、「チャンバー内圧力」、「排土管理」の「排土重量」、「掘削土体積」及び「排土率」、「土砂性状」、「裏込注入工」の「注入圧」及び「注入量」並びに「地表面変位」に加え、シールドトンネルガイドラインにおいて示されている、「テールクリアランス」であると承知している。
 なお、お尋ねの「損傷が起きた際」については、硬質ウレタン製の地中壁の切削に伴い、「カッタートルク」について管理値内で緩やかな上昇が見られたものと承知している。

九について

 令和四年六月二日に、国土交通省関東地方整備局、東日本高速道路株式会社関東支社及び中日本高速道路株式会社東京支社が「東京外環トンネル施工等検討委員会」を開催し、同検討委員会において同年二月二十五日からシールドマシンが停止する同年四月七日までの施工データを示しているところであり、また、その後、当該施工データが掲載されている同検討委員会の資料について同局東京外かく環状国道事務所のホームページにおいて公表しているところ、当該施工データについて、「国民が検証等を行う上できわめて不十分なものである」との御指摘は当たらないと考えている。

十について

 お尋ねの「経過」については、令和四年四月七日に損傷したシールドマシンの部材及び地中壁の鋼材が掘削土砂から見つかったとシールドトンネルの施工者から東日本高速道路株式会社に報告があったため、同社は、同日、シールドトンネルの施工者に対して、直ちにシールドマシンを停止するよう指示を出すとともに、巡回や地表面変位計測により今般の接触事象の発生箇所周辺の地表面に変状がないことを確認し、その旨を国土交通省に対して報告したと承知している。その後、シールドトンネルの施工者、地中壁の設計者及び施工者並びに発注者間において損傷の原因を確認したところ、地中壁が設置された位置について設計値との差異が生じており、このためシールドマシンのカッターが地中壁の鋼材に接触したことが判明したため、同月十二日に同省関東地方整備局及び同社関東支社が記者発表を行ったものである。当該記者発表の後、シールドトンネルの施工者、地中壁の設計者及び施工者並びに発注者間において事実の確認を進め、当該確認が終わった後の同月二十八日に、損傷の原因と補修の状況等について、同局及び同支社が再度記者発表を行ったものである。
 また、これらの記者発表の内容については、同局東京外かく環状国道事務所及び同社のホームページ並びに工事箇所の掲示板に掲示するとともに、同支社東京外環工事事務所が、シールドトンネルの工事箇所周辺の各戸に対して発表資料を配布し、周知したところであると承知している。

十一について

 今般の接触事象により追加的に必要となる費用については、シールドマシン内部まで詳細な損傷状況を確認する必要があり、現時点では算出が困難である。
 また、当該費用の負担の在り方については、今後、関係者間で協議していくことになると承知している。

十二について

 今般の接触事象の原因と補修の状況等を取りまとめた令和四年四月十二日及び同月二十八日の記者発表の内容については、十についてで述べたとおり、シールドトンネルの工事箇所周辺の各戸に対して周知したところであると承知している。
 また、東日本高速道路株式会社関東支社東京外環工事事務所が、シールドトンネルの工事箇所周辺の住民の方々を対象に、今般の接触事象の原因と補修の状況等を個別に説明するための相談窓口を同年五月十三日及び十四日に開設したと承知している。

十三について

 そもそも、事業評価においては、貨幣換算した便益を費用で除した費用便益比は重要な要素の一つであるが、事業評価は、これに限らず、環境への影響、災害時における人や物資の輸送の確保といった貨幣換算が困難な効果、さらには、事業の実施環境等の視点により総合的に実施するものである。その上で、今後、東京外環(関越〜東名)の工事を進める中で、現場の状況変化等により、事業費の変更が見込まれる場合には、適切に事業評価を実施してまいりたい。
 また、東京外かく環状道路は、首都圏の渋滞緩和、環境改善及び円滑な交通ネットワークを実現する上で、重要な道路であると認識しており、安全に注意しながら、工事を進めてまいりたい。

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