答弁本文情報
令和六年四月二十六日受領答弁第八一号
内閣衆質二一三第八一号
令和六年四月二十六日
内閣総理大臣 岸田文雄
衆議院議長 額賀福志郎 殿
衆議院議員中谷一馬君提出競馬の払戻金に対する課税等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員中谷一馬君提出競馬の払戻金に対する課税等に関する質問に対する答弁書
一について
お尋ねの「公営競技の払戻金」の金額については、所得税法(昭和四十年法律第三十三号)上の利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得に係る収入金額に該当しないものと考えられることから、同法第三十四条第一項の「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないもの」に係る収入金額に該当する場合には一時所得に係る収入金額に、それ以外の場合には同法第三十五条の規定により雑所得に係る収入金額に、それぞれ該当するものと考えている。
二について
所得税の課税については、所得税法において、所得がその源泉、性質等により十種類に分類され、各所得区分に応じた課税標準の計算方法等が定められており、その上で、同法の適用においては、御指摘の「馬券の払戻金」のような個々の収入に係る所得について、個別具体的な事情に応じ、当該収入に係る所得の源泉、性質等を踏まえて判断されるべきものと考えている。そのため、一般的に、個々の収入に係る所得がどの所得区分に該当するかを法令で一律に定めることは、むしろ、当該所得について、その源泉、性質等を踏まえた適正な課税を行うことが困難になるおそれがあると考えている。その上で、勝馬投票券の払戻金に係る課税上の取扱いについては、所得税基本通達において国税庁長官の解釈を示すことで、取扱いの統一や明確化を図っているところである。
三について
御指摘の「競馬をはじめとする公営競技」の払戻金の金額については、当該払戻金に係る源泉、性質等を踏まえ、一についてで述べたとおり、一時所得又は雑所得に係る収入金額に該当するものと考えているところ、当該払戻金に係る源泉、性質等は、課税のため必要な情報の収集に係る環境により変わることはないため、御指摘の「購入手続のデジタル化によって払戻金額や当該投票券の購入者の態様を捕捉・把握する環境が整いつつある」か否かにかかわらず、お尋ねの「現状の課税関係」を変更するような「制度見直し」を行うことは考えていない。
四及び五について
所得税は、全ての所得を課税対象とすることを基本的な原則としており、個人が稼得した収入に係る金額から当該収入を得るために支出した金額等を控除した金額について、当該個人が得た経済的価値である所得と捉え、当該所得に税を負担する能力を見出し、課税するものである。このような考えから、所得税法上、勝馬投票券の払戻金に係る所得についても、他の所得と合算し、課税することとされている。こうした課税上の取扱いについては、所得税基本通達の制定及び改正や、国税庁ホームページ等における周知・広報により、取扱いの明確化と納税者の予測可能性の向上を図っている。また、国税当局においては、様々な機会を通じて課税上有効な各種資料情報の収集に努め、これらの資料情報と提出された確定申告書等を分析し、課税上問題があると認められる場合には、税務調査を行うなどして、適正かつ公平な課税の実現に努めている。こうしたことから、御指摘の「馬券をめぐる課税関係」等について見直しを必要とする問題があるとは考えておらず、御指摘の「源泉分離課税による源泉徴収制度等」を導入すること、「非課税とすること」、「払戻金を所得税非課税とした上で馬券税を導入すること」等を行うことは考えていない。
六について
所得税法においては、所得がその源泉、性質等により十種類に分類され、各所得区分に応じた課税標準の計算方法等が定められている。この所得区分の見直しについては、令和元年五月三十日の参議院財政金融委員会において、麻生財務大臣(当時)が「この十種類の所得区分というものをベースとした所得税の仕組みというのは、長年にわたってこれ定着しているものでもありますので、所得区分の在り方というものにつきましては、これは納税者への影響等々・・・を見極めつつこれは今後も慎重に対応すべきもの、これは前からお答え申し上げているとおりであります」と答弁したとおりである。