答弁本文情報
令和六年六月二十一日受領答弁第一三六号
内閣衆質二一三第一三六号
令和六年六月二十一日
内閣総理大臣 岸田文雄
衆議院議長 額賀福志郎 殿
衆議院議員阿部知子君提出技能実習生・留学生らの妊娠・出産に関する抜本的な対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員阿部知子君提出技能実習生・留学生らの妊娠・出産に関する抜本的な対策に関する質問に対する答弁書
一の1について
御指摘の「@妊娠・出産を理由に「技能実習困難時届」が出された数のうち、A「技能実習の継続意思を有するもの」、さらにB「技能実習を再開する技能実習計画の認定が確認できたもの」の集計結果」については、技能実習を中断した技能実習生が、技能実習を継続する意思を有しない理由や、当該意思を有する場合でも結果的に技能実習を再開しない理由は様々なものがあり得るところ、「技能実習困難時届」及び「技能実習計画の認定」の件数を集計した結果のみをもって、例えば御指摘の「法令順守」の状況や「技能実習生が妊娠・出産後に実習を継続できるよう改善が見られた」か否か等を評価することは困難であるため、御指摘の「実習を再開できない理由を精査」することはできず、また、当該集計結果を「定期的に公開する」必要があるとは考えていない。なお、技能実習の再開を希望する技能実習生が何らかの理由で技能実習を再開できない等の問題が生じた場合には、当該技能実習生からの相談を受けた監理団体(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(平成二十八年法律第八十九号。以下「法」という。)第二条第十項に規定する監理団体をいう。以下同じ。)又は外国人技能実習機構(以下「機構」という。)において、技能実習を再開できない理由等を把握した上で適切に対処することとしている。
一の2について
法第十九条第一項又は第三十三条第一項の規定に基づき実習実施者(法第二条第六項に規定する実習実施者をいう。以下同じ。)又は監理団体が機構に対して行った技能実習を行わせることが困難となった場合(我が国に入国しておらず技能実習の開始前であることが明らかな技能実習生に係るものを除く。)の届出のうち、その届出内容から、妊娠又は出産を理由とすることが把握できるもの(技能実習生本人以外の妊娠又は出産であることが明らかなものを除く。以下「本件届出」という。)に係る人数は、法が施行された平成二十九年十一月一日から令和五年三月三十一日までの間において二千六十二人であり、そのうち令和四年四月一日から令和五年三月三十一日までの間において六百二十八人である。また、本件届出の時点で技能実習を継続する意思を有していたと確認できた技能実習生の人数は、平成二十九年十一月一日から令和五年三月三十一日までの間において二百四十四人であり、そのうち令和四年四月一日から令和五年三月三十一日までの間において百十人である。さらに、上述の二百四十四人のうち、令和五年三月三十一日までの間において、本件届出後に新たに技能実習計画の認定(法第八条第一項に規定する技能実習計画の認定をいう。)を受けて技能実習を再開した者は七十一人である。その上で、一の1についてで述べたとおり、これらの件数のみをもって、例えば御指摘の「法令順守」の状況や「技能実習生が妊娠・出産後に実習を継続できるよう改善が見られた」か否か等を評価することは困難であると考えている。出入国在留管理庁、厚生労働省及び機構においては、これまで、技能実習生が妊娠、出産等した場合における法的保護、支援制度、相談先等を記載したリーフレットの作成、やむを得ない理由により技能実習を中断した場合の再開の手続の簡素化、実習実施者及び監理団体に対する妊娠、出産等を理由とした不利益取扱いの禁止の徹底等の注意喚起等を実施してきたほか、機構において技能実習生の母国語による相談対応を実施しているところであり、政府としては、こうした取組を進めることが重要であると考えている。
二の1について
御指摘の調査の結果については、重く受け止めている。
二の2について
御指摘の調査結果を踏まえ、出入国在留管理庁、厚生労働省及び機構においては、令和四年十二月二十三日、実習実施者及び監理団体に対し、改めて、技能実習生が妊娠、出産等した場合における法的保護、支援制度、相談先等を記載したリーフレットや技能実習生手帳を用いて、妊娠、出産等に係る各種制度の説明を技能実習生に対し行うよう求めるとともに、技能実習生と送出機関(法第二十三条第二項第六号に規定する外国の送出機関をいう。)との間における妊娠、出産等に係る不適正な内容を含む契約の締結等を把握した場合には、その内容を機構に対し報告をするよう求めた。
その上で、出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣は、法第十五条第一項に規定する改善命令又は法第十六条第一項に規定する実習認定の取消しを、法務大臣及び厚生労働大臣は、法第三十六条第一項に規定する改善命令又は法第三十七条第一項に規定する監理許可の取消しを実施することも視野に入れつつ、機構による実習実施者又は監理団体に対する法第十四条第一項に規定する実地検査等において、妊娠、出産等を理由とした不適正な取扱いなど、法に違反する行為の有無を確認している。
三について
御指摘の「現状把握のための調査実施」及び「留学生施策の中での対応」については、その必要性も含め、今後検討してまいりたい。
四について
外国人及び御指摘の「受け入れ機関」等を含む関係者に対しては、出入国在留管理庁において、「生活・就労ガイドブック」や「外国人生活支援ポータルサイト」により多言語で情報を提供しており、技能実習生に対しては、同庁、厚生労働省及び機構において、技能実習生が妊娠、出産等した場合における法的保護、支援制度、相談先等を記載したリーフレットや技能実習生手帳を通じて多言語で情報を提供している。
お尋ねの「受け入れ機関における教育や研修」については、その意味するところが必ずしも明らかではないが、実習実施者が技能実習を行わせる事業所ごとに選任することとされている技能実習の実施に関する責任者、監理団体が監理事業を行う事業所ごとに選任することとされている監理責任者等については、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則(平成二十八年法務省・厚生労働省令第三号)第十三条、第五十三条第二項等の規定に基づき、少なくとも三年ごとに、法務大臣及び厚生労働大臣が告示で定める講習を修了しなければならないこととされており、当該講習において、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和四十七年法律第百十三号)や労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)を含めた労働関係法令に関する科目を受講することとされている。
お尋ねの「相談体制の改善策」については、地方公共団体に対して外国人受入環境整備交付金を交付し、外国人や関係者に対し多言語で相談に対応する窓口の設置運営を支援するほか、通訳が必要な地方公共団体が電話による通訳を利用できるように措置するなど、外国人及びその関係者を対象とした相談体制の整備に取り組んでおり、政府としては、こうした取組を進めることが重要であると考えている。