答弁本文情報
令和六年十二月十日受領答弁第一三号
内閣衆質二一六第一三号
令和六年十二月十日
内閣総理大臣 石破 茂
衆議院議長 額賀福志郎 殿
衆議院議員原口一博君提出食料・農業・農村政策に係る政府の基本的認識に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員原口一博君提出食料・農業・農村政策に係る政府の基本的認識に関する質問に対する答弁書
一の1について
御指摘の「相続に伴う農地の課題」については、相続登記がなされないことにより農地の所有者等を確知することができなくなり、当該農地を有効活用するための利用調整が困難となるおそれがあることから、相続登記がなされない農地の発生を防ぐことが重要と認識しており、その「解決策」として、令和六年四月から義務化された相続登記の申請について、その周知及び適正な運用の確保を行うとともに、地域の農業の将来の在り方を定める地域計画(農業経営基盤強化促進法(昭和五十五年法律第六十五号)第十九条第一項に規定する地域計画をいう。以下同じ。)の策定を推進し、当該地域において農業を担う者ごとに利用する農地を明確化した上で、農地中間管理事業の推進に関する法律(平成二十五年法律第百一号)第十七条第二項の規定に基づき、地域計画の区域において農地中間管理事業(同法第二条第三項に規定する農地中間管理事業をいう。)を重点的に行い、農業の担い手への農地の集積・集約化を図ることにより、御指摘の「農地面積の減少」を抑制していく考えである。
一の2について
御指摘の「令和三年度に実施した相続未登記農地等の実態調査」と同様の調査については、調査を行う農業委員会等の負担も考慮し、必ずしも毎年ではなく、必要に応じて行うこととしており、また、相続土地国庫帰属制度(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和三年法律第二十五号)第一条に規定する制度をいう。)又は民法(明治二十九年法律第八十九号)第九百五十九条に基づき国庫に帰属した農地については、その申請手続等により当該農地の所在等を把握しているところである。
さらに、平成二十年から毎年、農林水産省において荒廃農地(現に耕作に供されておらず、耕作の放棄により荒廃し、通常の農作業では作物の栽培が客観的に不可能となっている農地をいう。)の調査を行っていることから、平成二十七年までで終了した御指摘の「耕作放棄地の調査を再開する」ことは考えていない。
二について
御指摘の「我が国農業の五年後、二十年後及びその後の状況」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、「食料・農業・農村基本計画」(令和二年三月三十一日閣議決定)の参考資料である「食料・農業・農村基本計画に係る目標・展望等」において、農業構造の展望等を示しているところであり、これについては、令和六年の食料・農業・農村基本法(平成十一年法律第百六号)の改正を踏まえ行う食料・農業・農村基本計画の策定過程の中で同時に見直すことを検討している。
三について
お尋ねの「十分な施策」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、政府においては、例えば、文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)において、農村の景観を含む「地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形成された景観地で我が国民の生活又は生業の理解のために欠くことのできないもの」を文化財の一つである「文化的景観」として位置付け、その保存が適切に図られるよう努めるなど、お尋ねの「農業に関連する文化や農村における文化」を守るための施策を講じているところである。
御指摘の「農業・農村の多面的機能を維持するための施策」については、政府においては、例えば、農業の有する多面的機能の発揮の促進を図るため、多面的機能支払交付金、中山間地域等直接支払交付金及び環境保全型農業直接支払交付金を措置しているところであり、多面的機能支払交付金については、農業用用排水施設等の管理による当該施設の機能の保持等の効果があり、令和五年度において約二百三十万ヘクタールの農用地の保全又は利用上必要な施設において活用され、中山間地域等直接支払交付金については、中山間地域等における農業生産活動の継続的な実施の推進による農用地の面積の減少防止等の効果があり、令和五年度において約六十五万九千ヘクタールの農用地において活用され、環境保全型農業直接支払交付金については、有機農業等の自然環境の保全に資する農業の生産方式を導入した農業生産活動の実施の推進による地球温暖化の防止等の効果があり、令和五年度において約八万七千ヘクタールの農地において活用されたところである。
四について
一般論としては、農業者の所得を補償する施策については、農業経営の改善に向けた取組を妨げる懸念があること等から、御指摘のように「民主党政権時に実施した農家への戸別所得補償制度を復活させる」ことは考えていない。
五について
御指摘の「主要農作物の種子の安定供給」については、稲、大麦、裸麦、小麦及び大豆の種子の供給に関する都道府県への一律の義務付けを廃止し、多様な需要に応じたこれらの種子の供給体制を構築することで、良質かつ低廉な種子の供給を図ることを目的とした主要農作物種子法を廃止する法律(平成二十九年法律第二十号)の趣旨を踏まえて行われている都道府県及び民間事業者によるこれらの種子の供給及び種苗法(平成十年法律第八十三号)に規定された優良な品質の種子等の流通を確保するための措置に基づき、適切に確保していると承知しており、御指摘のように「廃止された主要農作物種子法を復活させる」必要があるとは考えていない。
六について
御指摘の「従来のものと組成、栄養価等が同様の遺伝子組換え農産物を原料とする加工食品」の意味するところが必ずしも明らかではないが、食品表示法(平成二十五年法律第七十号)第四条第一項の規定により定められた食品表示基準(平成二十七年内閣府令第十号)第三条第二項の表の別表第十七の下欄及び別表第十八の中欄に掲げる加工食品の項の1の三において、「遺伝子組換え農産物が混入しないように分別生産流通管理が行われたことを確認した別表第十七の上欄に掲げる対象農産物を原材料とする場合は、当該原材料名を表示するか、又は、当該原材料名の次に括弧を付して、若しくは容器包装の見やすい箇所に当該原材料名に対応させて、遺伝子組換え農産物が混入しないように分別生産流通管理が行われた旨を表示する。遺伝子組換え農産物が混入しないように分別生産流通管理が行われた旨を表示しようとする場合において、遺伝子組換え農産物の混入がないと認められる対象農産物を原材料とする場合に限り、遺伝子組換え農産物が混入しないように分別生産流通管理が行われた旨の表示に代えて、「遺伝子組換えでない」、「非遺伝子組換え」等遺伝子組換え農産物の混入がない非遺伝子組換え農産物である旨を示す文言を表示することができる。」と規定されており、同項の1の三に規定する「遺伝子組換え農産物が混入しないように分別生産流通管理が行われたこと」が確認されていない原材料を使用した加工食品に「遺伝子組換えでない」と表示することはできない。そのため、御指摘の「遺伝子組換え農産物を原料とする加工食品であっても、組み換えられたDNA及びこれによって生じたタンパク質が、加工後に最新の検出技術によっても検出できない加工食品の原料について「遺伝子組換えでない」との表示を認めている。」という事実はなく、当該事実が存在することを前提としたお尋ねについてお答えすることは困難である。
七について
農林水産省においては、「みどりの食料システム戦略」(令和三年五月みどりの食料システム戦略本部決定)において、「革新的な技術・・・の実用化に際しては、食や環境への安全の確保はもとより、科学的な知見に基づく合意が形成されることが重要であることから、国民への情報発信、双方向のコミュニケーションを丁寧に行うなど不断の取組を進める」こととしており、御指摘の「見直し」が必要であるとは考えていない。
御指摘の「明確な表示」の意味するところが必ずしも明らかではないが、食品表示基準第三条第一項の表の原材料名の項の1の一において、「使用した原材料」を「原材料に占める重量の割合の高いものから順に、その最も一般的な名称をもって表示する」こととされており、御指摘の「コオロギ」が原材料として含まれる場合には、その一般的な名称を表示することが必要である。
また、御指摘の「アレルギー表示」に関し、特定原材料(食品表示基準第三条第二項に規定する同基準別表第十四に掲げる食品をいう。以下同じ。)又はこれに準ずるものとして「食品表示基準について」(平成二十七年三月三十日付け消食表第百三十九号消費者庁次長通知)により表示を推奨する食品(以下「特定原材料に準ずるもの」という。)については、おおむね三年ごとに全国のアレルギーを専門とする医師を対象として実施している「即時型食物アレルギーによる健康被害の全国実態調査」において報告される食物アレルギーの原因となる食品ごとの症例数やこれに占める割合、症状の重篤度や症例数の増加の継続性等を踏まえて、特定原材料又は特定原材料に準ずるものに該当するかどうかを判断しているところ、コオロギは、現時点において、特定原材料又は特定原材料に準ずるものとはしていない。