答弁本文情報
令和七年二月七日受領答弁第一六号
内閣衆質二一七第一六号
令和七年二月七日
内閣総理大臣臨時代理
国務大臣 林 芳正
国務大臣 林 芳正
衆議院議長 額賀福志郎 殿
衆議院議員原口一博君提出原口五原則とマイナンバー制度との整合性に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員原口一博君提出原口五原則とマイナンバー制度との整合性に関する質問に対する答弁書
一について
御指摘の「原口五原則」の趣旨を踏まえた行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号。以下「番号利用法」という。)の条文としては、例えば、「権利保障の原則」については番号利用法第七条及び第八条が、「自己情報コントロールの原則」及び「プライバシー保護の原則」については番号利用法第九条、第十五条、第十九条、第二十条及び第二十三条が、「最大効率化の原則」については番号利用法第八条が、「国・地方協力の原則」については番号利用法第五条及び第二十一条が、それぞれ該当するものと考えている。
二の1のア及びイについて
お尋ねの「再交付の体制」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、個人番号カードは、対面でもオンラインでも安全かつ確実に本人確認ができるデジタル社会の基盤であることから、レーザー光によってカード基材を黒く変質させることでその券面の印字を行う等の運転免許証とは異なる偽造等防止対策が行われている。そのため、個人番号カードの作成については、先の答弁書(令和六年十二月十日内閣衆質二一六第四号。以下「前回答弁書」という。)で述べたとおり、カード発行機等の大規模な専用の設備の設置、盗難防止等のセキュリティ対策の実施、必要な人員の確保等を図った上で、均一な品質が確保される必要があることから、各都道府県警察の運転免許センター等で作成が可能な運転免許証とは異なり、現時点においては、各市区町村において行うことができず、その再交付までに一定の期間が必要となるものであるが、政府としては、個人番号カードの再交付に要する日数を短縮することは重要であると考えており、紛失時等の個人番号カードの交付を速やかに受ける必要がある場合には、原則一週間で再交付を可能とする制度を構築したところである。
二の2のアについて
前回答弁書の二の2のアからウまでについてにおいては、法令において用いられている用語ではない「いわゆる自己情報コントロール権」という概念が意味する内容を確定することが困難であり、また、「関連する仕組み」、「担保に資する仕組み」及び「差別的な取扱いを受けること」の指し示す内容及び範囲が必ずしも明らかではなかったため、その旨を述べたものである。
また、お尋ねの「「様々な見解」として、主要な学説について、政府の把握するところ」については、「主要な学説」の意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難である。
二の2のイ及びウについて
御指摘の「同様の確認」を行う方法としては、デジタル庁の長である内閣総理大臣に対して個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)第七十六条第一項の規定による開示の請求を行う方法があるところ、当該請求に当たっては、書面による手続が必要であり、また、原則として所要の手数料を納付する必要があるが、当該手数料については、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律施行令(平成二十六年政令第百五十五号)第三十三条第一項の規定により、経済的困難により当該手数料を納付する資力がないと認めるときは、免除することができることとされていることから、当該場合以外の場合において、実費の範囲内において定められる当該手数料の負担を求めないこととするまでの必要はないものと考えている。
二の3のアからウまでについて
お尋ねの「命令制定までの過程」及び「国の行政機関及び地方公共団体からの提案を受け付ける体制」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「「準ずる事務」の対象となる事務」については、各府省庁の意見や地方公共団体からの提案等を踏まえ、デジタル庁及び総務省等において協議を行った上で、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第三十九条第四項第一号に該当する場合を除き同法の規定による意見公募手続を行い、当該意見公募手続で提出された意見を十分に考慮して、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律第九条第一項に規定する準法定事務及び準法定事務処理者を定める命令(令和六年デジタル庁・総務省令第八号)において定めることとしている。
二の4のアについて
御指摘の「照会可能な事務」については、番号利用法に基づく主務省令において定められているところ、当該主務省令は「照会可能な事務」の根拠法令の改正等に伴いその都度改正されるものであるため、お尋ねについて網羅的にお答えすることは困難であるが、例えば、令和二年七月三十一日から当該主務省令で定められていた新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成二十四年法律第三十一号)第四十六条第三項の規定により読み替えて適用する予防接種法(昭和二十三年法律第六十八号)第六条第一項の予防接種の実施に関する事務については、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律(令和四年法律第九十六号)第十二条の規定による新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正により当該事務の根拠規定が削除されたことに伴い、令和四年十二月九日に当該主務省令から削除されている。
二の4のイの(1)について
お尋ねの「ファイアウォールの設定」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、デジタル庁において現在運用しているガバメントクラウド(以下「現行ガバメントクラウド」という。)に関する令和五年度のクラウド・コンピューティング・サービスの提供事業者(以下単に「提供事業者」という。)の募集に係る調達仕様書においては、「情報漏洩につながるセキュリティ上の侵害、サービス可用性の低下につながる悪意のあるアクセス、システムリソースの過剰消費等、ウェブアプリケーションの脆弱性を利用した攻撃、及び自動化されたボット等のスキャニングを含むアクセスからウェブアプリケーション、API、エンドポイントを保護するためのWAF(ウェブアプリケーションファイアウォール)を提供可能であること」及び「ステートフルファイアウォールを構成可能であること」を提供事業者が満たすべき要件として設けているところである。
二の4のイの(2)について
御指摘の「当該クラウドサービスの管理者権限」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難である。
二の4のイの(3)について
現行ガバメントクラウドにおいても、御指摘の「ブロックチェーン技術」を活用して情報システムの整備を行うことは可能であるが、その活用については、ガバメントクラウドを利用して整備が行われる個別の情報システムの構成等に応じ、当該情報システムの整備を行う者において適切に判断されるべきものであると考えている。
三の1のアについて
御指摘の「当該通知に示されたこれらの対応」については、厚生労働省において広報啓発用リーフレットを作成し、医療機関等を通じて配布するなどにより、国民への周知・広報を行っている。
三の1のイについて
御指摘の「災害による通信障害等」の場合における資格確認については、令和六年十月三十一日に開催された第百八十四回社会保障審議会医療保険部会の資料二において記載しているとおり、「何らかの事情でオンライン資格確認を行えなかった場合」には、「マイナポータル画面」や「マイナポータルからダウンロードしたPDFファイル」に記録された自身の資格情報を提示する方法のほか、「資格情報のお知らせ」を提示する方法等による資格確認が可能であり、引き続き、複数の方法による資格確認が可能であることを周知してまいりたい。
三の2について
お尋ねの「「従来の健康保険証」のなりすましによる不正利用の件数」については、全ての保険者の状況を網羅的に把握しているわけではないが、例えば、国民健康保険においては、令和四年度までの過去五年間で五十件の不正利用が確認されていると承知している。また、お尋ねの「「マイナ保険証」の利用が、当該不正利用の防止に資すると考える根拠」については、令和六年五月十日の衆議院法務委員会厚生労働委員会連合審査会において、政府参考人が「現行の保険証は、券面には氏名、生年月日、性別は記載されておりますけれども、顔写真がなく、医療機関を受診する際に資格確認において成り済ましのリスクがあるとかねてから指摘されているところでございます。・・・マイナ保険証につきましては、オンライン資格確認を実施することによりまして、顔写真を用いて顔認証を行ったり、あるいは四桁の暗証番号を入力する、こうした措置が講じられることになりますので、成り済ましを防ぎ、電子的かつ確実な本人確認を行うことが可能と考えてございます」と答弁しているとおりである。
三の3のアについて
前回答弁書の三の4についてにおいては、各保険者での健康保険証の発行に係る事務の状況によって「御指摘の「従来の健康保険証」についても「被保険者の資格取得」から交付までに御指摘のような「一定程度の時間」を要する場合があると考えて」いる旨を答弁したものであり、「詭弁」との御指摘は当たらない。
三の3のイ及びウについて
お尋ねの「かえって我が国における医療DXの推進を阻害してしまっている」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「マイナ保険証」については、患者本人の健康や医療に関するデータに基づいたより適切な医療を受けることが可能となることに加え、患者が保険医療機関等の窓口で限度額適用認定証がなくても高額療養費制度における限度額を超える支払の免除を受けることが可能となるといった、御指摘の「電子カルテや電子処方箋の普及」を前提としないメリットが存在し、また、今後、保険医療機関等における電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスの普及によって、「マイナ保険証」を利用した際に、直近の処方又は調剤に係る情報の即時共有や他の保険医療機関等において必要な「電子カルテ」の情報等の閲覧が可能となるなど、様々なメリットがあり、このようなメリットが早期に広く享受されるよう、令和六年十二月二日に「マイナ保険証」を基本とする仕組みに移行したものである。