答弁本文情報
令和七年六月二十日受領答弁第二三九号
内閣衆質二一七第二三九号
令和七年六月二十日
内閣総理大臣 石破 茂
衆議院議長 額賀福志郎 殿
衆議院議員水沼秀幸君提出スルガ銀行による投資用アパート・マンション不正融資問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員水沼秀幸君提出スルガ銀行による投資用アパート・マンション不正融資問題に関する質問に対する答弁書
一の1について
御指摘の「アパマン問題を含むスルガ銀行不正融資被害者の総数」及び「いまだ救済に至っていない被害者数」の具体的に指し示す範囲が必ずしも明らかではないが、金融庁としては、スルガ銀行株式会社(以下「銀行」という。)の不正融資等に関して、平成三十年十月五日付けで、銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)第二十六条第一項の規定に基づく業務改善命令を発出し、当該命令を踏まえた銀行の改善状況を確認しているところである。当該命令においては、銀行がその健全かつ適切な業務運営を確保するよう、銀行に対して、「シェアハウス向け融資及びその他投資用不動産融資に関して、金利引き下げ、返済条件見直し、金融ADR等を活用した元本の一部カットなど、個々の債務者に対して適切な対応を行うための態勢の確立」を実行することを求めており、その対応状況を確認する際に、銀行からは、関係する債務者の数を含めた定期的な報告を受けているが、当該債務者数は公表されておらず、同庁としてこれをお示しすることは差し控えたい。
一の2及び3について
お尋ねの「被害の類型(元本割れ、借金残存、自己破産等)・損失額の分布及び経済的・精神的困難の実態」の具体的に指し示す範囲が必ずしも明らかではないが、金融庁としては、銀行の不正融資等に関して、銀行に対し、平成三十年十月五日付けで、銀行法第二十六条第一項の規定に基づく業務改善命令を発出し、当該命令を踏まえた銀行の改善状況を確認する中で、銀行から融資を受けた債務者に係る状況についても、把握をしているところである。
また、御指摘の「アパマン」問題については、問題の解決に至っておらず、銀行と融資を受けた債務者側の弁護団との間で交渉が行われているものと承知しており、同庁としては、当該問題の早期解決に向けた対応を強く促していくため、銀行に対して、令和七年五月十三日付けで、同法第二十四条第一項の規定に基づく報告を求め、同月三十日付けで、当該報告を受けている。当該報告では、当該問題の解決に向けた取組が長期化している理由や、今後、当該問題の早期解決に向けて、銀行が取り組む新たな施策及びその期限等が示されているところ、今後、銀行において、当該施策等が着実に実施されていくかどうかを含めて、銀行による取組の進捗状況を確認し、当該問題の早期解決に向けた対応を強く促してまいりたい。
二の1について
御指摘の「基準」の意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねの「個別対応」について、令和七年五月十三日付けの銀行の公表によれば、銀行による取組は、「任意売却後、延滞中の利息および損害金の一部免除」、「任意売却による売却代金等充当後の残債務の返済相談(金利〇パーセント/期間三十五年返済等)」、「物件収支が赤字であるために約定返済が困難な債務者に向けた、「一・四〇パーセントを下限とした金利引下げ、および一部元金の最終期日一括払い」等の個別相談による物件収支黒字化支援」、「上記支援策を実施しても残債務の返済が見通せない場合には、個別事情(返済可能額や資産状況等)をお聞きし、個別返済プラン策定のご相談」等である。
二の2について
金融庁として、お尋ねの「包括的救済」という用語を用いているわけではない。御指摘の「被害者」と銀行との間では、民事調停や民事訴訟等の手続が進められていると承知しており、一義的には当事者間において解決されるべき事柄であると考えている。
同庁の今後の対応については、一の2及び3についてでお答えしたとおりである。
二の3について
お尋ねの「「個別解決の加速化」策」については、一の2及び3についてで述べた銀行からの報告において示されたところであり、金融庁としては、今後、銀行による「「個別解決の加速化」策」の進捗状況を定期的に確認し、御指摘の「アパマン」問題の早期解決に向けた対応を強く促してまいりたい。
二の4について
お尋ねの「銀行が自ら示した解決指針に反し、和解を実質的に妨げているとの被害者側指摘」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「被害者」と銀行との間で民事調停や民事訴訟等の手続が進められていると承知しているところ、これらの手続に関する事柄について、金融庁としてお答えすることは差し控えたい。
同庁の今後の対応については、一の2及び3についてでお答えしたとおりである。
三について
お尋ねについては、御指摘の「被害者」と銀行との間で民事調停や民事訴訟等の手続が進められていると承知しているところ、これらの手続における対応等については、それぞれの手続に関する定め等に基づいて当事者において行われるべきものと考えている。
四の1及び2について
金融庁としては、銀行の不正融資等に関して、平成三十年十月五日付けで、銀行法第二十六条第一項の規定に基づく業務改善命令を発出し、当該命令を踏まえた銀行の改善状況を確認しているところである。その上で、同庁としては、御指摘の「アパマン」問題が長期にわたり解決に至っていない状況を踏まえ、早期解決に向けた対応を強く促していくため、銀行に対して、令和七年五月十三日付けで、同法第二十四条第一項の規定に基づく報告を求めたところであり、銀行に対しては、当該問題の解決に向けた取組が長期化している理由や、今後、当該問題の早期解決に向けて、銀行が取り組む具体的な改善策及びその期限について報告することを求めている。
四の3及び五の3について
お尋ねの「是正要請」の意味するところが必ずしも明らかではないが、金融庁としては、銀行の不正融資等に関して、銀行に対し、平成三十年十月五日付けで、銀行法第二十六条第一項の規定に基づく業務改善命令を発出している。当該命令においては、処分の理由となった問題が発生した要因として、「創業家が実質的に当行を支配する中、審査態勢に不備が認められる営業優位の組織を構築する一方で、営業現場を放置したため、営業現場では、創業家の後ろ盾を得た特定の執行役員が、厳しい業績プレッシャー、ノルマ、叱責等で営業職員を圧迫した結果、法令等遵守を軽んじ不正行為を蔓延させる企業文化が醸成されたことが認められる。また、取締役会は、特定の役職員に営業方針や施策を任せきりとなり、その内容や結果だけでなく自行の貸出ポートフォリオの構造すら把握せず、適切に監督機能を果たさないなど、経営管理(ガバナンス)に問題があったことも、問題発生の要因と認められる。」としている。
同庁としては、当該命令の中で、銀行に対し、「経営責任の明確化」、「法令等遵守、顧客保護及び顧客本位の業務運営態勢の確立」、「健全な企業文化の醸成」、「信用リスク管理態勢・・・確立」等を求めているところ、お尋ねの「実効的監督」については、当該命令に基づく銀行からの改善状況に関する定期的な報告を確認すること等により、今後も、適切に対応してまいりたい。
五の1について
お尋ねの「不正手口」について、不動産業者等による賃料や入居率に関する資料の改ざんを行員が黙認した事例、同資料の改ざんを行員自らが行った事例、不動産業者等による銀行から融資を受ける債務者の預金通帳等の改ざん、債務者が融資を受けるために必要な資金を不動産業者等が当該債務者の口座に振り込むいわゆる見せ金等の不正について行員が黙認した事例、営業店において取扱いが停止された不動産業者等との取引を継続するために行員が別の法人の設立を持ちかけて実質的に取引を継続した事例及び投資用の不動産融資を実行する際に行員がカードローン等との抱き合わせ販売を行った事例が確認されたと承知している。
五の2について
銀行が設置した第三者委員会から平成三十年九月七日に受領し、公表した調査報告書によれば、融資を受けた債務者の預金通帳等の偽装について、営業を担当する行員、支店長等及び執行役員の黙認等による関与が認定されていると承知している。
また、銀行が令和元年五月十五日付けで公表した「報告書(投資用不動産融資に係る全件調査)」によると、銀行において不正に関与したとして七十五人の行員が処分されており、処分理由の内訳は、指示等が三十五人及び黙認が四十人であると承知している。
六について
平成三十年十一月三十日付けで銀行から提出された業務改善計画には、取締役等に対する損害賠償請求訴訟の提起を含む経営責任の明確化、ハラスメント等の撲滅を含む「健全な企業文化の醸成」を目的とした研修の実施、「顧客本位の業務運営」を念頭に置いた目標設定等、独立した「内部通報等対応室」の設置等による「内部通報制度の再構築」等が盛り込まれており、銀行はこれらの改善策に継続して取り組んでいると承知しているところ、お尋ねの「実効性評価」について、銀行による改善に向けた取組が進められている段階であることから、お答えすることは差し控えたい。
いずれにせよ、金融庁としては、お尋ねの「情報提供者保護」を含め、当該計画を踏まえた銀行の改善状況を確認し、銀行の取組に問題があれば適切に対応してまいりたい。
七について
お尋ねの「政府・スルガ銀行・被害者の役割分担を含むロードマップ」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「被害者」と銀行との間では、民事調停や民事訴訟等の手続が進められていると承知しており、一義的には当事者間において解決されるべき事柄であると考えている。このため、金融庁として、お尋ねの「早期解決の具体的期限」を定めているものではないが、いずれにせよ、一の2及び3についてでお答えしたとおり、銀行からの報告では、御指摘の「アパマン」問題の解決に向けた取組が長期化している理由や、今後、当該問題の早期解決に向けて、銀行が取り組む新たな施策及びその期限等が示されているところ、今後、銀行において、当該施策等が着実に実施されていくかどうかを含めて、銀行による取組の進捗状況を確認し、当該問題の早期解決に向けた対応を強く促してまいりたい。