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昭和二十三年十月十三日提出
質問第一号

 所得税徴收における税務官吏の行爲についての質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和二十三年十月十三日

提出者  山口武秀




所得税徴收における税務官吏の行爲についての質問主意書


 昭和二十二年度所得税徴收並びに同二十三年度予定申告の際における税務官吏の行爲について、幾多不審の点あるにつき、左の点を項目ごとに明かにいたされたい。

一、多くの税務署は、所得税申告及び納税について町村に出張して、納税者に対して次の如く説明している。「農業所得の計算は、だれも税務署で指示する反当所得基準によつて計算する。もし、それを実行しないときは更正又は仮更生をする」。「営業者の昭和二十三年度の予定申告は、昨年度の倍額にして申告する」。
 所得はそれぞれの事情で各納税者ごとに異なるものであり、反当所得もそれぞれに異なつている。しかるに右の説明のごとく一律に所得計算をなすものならば、申告納税なるものは全く意味がない。政府はいかなる法律によつて、税務官吏に右の如き説明をなさせるのであるか。
一、又右の説明について、「反当所得基準による所得計算の強要は申告制の破壊ではないか」と追及したところ、ある税務官吏は「農民は多く自己の経営收支を記帳していないから、所得不明であるので、参考に示すのだ」と答弁した。もし、そうであるならば、記帳のないものには、基準の内訳を、收入と必要経費の具体的数字を詳細に示してこそ、参考になる筈である。この場合の内訳の説明のない基準の指示は明らかに強要となる。これに関して、昭和二十三年八月十二日、茨城縣太田税務署長は「基準の内訳は東京財務局長の命令で公表できない」と言明しているが、東京財務局長はかかる命令をいかなる理由で出したのか。
一、昭和二十三年八月十一日、茨城縣水戸税務署所得税主任は七百名の農民に対して、署を代表すると前提し、次の如く言明した。「農業所得は署で示した反当所得基準で、たれもが計算し申告する。現在、申告納税制がとられてはいるが、それは理想で実際には行えない。申告制とは言つても、税務署が税額を決定して、納税者に告知するのと同じことである。」これは容易ならざる言明である。
  なお、水戸税務署管内の小川町役場税務主任は、一律に基準で計算しない申告書は、役場において税務署へ送付する労はとらないと、その受付を拒否している。そのため農民は一毛作の畑地所得を二毛作畑地として所得を計算して申告している始末である。法律を官吏が無視する如きことを放任できない。かかる行爲をなしている水戸税務署の責任を政府はいかにせんとするか。
一、同八月十日、茨城縣麻生税務署直税課長は次の如く言明した。「農業所得を署で示した反当所得基準で計算しないものは更正する。その際当然不当な更正もなされることになろうが、それも承知でやる。これは東京財務局長の指示である」。
  所得税法によれば、申告に対しては、政府の調査によつて更正がなされる。更正するときの政府の調査とは、かかる無責任のものであつてよろしいのか。東京財務局長はかかる無法な指示を出しているのか。
一、昭和二十二年度農業所得の確定申告に対して、政府は全面的に近い更正をなしている。この場合税務署は署の基準で、それに満たないものには一律に基準による計算で更正している向が多い。したがつて開墾地、粗惡耕地などで收穫の少いところ、被害のため收穫の少いところも、一般並の收穫のあつたものとして更正している。
  それぞれに事情が異り、したがつて所得の異る納税者を一律に扱う結果は、不当更正の濫発となつた。なるほど、更正に対しては、審査請求をなしうるが、請求に対して決定を見るまでは更正額の納税は猶予されない。その間納税者は政府の誤りのため不当に苦むのである。しかも審査請求をする納税者は、税務官吏から、きわめて不親切な取扱を受け、容易に正当に権利の行使ができないで泣寢入をする場合が多いのである。
  かかることが行われてよろしいのか。かかる無責任な調査なるもので更正して、追徴税を課してよろしいか。税務署が誤りを承知した場合は、直ちに更正取消をなすべきではないか。審査請求期間中は、ある程度まで納税猶予の処置をとるべきではないか。
一、税務官吏の行爲には、依然として人民支配の観念に支配されているものが見受けられる。これはただに納税者を不法に苦しめるばかりでない。民主化途上にある日本國民の民主主義的成長を、官吏が抑壓するという許すべからざる罪惡である。これらの点について政府は至急調査し、改むべきは改めさせ、責任を取らすべきは取らせるべきでないか。
  附記 以上のことについて、政府が調査に必要ならば、小生において、証人その他を示す。

 右質問する。





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