答弁本文情報
昭和二十三年十月二十三日答弁第一号
(質問の 一)
内閣衆甲第五〇号
昭和二十三年十月二十三日
内閣総理大臣 吉田 茂
衆議院議長 松岡駒吉 殿
衆議院議員山口武秀君提出所得税徴收における税務官吏の行爲についての質問に対し別紙答弁書を送付する。
衆議院議員山口武秀君提出所得税徴收における税務官吏の行爲についての質問に対する答弁書
一、所得税の課税標準たる所得金額は、各納税者ごとに毎年の收入金額から收入を得るために要した必要経費を控除して計算すべきであつて、税務当局は、個別的に正確な所得計算の行われることを期待しているが、納税者の最近における申告の状況に照し、正確な所得計算が困難な場合は、一應の申告の目安を與えるのが納税者に便宜であると考え、農業所得と反当所得基準によつて計算し又は営業者の予定申告を前年度分の一定倍数により計算することを示唆したものであつて、納税の現段階においては相当な措置であると考える。
一、所得申告の参考のため一應申告の目安を示唆したものであること前記のとおりである。目安は、内容にわたつて示唆することが適当な場合もあり又内容にわたらないで示唆しても事足る場合がある。要は具体的な事例について、その要不要乃至その程度を判断すべきであつて、当該税務署は、その趣旨の説明をなしたものと考える。
一、質問主意書摘示の水戸税務署及び小川町役場に関する二事実については、その事実の詳細を調査した上、おつて回答する。
一、質問主意書摘示の麻生税務署に関する事実については、事実の詳細を調査した上、おつて回答する。
一、昭和二十二年分農業所得の確定申告に対する更正に際しては、中庸と認められる基準により所得金額を計算している場合が多いことは事実であるが、これは平準化していると認められる農家又は農地に対してであつて、開墾地、粗惡耕地又は災害耕地等平準化していない農地については、適当な調整を図つており、所得の異る納税者を一律に取り扱うような結果に陷らないことに留意している。しかし、多数の納税者について十分調査が徹底しない向もあつたので、税務署がその誤りを知つた場合は、直ちに訂正を行い、且つ、その誤りを是正した結果によつて追徴税を課すべきか、課すべきでないかを決めている実状に在る。なお、審査請求があつた場合においても、誤りが明瞭な場合等においては、税金の全部又は一部の徴税の猶予をなしている場合もある。
一、申告納税制度を根幹とする現在の税務の運営については、税務官吏は、一面において納税者の相談相手となり、他面において正当に納税が行われたか行われないかの審判者となり、究極において、税法に定められた納税が公正に実現されることを念願としている。