衆議院

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昭和二十三年十二月四日提出
質問第一号

 公職適否資格審査の指定及び政令違反に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和二十三年十二月四日

提出者  齋藤 晃

          衆議院議長 松岡駒吉 殿




公職適否資格審査の指定及び政令違反に関する質問主意書


 公職追放に関しては、往々にして時の政府によつて政治的手段が加味されると想像されることがあるが、かかる事が排されねばならぬことはいうまでもないと考える。即ち司法当局のいう如く公職追放は冷嚴なる現実に即して実行されるべきであるからである。同時に嚴格に行使さるべき追放であるが故に、政府の取扱いが愼重でなければならぬこともこれまた当然であると思う。かりそめにもこれを安易に考えて当を失することがあれば、國民に疑惑を與うるとともに、又連合國が所期するところの管理の目的にも反することとなると思うからである。
 即ち私がここに質問せんとするところのものは、政府がこの公職追放に関して発令したる法令を無視したるがために、その結果政令違反事件に問われ、相当の実刑を課せられんとする者についての事実である。
 去る十一月二十五日東京高等裁判所において判決をうけたる、田中澤二氏の政令違反事件は実に政令違反事件における最初の判例であることによく注意せられたいのである。同氏は昭和二十二年十一月三十日立憲養正会総裁として仮指定をうけ、又翌二十三年三月二十二日には著述家としての仮指定をうけ、ともに該当者として決定されたのであるが、右の両度の仮指定及び決定については当局より一片の通知も出されず、何らの注意が発せられてはいなかつたのである。
 司法当局は、この一片の通知すら出さなかつたという事実に対して、官報に発表したから差支えないといつているが、それは別個の條文に示された当然の処置であつて、しかもその條文以外に、昭和二十二年閣令内務省令第一号の第五條によつて、覚書該当者の指定は軍人かあるいは住所不明のもの以外は「本人に対する通知でこれを伴う」ことになつているのであつて、諸般の事情から同氏の住所は明確であり、從つて該当者に正式の通知を出さなかつたということは、これは明らかに違法であるのである。しかもその当局の違法のために、罪を問われ刑罰に服するということは軽々に看過することのできない重大問題と信ずる。
 大体公職追放ということそれ自体が人権の拘束であって、自由なるべき人権に束縛を與えるという以上は、当局としては極めて愼重なる態度をもって当たるべきであるのは勿論である。しかるに法令にも明示されたる通り、出すべき通知を出さずして、しかもその結果生じたる政令違反をもつて罪科を課するということは、政府自ら法を蹂躙するものにして、又同時に人権を蹂躙するものなりといわれてもやむをえないところである。
 しかもこの政令違反事件は、勅令第一号第十二條における「選挙運動その他の政治活動」中には当然包含されざるものと解せらるる小雑誌の投稿に外ならず。一部國民に対する啓蒙的時論をもつて政治活動となすことさえ疑問のはなはだしきものあり。もしかかることが違反ならば、法令に明白に抵触事項を記載するとかあるいは注意事項を発表すべきであり、注意はおろか、追放の指定すら通知なきために、遂に違反を問われるにいたつたものである。國家は罪人を作らんがために法令を設け、法務廳をおき、網を張つて善良なる國民を陷穽せしめんとするのであるか。まことにこの事件は大なる不祥事として遺憾に堪えないのである。
 ここに私は左の各項について当局の確答をえたい。

第一に、本人に通告がなされなかつたことについて、政府は省令を無視しても差支えなきものなるや否や
第二に、法令を無視して通知せず、これがために生じたる政令違反事件あらば、これ政府の責任にあらずや
第三に、何故に省令を無視したるや、その間の事情を明白にされたきこと
第四に、覚書該当者に禁ぜられている政治上の活動とは如何なるものか、その意義と範囲を明らかにされたきこと
第五に、前項政治上の活動と公務員法改正に関する人事委員会試案に示されたる政治的行爲との差違如何
     (註、昭和二十三年十一月二十七日、毎日新聞に掲載されたる)

 右質問する。



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