質問本文情報
昭和四十年十月二十日提出質問第一号
地盤沈下防止に関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
昭和四十年十月二十日
提出者 石田宥全
衆議院議長 ※(注)田 中 殿
地盤沈下防止に関する質問主意書
昭和三十九年六月十六日午後一時すぎ、関東、東北、北陸地方にわたつて新潟県沿岸を震源地とする強震が襲つた新潟地震は、天災に人災が加わり、新潟市周辺の地震被害をより大きくしたことは専門家の一致した意見である。
この人災とは、天然ガスの濫掘であり、この濫掘が原因となつている地盤沈下である。
昭和三十三年には、新潟市の中心となつている信濃川流域から市の東側の阿賀野川までの延長二十キロ、幅二キロの地域では、年間二十センチ、ひどいところでは四十センチから五十センチも地盤が沈下しており、その後一部でくみ上げを規制したけれども、国土地理院は「沈下の速度は鈍つたが、なお広範囲に沈下が続いている。」と警告しているのである。
また、東新潟地区を中心とするゼロメートル地帯の悲劇は、地震で直接受けた被害は建物の全半壊約九千むねであるが、間接的な被害すなわち浸水住宅は一万二千むねに及んでおり、さらに地震直後の津波被害を受けたのはゼロメートル地帯六百二十七万平方メートルに及んでいるのである。
ここで抜本的な地盤沈下防止策をたてなければゼロメートル地帯は海抜マイナス地帯となり、十年から十五年後にはその面積が実に一千万平方メートル以上となり、新潟市の東南部は水田一帯がマイナス地帯になるとさえいわれているのである。その対策として農林省は、基盤整備事業費として百六十億円の予算要求を行なつているというきわめて憂慮すべき状態になつているのである。よつて次の諸点につき政府の見解を伺いたい。
二 ガスの採掘を全面的に禁止することができないとすれば、地盤沈下を完全に防止するための抜本的な具体的措置を明示し、民心の安定を図るべきであると思うので、その対策を明確にされたい。
三 地盤沈下対策の怠慢から関係地域で受けた被害は多大である。この事態を今日まで放置してきた政治責任はきわめて大きいといわなければならない。
その損害に対して補償する考えはないか。今後どう処置しようと考えているか。
四 新潟地震発生後五時間を経て発生した火災で新潟市臨港町で三百二十戸が被災した。
しかし被災者に火災保険金が支払われていないが、昭和三十九年十二月五日衆議院予算委員会において村松消防庁長官は、「この火災は、地震と同時に起きた昭和石油の四万五千キロリッターのタンクの火が原因で延焼したものではない。」と明言している。また法務省民事局長は、「火災免責約款により保険会社が免責を受けようとすれば、保険会社は地震によるものであることを立証せねばならぬ。立証ができねば当然保険金を支払う義務がある。」といつている。
この際、地震によるものであることが立証できないので当然被災者に火災保険金を支払わねばならないと思うが、どうか。
右質問する。