質問本文情報
昭和四十三年四月二十二日提出質問第一一号
政府の阿賀野川水銀中毒事件についての審議、協議に関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
昭和四十三年四月二十二日
提出者 石田宥全
衆議院議長 石井光次郎 殿
政府の阿賀野川水銀中毒事件についての審議、協議に関する質問主意書
阿賀野川水銀中毒事件について厚生省は、厚生省の特別研究班の結論をもとに食品衛生調査会の答申を得て、これを正式見解とした。
この厚生省の見解を受けた科学技術庁は、庁内あるいは関係省庁と審議、協議を重ね、三月八日の衆議院予算委員会において、科学技術庁長官は三月末日までに政府の見解を取りまとめる旨答弁をしているのである。にもかかわらず今日まで統一見解は出されていない。このことは国会審議をじゆうりんするもので許されるべきものではない。よつて、以下の事項について答弁されたい。
二 昭和四十二年八月三十日に出された食品衛生調査会の答申の全ぼうを明らかにされたい。
三 一の結論及び二の答申に基づいて行なわれた厚生省見解の全ぼうを明らかにされたい。
四 三の厚生省見解を受けた科学技術庁から意見を求められた農林省、経済企画庁、通産省の見解の全ぼうを明らかにされたい。
五 四の各省庁見解を受けた科学技術庁の審議、協議に当たつた者の氏名、職名とその内容について日時順に会合場所を含めて明らかにされたい。担当者以外の参加者並びに参考人の氏名、職名とその主張の内容を答弁されたい。
六 科学技術庁原案なるものが三月三十一日付の一部の新聞に流されているが、それを流した者の氏名、職名を伺いたい。
また、四月十三日外部に発表されているが、発表した者の氏名、職名とその原案の全ぼうを明らかにされたい。
七 それによると阿賀野川における散布農薬が影響しており、昭和電工鹿瀬工場の廃液であると断定できないとしているそうであるが、科学技術庁は、いかなる機関でいかなるメンバーによつて事実調査を行なつたのか答えられたい。
また、みずから事実調査も行なわず専門学者の学術的結論(新潟水銀中毒事件特別研究報告書)並びに食品衛生調査会の答申に対し、専門外の行政官がこれを否定し、わい曲することは、学問の冒とくであり許されるべきでないと思うが、どう考えるか見解を示されたい。
八 さらに、水俣病発病の経過が明らかでないとの見解もなされているが、わが国の専門学会のみならず国際的にも定説といわれている熊本大学医学部の論文集「水俣病」を否定するものであると考えるがどうか。否定するとすれば、どの部分がどのように否定されるのか詳細に答弁されたい。
九 科学技術庁担当官は、検体のメチル水銀の中に昭電鹿瀬工場廃液のメチル水銀がどれだけ含有されているのか明らかでないので断定は不可能であるとしている。また、さきに通産省の見解として刑法上の疑わしきは罰せずの原則により断定できないとのことであるが、刑事罰であつても疑わしきを罰した判例がある。従つて、食品衛生調査会の答申が支持されないことは納得できない。その理由を明らかにされたい。
十 公害は、明らかに社会的犯罪であり間接的殺人行為で企業が主たる犯人である。政府は、憲法第十三条を守る義務と責任を負わなければならないにもかかわらず、加害容疑者に対しその責任を問う意思があるのかどうか疑わざるをえない。その見解を答えられたい。
右質問する。