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昭和四十三年八月七日提出
質問第一号

 国家公務員の賃金に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十三年八月七日

提出者  谷口善太郎

          衆議院議長 石井光次郎 殿




国家公務員の賃金に関する質問主意書


 現在の国家公務員労働者に適用されている給与制度によれば、東京都をはじめ、生活保護法による保護適用の一級地該当地域で生活する国家公務員労働者の賃金は、制度的に生活保護基準すれすれ、又はそれ以下の生活しか保障され得ない現状にある。すなわち、
(1) 行政(一)表適用国家公務員労働者の場合
    高校卒(十八才)で初級試験合格者の初任給(本俸)は八等級二号俸である。その労働者が二十六才で結婚したとすれば、そのときの本俸は現行の昇格運用基準に基づくと七等級三号俸となる。さらに同様に昇給昇格し、三十才(本俸七等級七号俸)で一児をもち、三十三才(六等級七号俸)で二児、三十七才(六等級十一号)で三児(うち一人小学生)をもつような標準的家族構成を想定して、それぞれ基準内手取賃金(年間手取総額から期末勤勉手当相当額を差引き、月平均の一ヶ月手取額を算定したもの)及び東京都を例として生活保護基準(第一類、第二類、電燈水道料、住宅扶助(最高)教育扶助から業種別基礎控除額を加算)を算定すれば次の表のとおりとなる。

生活保護基準

    この表から明らかなように国家公務員労働者の代表的職種である行政(一)表適用者二十四万二千人のうち六等級以下の労働者十六万五千人(六十八%)は、制度上、ほぼ生活保護基準すれすれ又はそれ以下の生活を強要され、生活保護基準による生活水準に達するには、勤続十三年にして始めて可能ということになる。しかも初任給においては、独立生計者の場合、期末勤勉手当の一ヶ月平均額を基準内手取賃金に加算してはじめて生活保護基準を一千六百六円上回るにすぎない。
(2) 行政(二)表適用国家公務員労働者の場合
    現行給与制度上、その職務評価がもつとも低く格付けされている労務乙に区分される職種、例えば「用務員」の途中採用者が、途中採用の時点で制度上保障されている基準内手取賃金を四十五才女子で中学生、小学生の二子をもつものが、用務員として採用された場合を想定して行政(一)表の場合と同様の計算方法で算定すると、その額は一ケ月二万七千五百五十八円で、生活保護基準は、三万九千三百八十六円で、その格差は、一万一千八百二十八円となる。これは住宅扶助をまつたく要しない場合ですら、なお、三千八百九十八円低い水準である。これはたんなる推論ではなく、現実に三十年勤続で本俸四等級二十二号三万八千百八十六円の本俸しかうけていない用務員が現に存在している。
    このような国家公務員労働者に対する「給与制度」の低賃金のおしつけは、国家公務員労働者の労働力の再生産費をつぐなうことはおろか、国家公務員として必要最少限度の知識を深め、教養を高める費用や、社会的に要求される衣服などを含む生活費はとうてい基準内賃金ではまかない得ないというほかはない。従つて、国家公務員法で兼業を禁止されている国家公務員が、いわゆる月給だけでは生活できず、日常の生活のために借金をよぎなくされ、それを期末勤勉手当で返済し、なおかつ、家庭生活を破壊するような内職や共働きをよぎなくされている。
    すなわち、国家公務員労働者の大多数が制度的にはこの程度の生活しか保証されていない。
 このような国家公務員労働者の低賃金は、日本の低賃金制の基礎の上に、公務員労働者の労働基本権をはくだつし、人事院勧告制度によつて低賃金を一方的におしつけていることによるものと考える。
 政府は、このような国家公務員労働者の低賃金の実態とその制度についてどのような見解をもつておられるか、次の事項について明確な回答をされたい。

一、政府は、生活保護基準すれすれ、又はそれ以下の生活しかなし得ない低賃金を人事院勧告制度に名をかりて、大多数の国家公務員労働者に制度としておしつけていることをどのように考えているか。
二、前記のごとき水準の賃金を大幅に引き上げ、賃金体系を改善し、生活保護基準を大幅に上回わる水準を保障するため、さしあたつて、公務員の要求である一万円以上の賃上げを実現する意思があるか、どうか。
三、政府は、国家公務員労働者との賃金交渉を認めておりながら、交渉のたびに「人事院勧告を尊重する方向で努力する。」として具体的な回答を避けている。
  交渉当事者である政府は、人事院勧告のいかんにかかわらず、交渉のなかで賃金の額を具体的にしめし、交渉の成立に努力すべきである。
  交渉当事者である政府として、賃金交渉にたいする責任をどのように考えているか。

 右質問する。





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