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昭和四十七年六月十三日提出
質問第一四号

 台湾条項消滅に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十七年六月十三日

提出者  春日一幸

          衆議院議長 (注)田 中 殿




台湾条項消滅に関する質問主意書


 本年二月のニクソン米大統領の訪中により、米中両国は平和を共通の目標として、冷戦から共存へと米中関係正常化に向かつてその巨歩を踏み出したことは、まさに刮目すべき事柄である。
 わが国においても、つとに日中貿易の促進、政党の中国訪問等の積み重ねにより、日中間の友好、交流が強まつており、日中国交正常化のすみやかな実現は、今やわが国政の最重要課題となつている。
 しかしながら、日中問題の核心は台湾問題であり、なかんずく、一九六九年十一月の佐藤・ニクソン共同声明にある“台湾の安全は日本の安全にとつて極めて重要な要素である”とする、いわゆる台湾条項が、―今後も存続するのか、もしくは消滅したのであるか、―この点の疑義が明らかにされるのでなければ、日中国交正常化への進展は、到底望むべくもないと考える。
 ついては、この際次の諸点に関する政府の見解を明確に示されたい。

一 台湾の法的地位については、カイロ宣言で、“満州、台湾及び膨湖島のごとき日本国が中国人より盗取した一切の地域を中華民国に返還すること”が明示され、これを受けて、ポツダム宣言は“「カイロ」宣言の条項は履行せらるべし”として、日本の降伏条件を明定し、かつ、日本は、降伏文書でこのポツダム宣言の条件を受諾したものであり、この歴史的経緯にかんがみるときは、台湾が中国の領土に属することは、もはや国際常識であり、疑う余地はないと考えるがどうか。
二 さきに台湾政府を追放するアルバニア決議案が国連総会において採択され、このように国連の決定が下された以上、国連中心主義を外交政策の基本とするわが国としては、中国を代表する唯一の正統政府は中華人民共和国政府であることを厳粛かつ率直に受けいれ、対中国政策を積極的に推進すべきであると考えるがどうか。
三 台湾は中国の領土であり、中国を代表する唯一の正統政府が中華人民共和国政府であるとの前提に立つときは、台湾問題は中国の内政問題であつて、国際法上他のいかなる国もこれに介入する権利を持たないのであるから、今更日米安保条約が台湾の防衛のために発動できるものとするがごときは、矛盾撞着もはなはだしいと考えるがどうか。
四 台湾問題が中国の内政問題である以上、日米安保条約の極東における国際の平和及び安全の維持に関するいわゆる極東条項は、共産圏地域たるべき台湾に対しては、建前としてはもはや機能することの意義を失い、したがつて、この極東条項は台湾問題に関する限り空文化したものと考えるがどうか。
五 以上の認識に立つときは、一九六九年十一月の佐藤・ニクソン共同声明にあるいわゆる台湾条項は、中国の内政問題に介入することとなるので、最近、政府の言明する通り、それは事実上消滅したものと考えるがどうか。
六 本年二月の米中共同コミュニケで、米国は、中国の平和五原則(主権と領土保全の尊重、他の国家に対する不可侵、不干渉、平等互恵、平和共存)を認め、台湾問題が中国人自身により平和的に解決されるという見通しの下に、米軍兵力及び軍事施設を台湾から漸進的に削減することを声明しているが、このような動きは、台湾問題に関する日米安保条約の極東条項ならびに佐藤・ニクソン共同声明の台湾条項の形骸化を裏づける証左であると考えるがどうか。
七 およそ国家間の合意は、関係国にこれを遵守する義務を負わせるものであるが、その後においてその合意成立当時の国際事情に重大な変化を生じたような場合には、いわゆる事情変更の原則を類推し、その合意の内容に変更を加えられたものと解するのが相当であり、したがつて、一九六九年十一月の佐藤・ニクソン共同声明にある台湾条項は、その後における中華人民共和国の国連復帰等の事情変更により、それが事実上消滅したものであることをあらためて、ここに確認すべきであると考えるがどうか。
八 一九六九年十一月の佐藤・ニクソン共同声明にある台湾条項は、それが事実上消滅したものとすれば、その存在こそが日中国交回復を妨げる大いなるネックであり、かつは、すでにそれが極東における国際の平和及び安全に何らかかわりがないものとなつた以上、すみやかにこれを削除すべきものと考えるがどうか。

 右質問する。





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