衆議院

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昭和四十七年六月十六日提出
質問第一七号

 宇宙開発事業団のNロケット自主開発計画に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十七年六月十六日

提出者  栗山礼行

          衆議院議長 (注)田 中 殿




宇宙開発事業団のNロケット自主開発計画に関する質問主意書


 月面に人類がおり立ち、広大無辺の宇宙空間の探索と開発が、今や急ピッチで始まり、宇宙開発をめぐる米・ソ二大国の競争は誠に熾烈なものがあつた。しかるに、先月のニクソンのモスクワ訪問で見られた、米・ソ二大国の急速な接近は、両国間での「宇宙開発平和利用協力協定」を結ばしめるに至り、今や宇宙空間は、米・ソ二大国の協調のもと、米・ソ二大国による独占すら憂慮される事態にたちいたつたと考えなければならない。
 翻つて、わが国の宇宙開発の実態を見るに、Qロケット計画、Nロケット計画とつぎつぎに開発路線が変更され、加うるにNロケット計画すらもはや時代の要請に応えられず、世の識者に、その開発を疑問視されている有様である。今にして、わが国の宇宙開発計画の根幹をなすロケット開発計画に誤りなきを期すことなければ、宇宙空間利用におけるわが国益は守られず、悔を千載に残すことになろう。
 ここに、わが国ロケット開発の現状を憂え、あえて以下の疑を正さんとするものである。

一 さきのニクソンのモスクワ訪問で米・ソ両国間で締結された「宇宙開発平和利用協力協定」は、米・ソ両国の宇宙空間の独占化を強め、わが国の宇宙の実用利用面における進出を、より困難なものとすると考えられるが、政府はこの国際情勢をいかに判断し、どのように対処していこうとするのか、宇宙開発に取り組む基本姿勢を伺いたい。
二 わが国の宇宙開発は、これまで米国の技術援助と指導によつて行なわれてきたのであるが、わが国の宇宙開発計画が必ずしも、米国側がわが国に提案してきた宇宙開発協力の方針にそつていないのではないかと考えられる。
  わが国の計画では、一〇〇キロ衛星システムを宇宙開発事業団が組み上げ、二段ロケットを自主開発するという方針であるが、米国は一〇〇キロ衛星システムを認めているのか。
  また、米国政府が一〇〇キロ衛星システムの静止軌道運用に協力すると約束しているのか。
三 実用衛星は現在の電子技術をふまえて考えてみると、少なくとも三〇〇キロ、ものによつては一トン半というようにきわめて中味のつまつた衛星でなければ実用効果が十分発揮されない。
  すでにわが国のユーザー側も三〇〇キロ〜五〇〇キロ衛星打ち上げの要望が出ているとおり、わが国でも一〇〇キロ衛星システムは、時代おくれとなつているのである。したがつて、計画は実用衛星計画とは認め難いが、Nロケット計画と実情のズレをどのように是正していくのか。
四 現在のNロケット計画では、二段ロケットを自主開発する計画で、鋭意開発をすすめ、すでに二段エンジンは開発が完了していると聞いている。しかし、二段ロケットの燃焼は真空中における燃焼であり、真空燃焼試験を経て、始めてエンジンは完成したといえるのであるが、真空燃焼試験設備は現在日本に存在しているのか。
  また、二段ロケット・エンジンの開発完了までに実施した真空テストの回数は何回であるか。
五 私の調査によれば、今秋カナダで打ち上げる三四〇キロ通信衛星を打ち上げる現在のソ・デルタの二段のロケットについては、燃焼実験一週間一回の割合いで三八〇回、通常の地上燃焼テスト七三〇回、計一一一〇回しており、それに従事した研究要員は、工学博士約二〇〇名、技師一〇〇〇名にのぼる。この例から考えれば、わが国の二段エンジンの開発完了は到底科学技術庁の計画しているような安易なものではないと考えるがどうか。
六 液体エンジンは酸化剤と燃料が燃焼することにより推力を発生するシステムであるが、政府のこれまでの開発の歴史をふりかえれば、昭和四十一年〜四十三年の間はLOX/ケロシン、昭和四十三年〜四十五年の間はHNO3/UOMH、昭和四十五年以降はN2O4/A−50ときわめて目まぐるしく変わつてきている。また、肝心の燃焼器の冷却方式については、従来ともチューブ式で継続して開発しているが、現在のソ・デルタの二段エンジンでは、アブレーション式を採用している。チューブ式でわが国が開発を完成させる見込みはあるのか。技術的根拠を示されたい。
七 Nロケット計画で二段ロケットに液体エンジンを採用された根拠を示されたい。
  私の調査に基づく液体ロケットの利点は、真空中における液体ロケット・エンジンの再着火性にあると考える。にもかかわらず、チューブ式を採用していることは、アブレーション式よりもチューブ式の方がより再着火性に富むという判断に基づくと思うが、その技術的根拠を示されたい。
八 わが国の宇宙開発計画が、あくまで二段の自主開発にこだわつているゆえに、一〇〇キロ衛星システムにレベル・ダウンせざるを得ないが、二段に米国からデルタ・Fを導入して、カナダ並みのソ・デルタモデル一九一三を採用すれば、少なくとも三年以内に三五〇キロ実用衛星の打上げ可能になり、現在出ているユーザーの要望に応えられる。さらにそれは、今年秋、米国が完成するモデル二九一四にシステム技術上つながり、約五〇〇キロ以上の衛星打上げも可能となる。
  この際、わが国もこの国際情勢の推移に呼応すべく、すみやかに二段ロケットにデルタ・Fを採用すべきであると考えるがどうか。
九 政府部内には自主開発による技術の波及効果のみを重視する向きがあるが、現在の米国の実情は、衛星の経済利用の実施の段階に入つており、打上げ用ロケットは液体ロケットに絞り、すでに経済生産されている。
  政府の強調する波及効果の目的は、ロケットの軍事利用ではないかとの疑惑がもたれているが、もし政府が暗に、軍事利用ロケットを考えているならば、自主開発は固体燃料を使用する固体ロケットで実施すべきではないか。
十 黄道面上静止衛星軌道にあげられる静止衛星の数は、きわめて限られており、わが国がロケット開発に遅れをとるならば、宇宙空間におけるわが国の国益は、二度と再び取り戻せない。
  現在及び近き将来の電子通信技術の発達を考慮しても、地球静止衛星の数は、宇宙空間といえども、わずかに一八〇個に過ぎぬとされている。
  このうち、わが国が、国益上並びに国際協力の使命達成に、独自の運用に必要な静止軌道上のポジションは、一体いくつ確保すべきと考えているのか。

 右質問する。



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