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答弁本文情報

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昭和四十七年六月二十二日受領
答弁第一七号
(質問の 一七)

  内閣衆質六八第一七号
    昭和四十七年六月二十二日
内閣総理大臣 佐藤榮作

         衆議院議長 (注)田 中 殿

衆議院議員栗山礼行君提出宇宙開発事業団のNロケット自主開発計画に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員栗山礼行君提出宇宙開発事業団のNロケット自主開発計画に関する質問に対する答弁書



一1 近年、宇宙開発を国際協力のもとに進めようとする気運が急速に高まつてきており、米ソの宇宙開発平和利用協力協定も、このすう勢に沿うものであり、両国が、このたび協力関係を樹立したことは、国際協力による宇宙の平和利用を一段と促進するものとして、その意義は評価されるべきものと考える。

 2 政府としては、わが国が必要とする宇宙開発の推進を図るためには、自主技術の活用と先進技術の導入消化により、将来に向かつて発展性の高い技術を早急に確立する必要があると考えている。
   このため、昭和五十二年度を目標に静止衛星打上げ技術の確立を図るべく努力を重ねているところであり、その成果をもつて、その後に予想される大型静止衛星等のわが国の実用衛星の開発に対処し、自主的な宇宙利用を推進することとしている。さらに、このような開発の進展と、世界の動向を勘案し、国際プロジェクトへの参加等宇宙開発分野の国際協力をも積極的に進めてまいる所存である。

二 昭和四十四年七月、日米両国政府間で取り交わした「宇宙開発に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協力に関する交換公文」において、米国政府は、わが国に対し、Nロケット技術、衛星を静止軌道に乗せる技術等の提供を約束している。
  わが国としては、宇宙開発技術の基盤確立の当面の目標として、静止軌道に重量約百キログラム程度の衛星を打ち上げる計画を進めているが、米国は、この計画に対し、積極的な協力の姿勢を示し、すでに必要な技術等は、前記の交換公文に基づき、逐次、わが国に導入されているところである。

三 わが国は、宇宙開発委員会において、慎重な審議を経て決定された宇宙開発計画に基づき、宇宙開発の推進を図つている。この計画では宇宙開発の有する意義を十分認識し、その自主的な推進を図ることとしており、このため、将来の発展性が高い液体ロケットを中心とするNロケット計画を進めることとした。
  これは、わが国の技術水準と米国からの技術協力の範囲とを考慮し、当面、取り組みうる規模のものとして、Nロケットを開発することが欠くことのできない基本的ステップであると判断し、まずNロケットを完成させ、さらに、これを軸として、今後の大型静止衛星の打上げの需要に対処することが、最善の方法であるとの考え方に立つたものである。
  現在、大型衛星として、気象衛星が、国際的計画により具体化しつつあるが、その打上げが早急に必要となる場合には、米国の打上げ援助の提案を受け入れること等を含めて検討する所存である。

四 Nロケット第二段エンジンの開発は、未だ完了したものではなく、現在鋭意開発中であり、これまで大気圧における燃焼試験を行ない、おおむね良好な結果を得ている。この成果をもとに、本年夏季に米国の高空燃焼試験設備により、第二段エンジンの真空燃焼試験を行なうとともに真空燃焼試験技術の習得を図ることとしている。
  国内の高空燃焼試験設備については、簡易高空燃焼試験設備を長崎県堂崎地区に、また、高空燃焼試験設備を航空宇宙技術研究所角田支所に、それぞれ建設中であり、今後は、これらを活用して、十分な真空燃焼試験を進めることとしている。

五 Nロケット第二段エンジンの開発については、自主技術を基調とするが、部分的に必要な技術援助を米国企業から受けつつ効率的な開発を進めてゆくこととしている。燃焼試験についても、米国企業の積極的な技術援助と経験を有する技術者の指導を得ることにより、全く独自に開発する場合に比較して、研究要員数および試験回数の相当な削減が可能であり、これによつて、第二段エンジンの開発は、Nロケット計画に支障をきたすことなく達成できるものと考える。

六 わが国の液体ロケットの推進薬については、昭和四十年まで、硝酸とケロシンの組合せについて、昭和四十年から硝酸とUDMH(非対称ジメチルヒドラジン)の組合せについて、さらに、昭和四十三年からは四酸化窒素とエアロジン五〇の組合せについて開発を行なうというように各種の組合せについて段階的に実験を進めてきたものである。なお、液体酸素を酸化剤とするものについては、現在においても航空宇宙技術研究所において研究を進めている。
  また、第二段エンジンの冷却方式については、チューブ式を採用しており、新型のソーデルタのアブレーション式とは異なつているが、チューブ式エンジンの方は歴史が古く、設計技術、製造技術が十分な信頼性をもつて確立されているものである。
  わが国では、この方式について経験を有する米国企業より技術援助を受けつつ、開発を進めているので、同エンジンを完成させる見込みは十分にあるものと考える。また、このことは、わが国でこれまで実施してきたエンジンの試作試験の成功によつても実証されている。

七 Nロケット計画で第二段ロケットを液体ロケットにしたのは、静止軌道に衛星を打ち上げる場合、第一段および第二段ロケットにより、第三段ロケットおよび衛星を一旦低高度の真円軌道にのせる必要があるため、固体ロケットに比較して誘導し易い液体ロケットを使う方が適していたからである。諸外国においても、第二段ロケットには液体ロケットを使用している。
  なお、再着火性については、現在開発中のNロケットにおいては、第二段ロケットの再着火を必要としない設計としているので、従来から研究開発の実績のあつたチューブ式エンジンを採用したものである。

八 わが国においては、宇宙開発の推進に関し、将来に向かつて発展性の高い技術を早急に確立することとし、これを達成するため、自主技術の育成に留意しつつ、米国からの技術援助が受けられる範囲で、先進技術の有効な活用を図ることとしている。
  このような観点から、Nロケット第一段について、ソーデルタロケットの第一段を米国から導入することにより、大型液体ロケットの経験を得るとともに、第二段ロケットについては、数年前から開発に着手しているので、米国からの技術指導は受けるが、自主開発を基調とする開発方式を採ることとし、この両者によつて、わが国の液体ロケット開発能力を早急に確立しようとするものである。
  このような努力によつて、静止衛星打上げの当面の目標を達成すれば、その経験をふまえて、その後における急速な発展が可能であり、これによつて、わが国の将来の大型衛星打上げの需要に十分対処できると考えているところである。

九 宇宙開発は、宇宙空間の真相の究明によつて、自然科学の発展に寄与し、また、実利用によつて、国民生活の向上や産業経済の発展に画期的な利益をもたらすのみならず、開発を通じて、科学技術水準の向上、国際友好の促進等に大きく貢献するものである。
  このような観点から、現在、宇宙開発委員会が定めた宇宙開発計画に基づいて、人工衛星およびロケットについて研究開発を進めているところであるが、この推進にあたつては、平和の目的に限り、これを行なつているものである。

十 静止軌道に打ち上げうる衛星の数は、衛星の種類、使用する周波数帯、地上施設の性能等の関連から定まるものである。御指摘の数は、一つの周波数帯を用いた時の試算としていわれているものであり、必ずしも静止衛星全体の限度を示すものとは考えていない。わが国が必要とする静止衛星の全体構想については、現在検討中であるが、各国における静止衛星打上げ構想等よりみても、静止衛星全体の限度が、わが国の宇宙開発に支障を及ぼすとは現在のところ考えていない。

 右答弁する。




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