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昭和四十八年九月二十一日提出
質問第二三号

 成田暫定パイプラインの安全問題に関する再質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十八年九月二十一日

提出者  金瀬俊雄

          衆議院議長 前尾繁三郎 殿




成田暫定パイプラインの安全問題に関する再質問主意書


 成田暫定パイプラインの安全問題に関する質問に対し、答弁書の送付を受けた。この答弁書では、先に提起した質問に対して問題に正面から応えることを回避したり、不十分、不誠実な回答しか与えられていないと思われ、また、国民のもつ疑問に対して、かかる対応をとることは当事者能力を失つたといわれる新東京国際空港公団と同じであつて、田中(注)榮首相の本意とは思いたくないので、ここに、前回と同様の趣旨・観点から再度質問を提起する。無内容な官僚答弁ではなく、官僚機構を十分に統括している立派な政治家としての答弁を期待する。

一 「成田暫定パイプラインの安全を保証する法的根拠について」に対する回答について
  (1)から(7)までの回答に対して。答弁書によれば、石油パイプライン事業法に基づく関連告示(技術基準)の制定後、早急に同法の技術基準に準拠して、消防法令の技術基準を整備することにより、その安全性を確保するとある。ということは、現行の消防法令ではパイプラインの安全性を確保するには不十分であつて、その技術基準を整備する必要があることを認めたことになる。すなわち事業法は、その技術基準の告示をもつて形式的には完結するが、このあと少なくとも消防法令の整備が完了するまでの間、事業法適用のパイプラインの沿線住民と消防法の適用になるパイプラインの沿線住民との間には、パイプラインによる災害防止に関して法的差別が発生することになる。この法的差別を実質的に無効化せしめるためには、消防法の適用が必要となる事態の発生を避けることである。
  一方、成田市長に対して、空港公団が事業法の技術基準に準じて措置をとることを確認すべきとの行政指導を行つたとあるが、これは、法の運用による事態への対応であつて、法制を整備して、パイプラインの危険から国民の生活を守るという政府の責務が果たされているとはいえまい。
 (イ) パイプラインにかかわる消防法令が整備されるまで、これらの法令の適用を必要とする事態の進展を停止させるべきであると思うが、どうか。見解を問う。
 (ロ) 事業法の技術基準について、「技術基準検討専門委員会」において鋭意かつ慎重に検討を進めてきた結果その成案を得たとあるが、その成案があらゆる面からの技術批判に耐え得るものでないときは、誰れの責任か。
     鋭意かつ慎重に検討するということは、あらゆる面からの技術批判に耐え得るものをつくり出すための必要条件であろうが、そのことをもつて直ちに結果をよしとするわけにはいかないのである。
  (8)の回答に対して。成田市と空港公団との協定書について、住民感情を考慮して締結されたと釈明されているが、一方で、暫定パイプラインの安全性を十分確保するには現行の消防法令の整備を前提としている。逆にいえば、現行の消防法令では、暫定パイプラインの安全性は十分確保できないことを主張しているのであつて、かかる事態(国民の生活を守るための政府の法制整備の義務の不履行)のゆえ、成田市は、公団との間で協定書を締結することとなつたのではないのか。そうでないとすれば、その理由について述べよ。
  (9)の回答に対して。暫定パイプラインが、石油パイプライン事業法の適用を受けず、従つて、事業法にいう技術基準とは関係なく着工するとの主張である。当然である。一方暫定パイプラインを規制するのは消防法であつて、この消防法は、パイプラインの安全性を十分確保するのには、現行の消防法令の整備が必要であるとも主張している。つまり、パイプラインによる災害から国民の生活を守るに足る法制が現在整備されていないということである。
 (イ) かかる状態で暫定パイプラインの着工を認めることと、田中(注)榮通産相(当時)が事業法審議のときに言明した「パイプラインのもつ危険性に対して法制を整備して国民の生活を守るのは、政府の責任である。」ということとの関係はどうなるのか。
 (ロ) 法制を整備するということと、法の運用で処理することとは同義なのか。
 (ハ) 着工したあと、制定される技術基準と合致しない部分があればやり直すというように主張されるが、技術基準は、完成したパイプラインの満たしているべき条件を定めるだけでなく、そのパイプラインがどのようにして完成したかについての条件も規定しているのである。とすれば、完成したパイプラインの検査だけでは、技術基準に合致するかどうかの完全な判断はできないのではないのか。相手が工事の現場管理のずさんな空港公団であつてみればなおのことではないか。見解を問う。
二 「地元との合意のとりつけ方及びそのための条件についての疑義」に対する回答に対して以下の問いに根拠・理由を附して明確に答えられたい。
 (1) 成田市寺台区との合意の条件として、イ街路灯の設置(旧道)、ロ寺台付近の道路の整備(四地点)、ハ公民館の設置及び成田市吉倉区との合意の条件として、共同利用施設(鉄筋コンクリート造五十坪)の設置がとりきめられた。寺台区の件に関しては、本年四月十四日に区長から直接佐藤文生運輸政務次官へ口頭で申し入れたものである。空港公団によるこれらの措置は、公団の業務としてなし得る範囲内のことなのか。
 (2) (1)の件が公団の業務としてなし得る範囲内のことであるならば、その法的根拠及び限度額について。
 (3) (1)の件に係る必要経費のそれぞれの概算値について。
 (4) 寺台区長と公団との協議は、パイプラインの安全確保に関してのみなされたのか。
 (5) 設置されるパイプラインのもつ危険性は、(1)の件にかかわる措置によりなくなり、又は低減するのか。
 (6) 三光区長及び保目区長がパイプラインの安全問題に関して寺台区住民の多数意見を代表していると、どのようにして判断したのか。彼等は、パイプラインの安全問題に関して寺台区の住民の多数意見を代表するということで選任されたのではないと思うが、どうか。
 (7) パイプラインの危険性に対して、寺台区の住民は、それぞれが同程度の危険を受忍すると考えているか。もし考えるならその根拠について。
 (8) 住民の受忍すべき危険度がそれぞれ異なる場合に、形式的な多数決処理で事を運ぶのを正当であると考えるのか。もし考えるならその根拠について。
 (9) 佐藤文生運輸政務次官は、今国会において「一人一人の住民の協力なくしてはパイプラインはできないのです」と述べている。一人一人の住民ということと、多数の住民ということの違いをどのように考えているのか。
 (10) 昨年六月期の成田市の補正予算では、一億四千万円が成田市道整備事業費として計上されている。その時の説明では、成田市道破損の原因者である公団と成田市との間で協定ができているとのことであつた。現実には、協定書の日付は同年十一月一日であり、本年三月に至るも成田市の予算は修正されていない。実際に成田市と空港公団との間で協定ができたのは五月に入つてからと聞くが、この間の事情を明らかにされたい。
 (11) 成田市道・芦田地内線も、新空港建設資材である山砂等のトラック輸送及び建設工事用車両の通行があつたのか。もしあつたとするならどこからどこへ、いかなる車両でいかなる資材が運搬されたのか。
三 「成田市の水源について」の回答に対して以下の問いに根拠・理由を添えて明確に答えられたい。
 (1) パイプラインの事故の発生は、その規模の大小はともかく、否定しえないと思うがどうか。
 (2) 事故は、発生するという前提のもとに対策を立てておくという考えはないのか。事故は、予期せぬ形で生じるものである。
 (3) 回答文にある「地下水源の汚染の生じる虞はない」ということと、地下水源の汚染は生じないということは、何ゆえ同義となるのか。住民にとつて必要なことは、生じないことであつて、生じる虞のないことではない。
四 「タンクローリーによる輸送について」の回答に対して以下の問いに根拠・理由を添えて明確に答えられたい。
 (1) 「不測の事態」とは誰れが判断するのか。
 (2) 現在の状況は「不測の事態」か。それとも「必然的な事態」か。
 (3) 回答文の中で「不測の事態により………輸送が途絶した場合等において」とある。この文中の「等」という言葉の存在により「不測の事態」以外でも、また、パイプラインによる輸送が途絶しない場合でも、タンクローリーによる輸送がありうることになる。いかなる場合か。
 (4) 暫定パイプラインに発生した事故が、技術基準に違反していたことが原因であつた場合、その回復を図るのに空港の機能を停止させるのか。
     もしこの場合、空港機能を停止させないのならば、今国会での佐藤文生政府委員の答弁(空港がとまつてもそれを補修するのは当然である)は何なのか。

 右質問する。





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