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昭和四十八年九月二十七日提出
質問第二七号

 石油パイプラインの安全対策に関する再質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十八年九月二十七日

提出者  土井たか子

          衆議院議長 前尾繁三郎 殿




石油パイプラインの安全対策に関する再質問主意書


 先に提出した石油パイプラインの安全対策に関する質問主意書に対して、田中(注)榮首相よりの答弁書の送付を受けた。これらの回答には、提起された問題に対し不正確、不十分な対応がなされている部分があるのみならず、これらの回答自身にも新たに問題となり得る部分を含んでいると思われるので、ここで改めて前回と同様の趣旨の下に若干の質問を追加し、再度提起したい。

一 行政の責任主体と学者・専門家グループとの関係について
  石油パイプライン事業法(以下「事業法」という。)の事業用施設の技術上の基準を定める省令の規定により、告示で定めることとされている事項(以下「技術基準」という。)は、学者・専門家による「技術基準検討専門委員会」の検討を経て、同じく「技術基準作成専門委員会」の議を経て、関係四省により告示されるであろう。さて問題は、告示された技術基準に技術批判に耐え得ない部分があつたり、あるいは指摘されていた技術基準の不備により、いずれ事故が発生した場合(以下「問題があつた場合」という。)の責任(刑事、行政、民事のそれぞれ)の所在と、事業法の施行にかかわる行政の責任主体との関係である。答弁書の三の(2)、(3)及び(4)、四の(1)及び(2)の回答文の中で、「……であるとの「技術基準検討専門委員会」の結論を得ている。」との表現があり、行政の責任主体として自らの問題として対応することを回避している点が気になつたからである。以下の問いに具体的に答えられたい。
 (1) 「技術基準検討専門委員会」によつて検討され、得られた結論に問題があつた場合の責任(刑事、行政、民事上の責任、以下同じ)の所在はどこか。
 (2) 「技術基準作成専門委員会」によつて形成された告示案に問題があつた場合の責任の所在はどこか。
 (3) 関係四省により告示された技術基準に問題があつた場合の責任の所在はどこか。
 (4) 技術基準について指摘された問題点に対して行政の責任にある者は、その問題点に問題はないと説明するのに、「技術基準検討専門委員会」に転嫁しえないと思うがどうか。併せて、行政の責任主体の責任の範囲を明確にされたい。
 (5) 学者・専門家等の技術者が議論する安全性というのは、実は彼等の専門領域での議論であつて、安全性という言葉を使つてはいても本来信頼性と呼ばれるべきものである。システム又はその部分がそれぞれの目的を達成する度合いについての議論なのである。本来の安全性というのは、そのシステムとからむあるいはからまざるを得ない人間との関係(社会的な関係)ででてくる問題なのである。所要の信頼性が、社会的な関係において承認されるかどうかの議論が安全性となるのである。従つて、学者と専門家等の技術者が定めた所要の信頼性が社会的に承認されるされないについての判断については、彼等は、特にその専門性のゆえをもつては専門家とはいえない。一般人と対等である。所要の信頼性が社会的に承認されると判断し、所定の安全性が達成されると判断を下すのは行政者の責任である。かかる件に関する学者・専門家等の技術者の責任は、たかだか所要の信頼性が現実に達成されるかどうかに対してである。
     右の意見についての見解を問う。行政者の責任と関係する学者・専門家の責任の関係を具体例をもつて詳細に述べられたい。

二 「石油パイプラインの安全性を規制する法令に対する疑義」に対する回答について
 (1) 質問事項(1)は、事業法との対比を求めているものではない。質問を再度点検し、えりを正して答えられたい。
 (2) 事業法の規制で石油パイプラインの安全制が完全に保障されるとするなら、その根拠を具体的に明示されたい。
 (3) 質問事項(2)は、事業法の立法の趣旨の不解明さをただしているのである。公共の安全ということから考えると、事業法による保安規制が、パイプラインに沿つたいわば「沿線の安全管理」であるのに対して、消防法による保安規制は、それが不十分、不完全なものであるにせよ地域全体をにらんだ「地域の安全管理」であることを指向している。地域に存在する危険物が石油パイプラインだけではないということを考慮するならば、「地域の安全管理」から「沿線の安全管理」をとり出して、ことさら事業規制と一体化させるようなやり方では、地域の保安管理を効率的に行うことが第二義的になつていることになるのではないか。
     右の意見についての見解を求む。とりわけ田中(注)榮通産相(当時)の述べた「事業法がなくてもパイプラインはできるが、法制を整備して災害を防止し、国民生活を守るのは政府の責務である。」と、事業法の現実の姿との関係を明らかにされたい。
 (4) 質問事項(3)の回答で、十五という数字の選定根拠が明らかにされていない。これを明示されたい。
 (5) 質問事項(4)では、保安に関しては、「地域の安全性」を指向する消防法で一般的に規制し、事業許可の対象となるパイプラインについては、消防法の管理下でその一部をとり入れるような形に何ゆえできなかつたのかを問うているのである。安全保持をいうときの安全という言葉の中味を問題にしたのである。どのような安全を考えていたのかを技術的根拠を添えて明らかにされたい。消防庁が独自の見解をもつならば併せて明示されたい。
 (6) 質問事項(5)の回答に対して。消防法による許可は一定の技術的条件を満たしていることに対する覊束裁量である。この場合、いかなる形で市町村長又は知事の意見が反映されるのかについて、法的根拠を添えて具体的に明らかにされたい。協議が行われるにせよ、被許可者が国家事業を語るごりおし集団のときはどうか。
 (7) 質問事項(6)について。例えば、事業法第二十四条、第二十六条、第三十一条では、事業者の保安義務を定め、又市町村長の保安権利を定めている。事業者の義務は、裏返していえば住民の保安権利(環境保全権)である。かかる条文が消防法の中にあるのか。消防法と事業法とを安全基準だけで形式的に比較しているのではない。再度答えられたい。

三 「技術基準が告示されない理由」の回答に対して。漏えい検知方式、漏えい拡散防止措置等について長期間にわたつてなされた慎重な検討の内容を項目別に具体的に明らかにされたい。

四 「事業法にいう保安距離について」の回答に対して。以下の問いに根拠・理由を添えて具体的に答えられたい。
 (1) 質問事項(1)の回答について。一般に国民生活に大きな役割を果たしているのであるとすると何ゆえ禁止するのか。例えばパイプラインの事故による汚染をおそれてのことか。
 (2) 質問事項(2)について。地下水は、一般に国民生活に大きな役割を果たしている、又は果たし得るとは考えないのか。とりわけ地域の公共用水源となつている場合はどうか。
 (3) 三つの地下水汚染対策等の特別の処置を講じても、湖沼・貯水池等の汚染は防止できないのか。防止できないとすればそれはいかなる場合か。
 (4) 技術上の基準を定める省令第二条第一項は、その第二項によりしりぬけになつている。何ゆえことさら地下水を同条第一項第五号に含めてはならないのか。事業者に慎重な扱いを喚起してよいのではないか。
 (5) 四月十七日の衆議院公害対策並びに環境保全特別委員会において、建設省河川局治水課長栂野康行説明員は、政府を代表して、「地下水源につきましては、附近におきまして、非常に水源を使つているという例がありますと、やはり、あの項目は該当いたします。」と答えている。このあと現在に至る間に政府見解が変化したのか。いつ、いかなる理由で変化したのか。
 (6) 質問事項(3)及び(4)の回答について。これらの回答では、提起された質問に全く答えていない。問うていることは、保安距離を定めるのに、わざわざ、漏えい拡散防止措置及び漏えい検知装置等の機能を、それらを総合的に勘案すると称して、ゴタゴタととりつけてまでして、何ゆえ一・五メートルに固執するのかということなのだ。再度返答されたい。「技術基準検討専門委員会」の結論などは関係ないはずである。
 (7) 漏えい拡散防止措置及び漏えい検知装置等の機能を講じない場合、必要となる保安距離と埋設深さの関係を図示されたい。
 (8) 回答の中に、万一の漏えい事故による建築物への影響を未然に防止するためには、一・五メートルを確保すれば足りるとの「技術基準検討専門委員会」の結論を得ているとある。しからば、保安距離を一・四、一・三、一・二、一・一、一・〇、〇・八、〇・五、〇・二メートルとしたときの事故発生時の予想される最悪事態は、各々どのようなものか。「技術基準検討専門委員会」が真の技術者より編成され、真に技術的な結論が下されたとしたならば、この問いに対する答えは、内部的には既に出ているはずである。
 (9) 質問事項(5)及び(6)の回答について。絶対の安全性がないということは、フェイル・セーフにしておく必要があるということである。一方万一の漏えい事故のための措置として、保安距離は、漏えい拡散防止措置、漏えい検知装置等と共に重要な要素の一つとして考えていると回答しているが、漏えい拡散防止措置、漏えい検知装置等は、それぞれの機能が実現することを目的意識的に期待するものとしてあり、逆に期待に添えない場合も、原因はともかくとして存するということである。故障、事故があり得るということである。
     これに対して、保安距離そのものには故障、事故はない。とすれば、フェイエル・セーフとして最終的にたよるものは、保安距離しかないではないか。住民が保安距離を強く意識するのは当たり前ではないのか。この位のことがわからないのか。
 (10) 質問事項(7)について。回答は的はずれである。道路境界より一メートルの距離にパイプラインが敷設してある道路に面して、建築物を構築した住民は、事業法の安全基準からいつて、一・五メートルの保安距離をもつている建築物の住民より危険である。
     一般に安全であるとの保証は、形式的であるにせよ事業法では与えられない。かかる事実が存在するとき、災害から国民の生活を守るのを神聖な義務としている田中内閣としてはいかなる対応をとるのか。また、その住民の側にいかなる権利が存在するのか。例えば実力でパイプラインを掘り起こしてもよいのか。

五 「耐震設計について」の回答に対して
 (1) 地震時には地盤に変形が生じ、地下に埋設された石油パイプラインも、これとほぼ同じ変形を余儀なくされ、これに伴つて導管に応力が生じることになる。したがつて、導管は塑性変形に対して十分に耐えるように設計しておく必要があるのではないか。
     必要がないとするならばその理由は何か。地盤の弾性変形に対するのと何ゆえ対応の仕方を変えるのか。
 (2) 地盤の塑性変形に対しては、「導管として伸びが大きく、破断し難い材質のものを用い」とあるが、このとき導管に加えられる応力はどのようにして算定するのか。
 (3) 石油パイプラインの安全性を十分確保するために、
   (イ) 感震装置が正確に作動する。
   (ロ) 感震装置と連動して運転制御装置が正確に作動する。
   (ハ) 運転制御装置の作動により圧送機の運転が正確に停止する。
   (ニ) 同じく緊急しや断弁が正確に閉鎖する。
    ことのすべてが必要である。これらのうち一つでも作動しないとき、又は作動に時間遅れがあるときはどうなるのか。
 (4) 地盤の塑性変形に対してはパイプラインが破損する場合もあり得るとしているのか。
     パイプラインが破損する場合は、閉鎖した緊急しや断弁の間の石油はパイプラインから外へ流出することになるが、このことは当然の前提としているのか。

六 「技術基準」について
  「技術基準」は設計者、施工者、管理者等に対してその措置の仕方に具体的な指針を与えるべきものであつて、たんに心構えとか心得を伝授するものであつてはならない。行為者の主観によつてその解釈が多義にわたるような表現を避け、その意味(言語と実態との関係の規定)がユニークに定まるもの、すなわち、客観的な技術条件を定めるものでなければならない。しかも、満たすべき最低限の条件、すなわち必要条件しか定められるものでしかない。
  ところで告示される技術基準はかかるものであるか。
  そうでないとするならば、それでよしとする理由を明示されたい。

 右質問する。





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