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答弁本文情報

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昭和四十八年十月二十三日受領
答弁第二七号
(質問の 二七)

  内閣衆質七一第二七号
    昭和四十八年十月二十三日
内閣総理大臣 田中(注)榮

         衆議院議長 前尾繁三郎 殿

衆議院議員土井たか子君提出石油パイプラインの安全対策に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員土井たか子君提出石油パイプラインの安全対策に関する再質問に対する答弁書



一について

 石油パイプライン事業法(以下「事業法」という。)の技術基準は、技術基準検討専門委員会の結論を受けて、石油パイプライン事業の事業用施設の技術上の基準を定める省令(以下「技術基準省令」という。)及び石油パイプライン事業の事業用施設の技術上の基準の細目を定める告示(以下「技術基準告示」という。)として、政府の責任において定めたものである。

二について

(1) 消防法令が整備されるまでの間は、事業法に基づく技術基準告示に準じた措置をとることにより、パイプライン沿線住民の安全確保を図つてまいる所存である。

(2)及び(3) 事業法の目的は、合理的かつ安全な石油の輸送の実現と公共の安全を確保する見地から、事業の用に供する石油パイプラインにつきその公共的性格に基づく事業規制と当該施設についての保安規制とを一体的に行うことにより、石油パイプライン事業の運営を適正ならしめるとともに災害の発生の防止を図ることにあることは明らかである。
    事業法に基づく基本計画の決定、事業の許可及び工事計画の認可に当たつては、右趣旨に即して行うべきである旨、更には事前に関係都道府県知事の意見をきくべきである旨がそれぞれ定められており、同法による保安規制は、要するに石油パイプラインの設置に伴う危険を防止しようとするところにあるのであるから、御質問のような「地域の保安管理を効率的に行うこと」をおろそかにしているものでは全くない。

(4) 事業法の適用を除外することとした小規模事業用パイプラインについては、その規模及び他の輸送手段との代替機能を考慮して、導管の延長が十五キロメートル以下のものと定めたのである。(なお、英国パイプライン法においては、十マイル以下のものを適用除外としている。)

(5) 石油パイプラインの安全に関する規制については、消防法によるものと事業法によるものとに差異が生じないよう早急に消防法令の整備をする所存である。

(6) 石油パイプラインの設置が関係地方公共団体の理解と協力のもとに行われるべきことはいうまでもないところであつて当該設置については、地方公共団体の意見は当然反映されるものと考えている。

(7) 石油パイプラインに関する消防法令の整備は、技術基準告示に関する規定について行うほか、必要に応じ関係規定についても行う所存である。

三について

(イ) 漏えい検知方式について
    漏えい検知方式については、導管系内の石油の流量差及び圧力差による方式等によることとしたが、それによつては検知し難い極めて微少な漏えいを検知するため必要な検知口設置につき、長期間にわたつて実験を重ねる等慎重な検討を行つた。
    検討の結果、所定の箇所に検知口を設け、この検知口には原則として導管に沿つて設けられる漏えい検知用の管を接続させることとした。

(ロ) 漏えい拡散防止措置について
    漏えい拡散防止措置は、市街地等の地域に設置する導管に係るものと、河川上、隧道上、道路上等の特定の箇所に設置する導管に係るものとがあるが、検討に長期間を要したのは、主として市街地等に係る漏えい拡散防止措置についてであつた。
    数次の実験を伴う検討の結果、市街地等に係る漏えい拡散防止措置としては、導管を堅固で耐久力を有する構造物の中に設置させることとした。

四について

(1)から(5)まで
    利水上の水源である湖沼、貯水池等の石油パイプラインによる汚染の防止については、前回の答弁書三(2)で述べた三つの措置等を講ずることによつて可能であると考えるが、これらの湖沼、貯水池等は一般に国民生活に大きな役割を果たしているので原則として禁止することとし、地形の状況その他特別の理由により当該場所に石油パイプラインを設置することがやむを得ない場合においては、個々の湖沼、貯水池の実情に即して保安上適切な措置を講じたうえで設置することができることとした。
    一方、地下水も重要な役割を果たすものではあるが、地下水は全国的に広く存在しており、これを避けて石油パイプラインを設置することは一般に困難であるので、前述の三つの措置等を講じ、地下水の汚染の防止について万全の対策を講じたものである。
    なお、技術基準省令第二条第一項第五号の「利水上の水源である湖沼、貯水池等」は表流水に係るものを指すと考えており、五月八日の衆議院公害対策並びに環境保全特別委員会において、建設省河川局河川計画課長飯(注)敏夫説明員が説明しているとおりである。

(6) 建築物に対する保安距離については、我が国の土地利用の状況をふまえ、実験を伴う慎重な検討の結果万一の漏えい事故においても建築物に対しての影響を未然に防止できる措置として、漏えい拡散防止措置及び漏えい検知装置等を設置させることにより保安距離を一・五メートルとしたものである。

(7) 御質問のような漏えい検知装置を設けないパイプラインの設置は、認可しないこととしている。

(8) 万一の漏えい事故による建築物への影響を未然に防止するための保安距離は、実験を伴う検討の結果定めたものであるが、実験は、市街地等の漏えい拡散防止措置を要する場合とそれ以外の場合とについて実施し、前者については、導管を堅固で耐久力を有する構造物の中に設置し、後者については、砂又は砂質土の中に導管を設置し、かつ、両者とも導管の上下に漏えい検知用の管を沿わせて、漏えい時における態様を調査し、これらの結果をふまえて検討した結果、建築物に対して一・五メートルの距離をとれば万一の場合においても影響を未然に防止できるとの結論を得たものである。

(9) 保安距離は、導管の材料・構造、敷設方法、保安設備等とともに石油パイプラインの安全性を確保するための重要な要素の一つであると考えている。

(10) 石油パイプラインの設置後において、当該パイプライン沿線に建築物が設置されることにより、建築物とパイプラインとの間の距離に変動が生ずる場合においても、当該パイプライン事業者は、保安距離に関する技術上の基準に適合することを維持するよう義務づけられている。

五について

(1)、(2)及び(4) 地震時にパイプラインが破断等の損傷を受けるのは、地盤の変形(塑性変形を含む。)により、パイプラインがその限度を超える変形(歪)を受けた場合であるが、このような事態の生じないように、パイプラインの設計、施工に当たつては、次のような配慮を加えることとしている。

   イ 鋼管は、伸びが大きく、破断し難い材質のものとすること。

   ロ 鋼管の接合は、原則として鋼管本体と同等以上の強度が確保されるアーク溶接によることとし、溶接部はその全数について放射線透過試験等の検査を行うこと。

   ハ 橋りよう等構造物との取付部、地盤の性状が急激に変化する箇所等では、必要により曲り管を用いる等変形に十分耐えられる構造とすること。
    万一、石油パイプラインが破損した場合、閉鎖した緊急しや断弁の間の石油の圧力が低下するまでは、石油の一部漏出は避けられないと考える。

(3) 感震装置、運転制御装置、緊急しや断弁等の保安システムは、地震時においても正確に作動し得るものを用いることとしている。
    また、定期的に保守点検を行い、常に正常な状態に保持するほか、パイプラインには、これらの保安システムが正常に作動することが確認されなければ、圧送機が作動しない制御機能を備えさせることとしている(技術基準省令第三十条第一号)。

六について

 技術基準告示は、パイプラインによる石油輸送の安全を確保するために石油パイプライン事業の事業用施設が満たすべき条件を具体的に規定したものである。
 技術基準告示は、多面的かつ客観的に検討を重ねた結果作成したものであるから、パイプラインによる石油輸送の安全を確保するのに十分であると考えている。

 右答弁する。




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