衆議院

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昭和四十九年七月三十一日提出
質問第七号

 土壌凝固剤の危険性に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十九年七月三十一日

提出者  土井たか子

          衆議院議長 前尾繁三郎 殿




土壌凝固剤の危険性に関する質問主意書


 広島県三次市・福岡県新宮町・東京都江戸川区・千葉県成田市等で発生した相次ぐ土壌凝固剤による「事故」を前にして、建設省は、たとえ緊急を要するとされる「公共事業」であつても、土木建設工事優先の立場がとれなくなり、人の健康被害の発生と地下水の汚染を防止するとの観点から、五月二日と七月十日の二度にわたり、建設事務次官通知で、安全性が確認されない限り、尿素系土壌凝固剤等の高分子系薬液による注入工法は全面中止するとした。これは建設省が一連の「事故」発生に対し、技術者としての良心に目覚め、謙虚に反省し、かつ、かかる事態を土木建設工事における安全確保のための制度上の欠陥であることと認識し、尿素系土壌凝固剤等の安全性が現在確認されていないため暫定的な処置としてとられたものであり、それはいわば、「疑わしきは罰す」との安全性にとつて基本的な立場からなされたとのことである。
 ところが、七月十日の建設事務次官通知「薬液注入工法による建設工事の施工に関する暫定指針について」には、新規工事に対する暫定指針の外に、現在中断中の工事の再開条件についても述べられていて、その水質基準の扱いに、「疑わしきは使用せず」との立場を危うくするものがある。これは、水質基準の策定を一に厚生省の判断にゆだね、建設省が水質の安全性に対しもたねばならぬ独自の判断を回避したためとも思われる。更に、かかる建設事務次官通知は、「疑わしきは使用せず」との精神からみれば正当に解釈できるものを、建設事業主体の中には、地方自治体も含めて、自己の事業を急ぐと称して、住民無視にもつながるような解釈の誤りをなすものがないとはいえない。
 そこで、「薬液注入工法による建設工事の施工に関する暫定指針について」と題する七月十日付の建設事務次官通知(以下「次官通知」という。)等の解釈をより鮮明とし、かつ、安全性についての問題点、とりわけ、厚生省の安全性についての考え方を明らかにするため、住民の生命を守り、健康被害の発生を防止し、環境を保全するとの立場から、以下質問を提起する。

一 次官通知の解釈について
 (1) 次官通知の記3の(1)において、「水質基準に適合していないものがあるときは、簡易水道の敷設等飲料水の確保に関し代替措置を講じること」とあるが、
   (イ) かかる代替措置を講じる主体は誰であるのか。地方自治体か、それとも事業主体か。
   (ロ) 地方自治体が、かかる代替措置を講じる場合、事業主体が総経費を全額負担すべきと思うがどうか。その理由は何か。
   (ハ) かかる代替措置の経常費(例えば水道料金)は、その使用量のいかんをとわず、事業主体が負担すべきと思うがどうか。その理由は何か。
   (ニ) 代替水源の確保に責任を負うのは誰か、地方自治体か、事業主体か。
   (ホ) かかる代替措置は臨時的なものか恒久的なものなのか。その理由は何か。
   (ヘ) 臨時的な場合はともかくとして、恒久的な措置が必要な場合、恒久的な代替水源がない場合はどうするのか。
   (ト) 水質基準に適合していない井戸はどうするのか、使用を全面禁止し、埋めてしまうのか。それとも、用途を限つて使用を認めるのか。後者の場合、事故発生の恐れはないのか。その理由は何か。
 (2) 次官通知の記3の(2)において、一部の水ガラス系土壌凝固剤の使用を許容しているが、
   (イ) 水ガラス系土壌凝固剤を製造するとき、原材料に含有されていたカドミウムが、製品にも含まれることになるというようなことはないのか。ちようど、原油中の硫黄が、石油製品中にも残留し、困つた問題を引き起こすというように。
   (ロ) 水ガラス系土壌凝固剤に含まれるカドミウムについて調査したことがあれば、その調査主体、目的、結果について明らかにされたい。また、安全であると判断できる根拠は何か。
 (3) 次官通知の記3の(4)において、使用が禁止されている薬液を注入した地盤を掘削する場合について定めているが、
   (イ) かかる規定が設けられているのは、地盤の掘削に対し、いかなる工法を用いても、例えば、泥水加圧機械推進工法を用いても、周辺地下水の汚染の可能性を絶対的に否定しえないとの前提に立つているからとしてよいのか。その理由は何か。
   (ロ) 「掘削残土」の定義は何か。カッター等によつて地盤が削りとられた瞬間から掘削残土が発生するとしてよいのか。その理由は何か。
   (ハ) 地下水中で地盤をカッター等で掘削したことになる場合はどうか。地下水をしや断できないことになるが。
   (ニ) 「地下水等としや断すること」とあるが、「地下水等」の「等」の意味について明確にされたい。
   (ホ) 地下水等の水質の監視において監視の結果講ずべき措置及び採水地点についての規定が明示されていないが、暫定指針第四章の例によるとしてよいのか。でなければどうすべきなのか。
 (4) 別表 ― 一の水質基準において
   (イ) ホルムアルデヒドの検査方法に、日本工業規格K〇一〇二で定める方法を特に指定していない理由は何か。この方法だと定量限界が〇・〇六となつてよいのではないのか。
   (ロ) ホルムアルデヒド及びアクリルアミドの水質基準は、「検出されないこと」としてあり、欄外の注で、それぞれ〇・五PPM及び〇・一PPMの定量限界以下であるとしているが、このような表示の仕方にしたことにどのような意味があるのか。水質基準をそれぞれ〇・五PPM以下及び〇・一PPM以下としてはいけない理由は何か。
   (ハ) 「検出されないこと」と、あえてこのような表現をとるのは、技術的実現可能性を度外視して考えるならば、全く含有されてはならないものとしているからとしてよいのか。その理由は何か。
   (ニ) ホルムアルデヒドとアクリルアミド以外の水質基準は、水道法で定められた規定を建設省の判断で必要とする部分をとりいれ、ホルムアルデヒドとアクリルアミドに関しては、建設省が厚生省に直接指示を仰いだと聞くが、厚生省からいつ、いかなる文書で指示を受けたのか、また、その内容は何か。
   (ホ) 建設省は、厚生省が安全性に対し「疑わしきは罰す」の立場、すなわち、安全性にとつての基本的な観点に立つていると判断しているのか。その理由は何か。
   (ヘ) 水質基準の検査項目は、薬液成分の土壌中での挙動が明らかではないものがあるとしているのに、いかなる基準により選択したのか、薬液の種類ごとに、次官通知の要請としてある安全性重視の観点から具体的かつ詳細に回答されたい。何にしろ、住民の健康被害の発生に直接係わることなのだから。
   (ト) 例えば、尿素系土壌凝固剤の場合、検査項目はホルムアルデヒドただ一つであり、これをもつて尿素系土壌凝固剤溶出のインデックスとしているが、薬液成分の土壌中での挙動が明らかでない以上不完全な、従つて不安全な検査となるのではないのか。そうならないとするならば、その理由は何か。
   (チ) 尿素系土壌凝固剤の場合、尿素・メチロール尿素・硫酸(又は水素イオン濃度)・硫酸により溶出させられた土壌中の鉄は何故検査項目としないのか。これらはホルムアルデヒドと必ずしも溶出特性(例えば時刻を追つた溶出状況)が同一であるとはいえないのに。その他、濁度、過マンガン酸カリ消費量、溶存酸素等を加えて総合的に検査し、尿素系土壌凝固剤の有害な溶出状況を判断すべきではないのか。
   (リ) 尿素系土壌凝固剤において硬化剤として用いられる工業用希硫酸は、高分子合成反応の蝕媒であつて、直接反応にあずからず、変化しないが、比較的早期にほとんどすべてが地下水中へ流出することが指摘されている。建設省は、かかる硬化剤の流出についてどのように判断しているのか。
    ちなみに、土木学会第二十九回年次学術講演会において、広島大学工学部土木工学科の山口登志子氏らによつて、「薬液注入による地下水汚染について」と題する報告が行われ、その中で、硬化剤が、ほとんどすべて流出することが実験的な裏付けをもつて述べられている。
 (5) 別表 ― 二の排出基準について
   (イ) ホルムアルデヒドの検査方法として、日本工業規格K〇一〇二の二とあるが、K〇一〇二の二一の誤りではないのか。
   (ロ) ホルムアルデヒド及びアクリルアミドの水質基準決定の根拠を明らかにされたい。
   (ハ) 排出基準と飲用水の水質基準の違いをどのように考えているのか。根拠、理由を添えて具体的に明らかにされたい。
   (ニ) 排出基準の検査項目選定の理由を科学的根拠を明らかにして薬液ごとに具体的に明示されたい。

二 次官通知別添資料の暫定指針について
 (1) 暫定指針一 ― 一の目的で、「人の健康被害の発生」と「地下水等の汚染」を併置しているが、人の健康被害の発生の有無によらず地下水等の汚染を防止しなければならないとしているとしてよいのか。その理由は何か。
 (2) 暫定指針一 ― 三 ― (1)において、地盤の透水性を減少させるとあるが、このことは、土壌凝固剤の注入により凝固したとされる地盤も、地下水が通過しえることを示していると解釈してよいのか。その理由は何か。
 (3) 暫定指針二 ― 二で、薬液注入工法の採用決定に当たつて行う調査について定めているが、
   (イ) 地下水流の方向と流量・流速については、事前調査しておく必要がないのか。その理由は何か。
   (ロ) 土質調査のためのボーリング箇所の選定は、周辺の土質状況が、全体的に掌握されるようにサンプリングして行われるべきものとしてよいのか。
 (4) 暫定指針三 ― 一の中に「公共用水等」なる表現があるが、「公共用水域等」の誤りではないのか。
 (5) 暫定指針三 ― 二は現場注入試験を義務付けている。
   (イ) 何故、現場注入試験なるものが必要なのか。
   (ロ) 正確な計量及び確実な混合、随時のゲルタイムのチェック及びボーリング用機械を使用して、慎重に薬注工法を実施しても薬液が無反応のまま土中に浸透することはないとはいえないとして、現場注入試験も必要なこととしているのか。
 (6) 暫定指針三 ― 六 ― (2)において「排水施設に発生した泥土」なる表現があるが、これは、次官通知の記三 ― 四 ― (イ)にある「掘削残土」とは異なるとしてよいのか。理由は何か。
 (7) 暫定指針四 ― 一 ― (3)で、検査を行う機関として「公的機関」を一般的に挙げているが、かかる「公的機関」がすべて、目的とする検査を行う能力があると判断しているのか。千葉県の衛生研究所では現在の状況ではお手上げだと所長自らが述べたと聞くが。
 (8) 暫定指針四 ― 二 ― (1)で、地下水の流向を知ることが必要となるが、事前調査としてなすべきものとしているのか。
 (9) 暫定指針四 ― 四で、水質基準に適合していない場合、又はその恐れのある場合は直ちに工事を中止し、必要な措置をとらなければならないとあるが
   (イ) 水質基準に適合していない恐れのある場合とはどのようにして判断されるのか。
   (ロ) 必要な措置の具体的な内容を例示されたい。

三 次官通知にある再開工事に関する事項の中心の一つは、水質検査である。ホルムアルデヒド及びアクリルアミドについては、飲用水向きの基準が現在ないところから、厚生省の指示に従つたと聞く。そこで、以下、厚生省の安全行政について問題を提起したい。
 (1) 厚生省は、飲用水中に含まれるホルムアルデヒドとアクリルアミドの許容限界(安全限界)をそれぞれいくつとするのか。それぞれ〇・五PPMと〇・一PPMとするのか。また、その毒物学的根拠を以下の各毒性ごとに、安全データと研究論文名を添えて明らかにされたい。

@ 急性毒性 A 亜急性毒性 B 慢性毒性 C 発ガン性毒性
D 催奇性毒性 E 突然変異誘導性毒性  

 (2) 厚生省は、毒物について、その検出限界と安全性保障の限界との相違について明らかにされたい。その例をホルムアルデヒド及びアクリルアミドの水質基準について述べられたい。
 (3) 「検出されないこと」が認識される場合、その検出方法はどのように理解してよいのか。本来、「検出されないこと」と「定量以下であること」とは別問題であると考えられるがどうか。
 (4) 厚生省がホルムアルデヒド及びアクリルアミドの定量限界をそれぞれ〇・五PPM及び〇・一PPMでよしとした根拠は何か。分析技術的な限界値としてなら、分析化学的な根拠を添えて明らかにされたい。
 (5) 例えば、ホルムアルデヒドの定量限界について、東京大学や神奈川県衛生研究所では、〇・一PPMを普通に実現しているが、厚生省や関係機関の中には、この分析限界を実現できるものがいないのか。
 (6) 飲用水中のホルムアルデヒドを定量するのに、何故防害物質の存在を前提とした分析方法を用いなければならないのか。何故試験する前に蒸留操作が必要なのか。
 (7) 例えば、弗素の定量は、工場排水試験法では事前蒸留を必要としているのに、水道法ではこの蒸留を必要としていないが、この理由を厚生省は理解できるか、その内容は何か。
 (8) 厚生省は、ホルムアルデヒドの毒性が、急性、慢性を問わず、尿素やメチロール尿素により増加するが、この事実を認識しているか。
 (9) 厚生省は、ホルムアルデヒドやアクリルアミドの毒性について、その安全限界を定めるのに他の物質の存在をどのように考慮したのか。その内容を具体的に明らかにされたい。

 右質問する。



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