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昭和五十一年十月二十三日提出
質問第八号

 インドネシアLNG(液化天然ガス)開発輸入に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十一年十月二十三日

提出者  高田富之

          衆議院議長 前尾繁三郎 殿




インドネシアLNG(液化天然ガス)開発輸入に関する質問主意書


 インドネシアLNGの開発輸入問題は種々の疑惑を招いているので、次の事項について質問いたしたい。

第一 インドネシアLNGの開発輸入はナショナルプロジェクトであるから、合意議事録及び販売契約書は公表してしかるべきものと思料する。政府はいかなる理由により公表しないのか。
  昭和五十一年九月二十一日本件に関し左記の資料要求を通産省にした。
 一 両角良彦通産省顧問が政府特使としてインドネシアを訪問し、インドネシア政府のラディウス・プラウィロ商務大臣とLNG開発輸入について会談、合意した議事録の写し
 二 両角特使、ラディウス商務大臣の合意に基づき、日本側ユーザー五社(関西電力、中部電力、九州電力、大阪瓦斯、新日本製鉄)の各代表とインドネシア側プルタミナのイブン・ストウ総裁との間に結んだ販売契約書の写し
 三 日本インドネシア・エル・エヌ・ジー株式会社(略称ジルコ)の設立年月日、資本金、役員名、株主名、営業目的
 四 インドネシアLNGプロジェクトへの融資について、政府の海外経済協力基金を通じての融資額、融資条件、ジルコを通じての融資額、融資条件及び日本輸出入銀行、市中銀行など各行別の融資額
 五 河本敏夫通産大臣とラディウス・プラウィロ商務大臣との交渉合意により、昭和五十一年六月ジルコを通じてのプルタミナに対する追加融資額、融資条件、各銀行別の融資額、追加融資をする理由
 六 昭和五十一年八月中旬から九月にかけて、インドネシアLNGの取引条件及び輸送問題についての交渉が東京で開かれ、契約の一部が改訂された更改契約書の写し
 七 ブルネイ及びアラスカから輸入しているLNGの最近のCIF価格
  以上、七項目の資料を要求したが、十月八日になつて、要求項目の一、二、六、七各項の提出を拒否してきた。また、提出された三、四、五の各項も資料として不十分なものである。提出拒否の理由として、一項についてはインドネシア側の了承を得ないことには提出できない、二項については私契約であるので提出できぬ、六項についても二項と同じ理由で提出できぬ、七項は民間取引の価格であるので提出できぬということである。
  国民の納税が原資となる政府資金による対外経済協力の合意内容は原則として公表すべきであると思料する。日本側から十四億七千万ドルという巨額の融資をもつてするナショナルプロジェクトである。このうち海外経済協力基金から五百六十億円(二億ドル)、日本輸出入銀行から八億五千七百万ドル、国際協調融資五千万ドルと政府資金が合計十一億七百万ドルとなり、融資総額の七十五パーセントが政府ベースの資金である。ユーザーによる市中銀行からの民間ベースの資金は二十五パーセントに過ぎない。かかるナショナルプロジェクトの販売契約は私契約であつてよいものであろうか。政府資金、すなわち国民負担の資金によるナショナルプロジェクトの販売契約が、私企業の自由裁量によつて結ばれるのは問題であると思料する。内閣の見解を求めるものである。

第二 インドネシアLNGの輸入価格が高くなつた理由はなにか。
  日本側ユーザーがプルタミナと結んだ昭和四十八年十二月三日の販売契約によると、LNG百万BTUのCIF価格一ドル二十九セント(FOB価格九十九セント、輸送費三十セント)で、LNGのFOB価格は年率三パーセントの値上げを下限とし、上限は原油価格の上昇にスライドする。LNGタンカー建造費の値上がりを輸送費コストに算入するといつた、日本側にとつて非常に不利な契約になつている。
  LNG百万BTUの当時の国際相場は平均六十セントであるのに比べ、九十九セントは非常に高価格である。昭和五十一年九月一日に改訂された価格は、百万BTU当たりCIF価格二ドル三十三セントと報道されている。この価格は、本年一月より七月末までの間に輸入したブルネイ及びアラスカの平均価格一ドル八十六セントに比べ四十七セントも高い。インドネシアLNGの輸入計画量は年間七百五十万トンで昭和五十二年三月より向こう二十年間輸入することになつている。四十七セントの差額は年間にすると一億八千三百三十万ドル、二百九十円で換算すると五百三十一億五千七百万円となる。二十年間の合計では一兆六百三十一億四千万円という巨額なものになる。このことは電力・ガス料金のコストが割高となり公共料金の値上がりとなつて国民生活を圧迫する。
  ブルネイ及びアラスカより輸入しているLNGは民間ベースのプロジェクトである。資金コストの高い民間ベースで開発輸入しているLNGが低価格で、資金コストの低いナショナルプロジェクトで開発輸入するインドネシアLNGが高価格であることは理解できぬ。内閣の明確な回答を求めるものである。

第三 追加融資に問題はないか。
  昭和四十八年十二月二十七日総理官邸において、当時の田中総理、大平外務大臣、二階堂官房長官、鶴見外務審議官らが協議して、このプロジェクトに五百六十億円(二億ドル)の借款を決定した。四十九年一月十六日インドネシアにおいて田中・スハルト会談による共同声明の第九項にLNG開発協力が盛られ、二月二十八日融資の窓口会社ジルコが設立、三月十六日インドネシア政府を通じてプルタミナに五百六十億円の政府借款の交換公文が交わされ、ジルコを通じての融資は五月十七日八億九千八百万ドルの契約が結ばれた。この融資契約が結ぼれて一年もたたない五十年三月にプルタミナは財政危機により経営破たん状態になつた。このため、プルタミナは五十年五月頃からチャーター及び分割払い購入契約した船舶代金の支払を事実上ストップした。この契約代金は二十七億ドルといわれ、これによりプルタミナに債権を有する欧米の海運会社は、ニューヨーク、ロンドン、シンガポールなどで、それぞれ訴訟を提起した。すでにプルタミナのチャーター船プルミナ・サム・ドラ十二号が日本に向け原油(三十七万五千七百八十八バーレル)を積んで来る途中、グァム島で差し押えられ、この原油は本年九月二十二日公売されたといわれる。また、七月二十四日にはプルタミナの所有船舶二隻(サム・ドラ十四号、プルミナ一〇八号)がシンガポールで差し押えられるなどの事態が発生している。
  プルタミナの負債総額は八十億ドルとも百億ドルともいわれているので、今後ますますかかる事態がひん発するものと予想され、五十二年三月よりプルタミナのLNGを日本に輸送する途次、プルタミナの債権者が差し押え公売するという懸念がある。高価格に加え供給の安定性にも欠けるのではないか。このことは融資の償還にも大きく影響する。
  五十一年六月プルタミナのかかる状態を知りながら追加融資を決めたことは問題である。河本敏夫通産大臣は海運業界の出身である。通産大臣就任に際して三光汽船の社長を退任されたが、同社の実質上のオーナーであることは否定できぬ。プルタミナをめぐる訴訟は外航船を運航している海運会社ならよく知つている。河本通産大臣も三光汽船の関係からしてプルタミナのかかる状態はよく知つておられたに相違ない。
  昭和五十年四月河本敏夫通産大臣はオーストラリア及びニュー・ジーランドを公式訪問された帰途、インドネシアのジャカルタに立寄られたが、同地に行かれた目的はなんであつたのか。その直後に、インドネシア側より追加融資の要請が公式に出てきた。オイルショックにより天然ガス液化設備の工事費が上昇したとのことであるが、一年もたたないうちに四億数千万ドルも上昇するとは考えられぬ。インドネシアの要請に対し、五十一年六月ジルコを通じて三億二千二百万ドル、国際協調融資五千万ドル合計三億七千二百万ドルの追加融資を決定した。
  この融資はプルタミナの財政破たんを救済するために投じられたのではないか。プロジェクト以外の使途に使われていないか。追加融資を決定するに際して、第一次融資十億九千八百万ドルが目的どおり使われているかどうかチェックをしたか。内閣の明確な回答を求あるものである。

第四 インドネシアLNGの日本向け輸送契約に疑惑はないか。
  日本向けLNG輸送のLNGタンカーの用船権はプルタミナにあり、プルタミナは四十八年九月二十三日ブリティッシュ・バーマ・オイル社の孫会社である米国法人バーマスト・イースト・シッピング社と輸送契約を結んだ。この会社はインドネシアLNGの日本向け輸送の独占利権より生じる利益を関係者に配分するトンネル会社であることが指摘され、五十一年七月に閉鎖、八月新たにバーマ・ガス・トランスポート社が設立され、プルタミナと輸送契約を結んだ。また、プルタミナとバーマ・オイル・グループ及びLNGタンカーを建造しているゼネラル・ダイナミックス社との関係に種々の黒い疑惑があると報道されているが、政府は真相を調査しているか。輸送費が高いのは、かかる疑惑が事実だからではないのか。回答を求めるものである。

第五 河本敏夫通産大臣に地位利用の疑惑はないか。
  本年八月中旬より東京でインドネシアLNGの取引条件及び輸送問題についての協議が、プルタミナ、バーマ・オイル・グループ、ゼネラル・ダイナミックス、ジルコの四者でもたれ、九月一日LNGのCIF価格二ドル三十三セントという非常に高い価格が決められたという。
  このうち三十三セントが輸送費である、高い輸送費である。この輸送問題の協議で、バーマ・オイル・グループはライバルであるリベリアのゴタス・ラーセン社とノルウェーのライフ・ヘイグ社に各一隻のLNGタンカーのスポット用船契約を決めたといわれる。スポット用船契約ではあるが将来長期用船されることが特約されているといわれている。ゴタス・ラーセン社は四十八年五月川崎重工業株式会社にLNGタンカー二隻の建造を発注したが、本年二月二十七日付きの「電気新聞」に「IU子会社ゴタス・ラーセンのLNGタンカーは、二十年間液化天然ガスを日本に運び続けます」というLNGタンカーの写真入りの広告が掲載された。用船契約が決まつたのは九月一日といわれる。その六ケ月前にこのような広告が掲載されたことに疑惑を抱かざるを得ない。ゴタス・ラーセン社と三光汽船の関係は深いものがあるといわれている。ゴタス・ラーセン社の船を三光汽船は用船しており、その船名に、GOLAR TOKOなりGOLAR  SANKOという船名がある。GOLARはゴタス・ラーセン社(GOTAAS・LARSEN・INC)の頭文字GOとLARを結びつないだものであり、TOKOは河本敏夫通産大臣の子息で三光汽船の取締役河本東光氏の名前である。SANKOは三光汽船の三光である。この船名によつても、ゴタス・ラーセン社と河本敏夫通産大臣がオーナーである三光汽船の間柄がうかがえる。
  ゴタス・ラーセン社のインドネシアから日本に運航するLNGタンカーは、三光汽船がオペレーターになるだろうと海運業界ではいわれているが、もしこれが事実であるとすると、河本敏夫通産大臣は地位利用して、インドネシアLNG輸送の利権に介入したとして批判されてしかるべきであろう。この疑惑についての回答を求めるものである。

 右質問する。





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