質問本文情報
昭和五十四年一月二十九日提出質問第三号
建設労働者、出稼労働者の職場の安全確保と雇用の改善に関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
昭和五十四年一月二十九日
提出者 栗林三郎
衆議院議長 ※(注)尾弘吉 殿
建設労働者、出稼労働者の職場の安全確保と雇用の改善に関する質問主意書
建設労働者、出稼労働者をめぐる職場環境の改善は依然として進まず、また、雇用関係も不正常なものが極めて多く、そのために労働災害や事故が多発している現状である。
ここに質問として取り上げた、昭和五十二年六月二十四日午前一時頃、大阪市大正区三軒家東五ノ三ノ二七所在の柳井建設(社長柳井武雄こと柳根祚…韓国籍)付属寄宿舎より出火、全焼し、宿泊の労働者中十二名の焼死者と二名の負傷者を出した労災事故は、その原因が建設業付属寄宿舎規程の無視に基づくものであり、かつ、被災者を含む当時宿泊していた全労働者の雇用関係も極めて不正常で、職業安定法違反の疑いが濃厚である。従つて事故発生当時、この職場において労働基準法やその他の関係労働諸法規が守られ、労働者の安全管理や正常な雇用関係が確立されていたかどうか、極めて重大である。
よつて、当焼死事故に関連して次の事項について質問する。
二 この事故による死亡、負傷者全員の姓名、生年月日、本籍、続柄など明らかにされたい。
三 死亡、負傷者等全被災労働者に対し給付された「労働者災害補償保険法」に基づく諸給付の内容を、各個人別に詳細に明らかにされたい。また、受給権者の氏名、続柄、生年月日、住所等についても明らかにされたい。
四 前記、労働者災害補償保険法に基づく給付金算出に当たり、その給付基礎日額をどのようにして計算されたのか、その根拠を明示してもらいたい ― 賃金台帳の有無、焼残りの賃金台帳によつたものか、過去一定期間支払つたという賃金の内容などその算出方法と根拠について ― 。
五 事故発生は六月二十四日であつたが、六月分の死亡者十二名の未払賃金は、事業主等の記憶によつて大阪労働基準局・監督署は次のように認定されたと聞いているが、事実か。
死亡者 | 村田 | 建一 | 十五万円 | 月給 | ||
〃 | 杉田 | 幸男 | 五千五百円 | 十八日分 | ||
〃 | 山田 | 修助 | 六千二百円 | 十日分 | ||
〃 | 梶谷 | 哲康 | 六千円 | 八日分 | ||
〃 | 西谷 | 渡 | 五千円 | 十八日分 | ||
〃 | 穴戸 | 勤 | 五千円 | 十七日分 | ||
〃 | 松田 | 勲 | 六千円 | 十二日分 | ||
〃 | 金 | 泰鎰 | 五千五百円 | 十七日分 | ||
〃 | 小野 | 安馬 | 五千円 | 二十日分 | ||
〃 | 押岡 | 豊巳 | 五千円 | 三日分 | ||
〃 | 矢川 | 広 | 五千円 | 一日分 | ||
〃 | 水野(身元不明) | 不明 | 不明 |
なお、六月中における被災者以外の労働者の就労先の元請業者と就労延人員をも、また、工事現場への往来は、柳井建設宿舎よりマイクロバス等で通勤させたか、それとも、供給先の元請業者の寄宿舎に宿泊させて就労させていたのか等々についても明らかにされたい。
七 当事故発生前六カ月間における各被災者にかかわる求人、供給の具体的内容を、各被災者別に明らかにしてもらいたい(就労先の現場、元請業者、稼働日数等)。
八 財団法人西成労働福祉センターの記録によれば、柳井建設は当センターより次のごとく労働者を直接募集している。すなわち、昭和五十二年一月(四三人)、二月(二七〇人)、三月(四五五人)、四月(三二五人)、五月(三六三人)、六月(一〇八人)となつている。柳井建設はこれらの労働者を各方面の建設現場に移送し、元請業者に供給配置していたものであつて、雇用、労務供給上問題があり、職安法違反の疑いも持たれている。よつて、これらの労働者がどこの現場に、どこの元請業者に供給配置されていたのか、その稼働延人員は何人か、本事故発生前六カ月間のこれらの実態についても明らかにされたい。
なお、当方の調査によつて、五十二年三月以降柳井建設が労務供給した元請業者は、次のごとく判明している。
坂口建設(摂津市内の流通センター工事) | |
西濃組(西淀川区道路工事) | |
藤原工務店(吹田市の府営住宅工事) | |
銭高組 ― 下請駒井建設 ― 千代田組 | |
奥村組関西支店(四日市市の百貨店工事) | |
佐藤道路 | |
大林組 ― 下請大信建設(生駒の樟蔭学園小学校工事) |
九 最近時における建設業付属寄宿舎の点検、検査、行政指導、さらに建設労働者の雇用の改善に関する行政指導等の実施の内容と結果について明らかにされたい。
右質問する。