質問本文情報
昭和五十五年九月三十日提出質問第三号
「靖国神社問題」に関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
昭和五十五年九月三十日
提出者 稲葉誠一
衆議院議長 福田 一 殿
「靖国神社問題」に関する質問主意書
「靖国神社問題」に関して次の事項について質問する。
1 何故かかる厳格な規定が設けられたか、その趣意について見解を示されたい。
2 現行憲法の右の規定は、戦前における国家と宗教との関係に対する否定的な歴史的事実がとらえられて、このような厳格な規定がなされたと思われる。この否定的な歴史的事実とは、いかなるものなのか指摘されたい。
3 旧憲法下においては国家と宗教との関係、在り方が、
イ 法的にどのように規定されていたか。
ロ 政治制度上、社会制度上の現実はどのようなものであつたのか。
指摘されたい。
4 また「国家神道」とは何か。旧憲法下においてこれの取扱いはいかがであつたか。何故「国家神道」のみが「国教化」されるまでの特権的地位を与えられたのか。他宗教に対する弾圧の事例をその法的根拠を示して明らかにするなかで、詳細に説明されたい。
5 一九四五年、連合国軍最高指令部が発布した、いわゆる「神道指令」はどのような内容で、それの今日にいたる効力の有無を明らかにされたい。
6 この「神道指令」は、どのような歴史的見地に立つて発布されたと考えられるか。また、「神道指令」の趣旨は憲法第二十条、第八十九条の規定において全面的に体現されていると解釈しても差し支えないか。
7 一九四六年の年頭詔書、いわゆる天皇の「人間宣言」は、この「神道指令」といかなる関連があつたのか、その有無を、それぞれの理由を述べて明示されたい。
8 憲法第二十条第三項に規定された「国及びその機関」とは、具体的にどのようなものをさすのか指摘されたい。また、そのなかには天皇も含まれるのか明らかにされたい。
二 「靖国神社」の成立過程及びその果たしてきた役割等に関して
1 「靖国神社」が創建された当初の趣旨について明らかにし、以降第二次大戦の終戦にいたるまで、「靖国神社」が戦争において果たしてきた役割を具体的に示されたい。
2 第二次大戦の終戦を境にして「靖国神社」のもつ政治的・法的性格は、どのようにして改変したと考えられるか、指摘されたい。
3 戦後、「靖国神社」の名称を改変しなかつた理由について述べられたい。
4 「靖国神社」への公式参拝、国家護持とは、具体的にどのような事実関係をもつて示されるのか、定義されたい。
また、公式参拝、国家護持はなぜ禁止されているのか、法的根拠を明示されたい。
5 「靖国神社」は現行憲法上、宗教団体と解されているのかどうかの見解を、宗教団体である・ないの両説のいずれにおいても、いかなる事実、法的根拠に基づいてなされるのか明示されたい。
6 右の質問との関連において、「靖国神社」が宗教団体であると解した場合、その国家護持を図るためにはどのような措置が必要であると考えるか、見解を示されたい。
その際、例えば「靖国神社」の名称を変更することや宗教性を排除させるなどによつて国家護持が可能とした場合、それは、国が特定の宗教団体に介入することになり、「信教の自由」を犯したことにはならないのか、その見解をあわせて示されたい。
7 「靖国神社」の「国家護持法案」を政府提案することの意向の有無と、いかなる内容であれば、それは憲法違反にならないと考えているのか、具体的事例をあげて見解を示されたい。
三 現在、八月十五日武道館において「全国戦没者追悼式」が行われているが、
1 主催者はどこであり、どのような形式・内容のもとに行われているのか、また、いかなる規定に基づいてこの時天皇は出席しているのか明らかにされたい。
2 これを「靖国神社」で行わないことの事由を憲法との関連で明示されたい。
3 一般的に、死者に対する「世俗的行事」、「宗教的行事」の差異について明示されたい。それを踏まえて、八月十五日武道館における「戦没者追悼式」は右のいずれに該当すると考えられるのかを明らかにされたい。
その内容、形式、規模によつて差異が生じてくるとすれば、その限界を示されたい。
右質問する。