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答弁本文情報

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昭和五十五年十月二十八日受領
答弁第三号
(質問の 三)

  内閣衆質九三第三号
    昭和五十五年十月二十八日
内閣総理大臣 鈴木善幸

         衆議院議長 福田 一 殿

衆議院議員稲葉誠一君提出「靖国神社問題」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員稲葉誠一君提出「靖国神社問題」に関する質問に対する答弁書



一について

1及び2 大日本帝国憲法においては、安寧秩序を妨げず臣民たるの義務に背かない限りにおいて信教の自由を保障していたが、現行憲法は、信教の自由を実質的なものとするため、第二十条第一項前段及び第二項において信教の自由を保障した上、国その他の公の機関が宗教に介入し、又は関与することを排除する見地からいわゆる政教分離の原則に基づく規定として同条第一項後段及び第三項並びに第八十九条の規定を設けたものである。

3及び4 大日本帝国憲法は、「日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務二背カサル限二於テ信教ノ自由ヲ有ス」(第二十八条)と規定し、宗教団体法(昭和十四年法律第七十七号)が宗教団体の地位及びこれに対する保護監督の関係等を規定していた。他方、「国家神道」は、いわゆる神道指令において神社神道と同義に用いられた語であるが、神社は、建国の大義に基づき皇祖皇宗の神霊を始めとし国家に功績のあつた諸神を祭祀するため国家自ら設営するもので、神社は宗教ではないとして取り扱われていた。なお、神社を保護するため、他の宗教に対する弾圧を行つた事例についてはつまびらかでない。

5 昭和二十年十二月十五日の連合国軍最高司令部によるいわゆる神道指令は、信教の自由の保障と政教分離の原則の徹底を図るため、国家等による神道の保証、支援の禁止等を指令したものであつて、今日においては失効している。

6 いわゆる神道指令においては、国家が公式に指定した宗教に対する信仰の強制から日本国民を解放する等のため指令する旨が述べられている。また、憲法第二十条及び第八十九条の規定の解釈に当たつては、同指令に依拠することを要しない。

7 いわゆる神道指令と新日本建設に関する詔書との関連はつまびらかでない。

8 憲法第二十条第三項に規定する「国及びその機関」とは、国及び公共団体並びにそれらの行政機関その他の機関を意味し、天皇も含まれるものである。

二について

1から3まで 靖国神社は、明治十二年に東京招魂社を改称したものであり、東京招魂社は東京九段坂上に戊辰以来の戦死の士を祭るものとして営まれたものである。以来、今次大戦の終戦に至るまでの同神社は、戦没者等を祭神として祭つてきた。戦後、靖国神社は、所要の手続を経て、昭和二十一年、宗教法人となり、今日に至つている。
  なお、靖国神社は、終戦直後、連合国軍最高司令部からその名称を変更するよう求められたようであるが、靖国神社側は、「靖国」は「安国」という意味で最も平和的な言葉であると説明し、名称存続の了解を得たと聞いている。

4 靖国神社への公式参拝とは公務員が公的な資格で参拝することを指し、国家護持とは、国が靖国神社の運営について、参与し、又は国費を支出することを意味することが多いと考えている。また、憲法上、これらの行為が問題となるのは、第二十条及び第八十九条との関係である。

5 靖国神社は、東京都知事所轄の宗教法人となつており、憲法上の宗教団体である。

6 靖国神社の国家護持とは国が靖国神社の運営について、参与し、又は国費を支出することを意味するとすれば、国がそれらの行為を行うためには、靖国神社が宗教性をなくすることが必要であると考える。
  なお、国が宗教団体に介入することができないことは当然である。

7 靖国神社法案については、これまでも自由民主党の国会議員によつて国会に提出されてきたという経緯があるので、今後も、この問題については、自由民主党における議論の推移を見守つてまいりたい。

三について

 全国戦没者追悼式は政府が主催し、天皇皇后両陛下に御臨席をお願いし、全国の戦没者遺族代表その他各界の代表等が参列し、黙とうを行い、追悼の辞を述べ、献花を行うこと等を内容としている。
 また、全国戦没者追悼式は日本武道館で行つているが、これは、同館が、設備、収容能力、周辺の環境等の諸点から判断し、この式典を行うに最適な場所であるからである。
 なお、全国戦没者追悼式は、宗教的儀式を伴わない式典であり、憲法第二十条第三項の宗教的活動には該当しない。

 右答弁する。




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