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昭和五十六年十月十四日提出
質問第三号

 社会保険診療報酬に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十六年十月十四日

提出者  小林進

          衆議院議長 福田 一 殿




社会保険診療報酬に関する質問主意書


 昭和五十六年六月の医療費改定は、物と技術の分離と技術の適正評価を行い、荒廃しつつある我が国医療の正常化を目指すものであると言われている。しかし、全国の病院は、今回の改定はその趣旨に反し、診療報酬が大幅な引下げとなつていることから病院の運営を危機に追い込むものであるとして、適正なる再改定を行うことを要求している。よつて、これに関連して次の事項について質問する。

一 入院室料は四年ぶりに千円から千五十円に引き上げられたが、その間、オイルショックにより電気、水道、ガス等の公共料金の大幅な引上げがあり、今回の引上げはそれを償うにしては余りにも少額である。果たして政府は今回の引上げ額を適正な額と考えているのか。また、今回の医療費改定で室料差額の撤廃を条件としているが、それには室料が適正に支払われることが前提でなければならない。それについて政府はいかなる見解を持つているのか。
  更に、千五十円の室料には地代、建設費の償却、冷暖房費、清掃費、上下水道料、固定資産税等の諸経費が含まれるべきであると考えるが、今回の改定ではこれをどのように見積つているのか、その積算の根拠を示されたい。
  また室料に関しては、建物の新旧、設備の程度、その立地等に格差があつて、一概に積算し難い一面もあるが、薬価、看護料については段階的に格差が設けられている。室料についても地域別、設備別に格差の生じるのは当然で、全国一律に同額というところに無理がある。政府はこれらに一定の基準を設け、その維持、償却、運営に必要な経費を算定して、段階的に適正なる室料を支払うべきである。薬価基準の算定について異常な努力を払つてきた政府が、かかる病院運営についての基本的な課題を放置してきたのは怠慢もはなはだしいと思われるが、政府の見解を示されたい。
二 看護料の引上げは全体を通じて約一〇%である。前回の改定は昭和五十二年度分の改定が遅れて五十三年に実施され、実質四年ぶりの改定であるが、その間の他産業の給与引上げの積上げと比較するとき、この額は余りにも少額に過ぎる。今回の改定をみて全国の病院職員は、本年の年末手当の支給、来年度のベースアップに対して非常な不安を持ち、本年の年末には激しい労使の紛争が予想され、我が国医療に大きな混乱の引き起こされることが憂慮されている。政府は一〇%の引上げが適正であると考えているのか、適正であるとするならその見解を示されたい。
  また、看護料には看護婦の給与、諸手当、並びに法定福利費、宿舎経費、保育所の運営経費、準深夜勤務者の交通費、看護婦の養成並びに充足に要する経費が含まれるべきものと考えるが、今回の改定ではこれをどのように見積つているのか、その積算の根拠を示されたい。
三 診療報酬には受付、保険請求、給与計算その他病院運営に必要な事務費が算定されるべきである。殊に診療報酬請求事務については、重症患者若しくは大手術を行つた患者の診療報酬請求事務には、一枚の診療報酬明細書の作成に熟練した職員をもつてしても数時間を必要とし、仮にコンピューターを導入したとしてもその維持管理に大きな経費が必要である。政府はかかる事務経費をどのように算定して診療報酬の中に組み入れているのか、事務経費積算の有無並びにその積算の根拠を示されたい。
四 今回改定された銘柄別薬価基準価格は、開発業者である大手製薬メーカーと後発業者である製薬メーカーとの同種の製品の間に著しい格差をつけている。これによつて中小製薬メーカーは大手製薬メーカーとの競争力を奪われて脱落のほかなく、今や医薬品製造業界では大手メーカーによる市場独占と独占価格による高価安定が進行しようとしている。これは明らかに独占禁止法に違反する行為である。
  更に、これによつて医療機関は甚大なる打撃を受け、いわゆる仕入れ上手によつて経営の安定を図らんとしても、その努力が全く不可能となりつつある。まさに今回の改定は、中小製薬メーカーと医療機関の犠牲において、大手製薬メーカーの利潤を保障するものである。
  また、政府は今回の改定により、国民医療費に占める薬品費の節減を期待しているが、自由なる競争の下にこそ販売価格の低下があり、その実勢価格の上に立つて薬価基準を引き下げてこそ、一層、薬品費の節減が図りうる筈である。競争なき独占市場の中で高価安定を招来せしめ、保険経済によつて大手製薬メーカーのみに高利潤を提供することは保険財政の浪費であり、国民福祉に反するものである。
  従つて、入院料、医療従事者の技術料を適正に評価すると共に、薬価基準を自由なる競争の下に反映した実勢価格に沿つて引き下げ、保険経済を安定せしめることこそ保険医療行政の進むべきみちである。
  国民皆保険、老人医療制度の進歩と共に、我が国民の平均寿命は著しく伸びて、欧米先進諸国をしのごうとしている。今回の医療費改定は病院の運営を著しく困難なものとしつつある。これによつて病院の新増設ははばまれ、また、既設病院も運営が困難となつて廃止の止むなきに至るものも続出する恐れがある。いまだに全国にはベット不足地域が至る処にあるが、こうして入院はますます狭き門となつて国民医療の向上を大きく阻害するものと思われる。
  政府は、かかる政府自らの手による独禁法に違反する行為を改め、直ちに銘柄別薬価基準を廃止すべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。

 右質問する。





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