質問本文情報
昭和五十七年八月二十一日提出質問第三〇号
新日鉄八幡における労働基準法違反の是正に関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
昭和五十七年八月二十一日
提出者 小沢和秋
衆議院議長 福田 一 殿
新日鉄八幡における労働基準法違反の是正に関する質問主意書
新日本製鉄八幡製鉄所の労働者百五名が昨年十二月十九日、八幡労働基準監督署長に対し労基法違反是正の申告を行つた。
その内容は要旨として、「同製鉄所の中心となつている製銑、製鋼、圧延などの三交替職場では、作業を一瞬も中断せず交替を行うため、交替時刻の前後に一定の引継時間がどうしても必要になる。これは当然、本来業務の一部であり、早出又は残業として賃金が支払われるべきであるにもかかわらず、ただ働きとなつている。これは労基法第三十七条、第二十四条違反であり、是正を指導されたい」というものである。この問題について以下のとおり質問する。
二 当局は近く結論を出すと約束しているが、度重なる申告人らの要請を無視し、いまだに実態調査を行つていない。本件では、事実の確認こそ労基法違反の判断にとつて決定的な意味を持つと思われるが、何故実態調査をしないのか。調査ぬきで正しい判断を下し得ると当局が考える根拠は何か。
三 同製鉄所のほとんどの三交替職場では、始業時刻前に申送りを受け、必要な工具などを揃え、当日の作業について打合せを済ませている。そして終業時刻後、工具の片付け、日誌の記入、資料の整理などを行つている。
これらはいずれも作業に不可欠な引継ぎとして、同社就業規則三十三条で義務付けられている。これが本来業務の一部であり、これに従事した時間が労働時間であることは、明らかではないか。
四 申告人らの調査によれば、この事前準備、事後整理に要する時間は、薄板部第二ストリップ工場第二冷延掛でA工長の場合、作業が順調な時で合計七十〜八十分、小さな事故が発生した時などで九十〜百分に達している。最も短い労働者の場合でも、十五〜二十分となつている。
新日鉄では、交替勤務者の実働定時間は七時間十五分であるから、A工長の場合、常に法定の八時問を超過している。時間外労働として割増賃金を含む賃金を支払うのが当然ではないか。
五 七時間十五分を超え、八時間までの時間についても、就業規則及び社員賃金規則には、所定の労働時間を超えて労働させた時には時間外労働として扱うこと、過勤務手当を含む賃金を支給することが規定されており、これが昭和二十三年十一月四日、基発一五九二号通達にいう「別に定められた賃金額」に当たる。従つて、引継ぎに参加する全労働者に対し、その時間に応じて過勤務手当を含む賃金が支払われるべきでないか。
六 一部に交替勤務手当が「別に定められた賃金」に当たるものとして労使間で合意されているとの説があるが、そのような協定などが存在するのか。あるとすれば、それはいつ、いかなる形で結ばれ、どのように公表されているか。申告人らの調査では、そのような文書は存在しない。また、会社の交替勤務手当の趣旨に関する説明にも、それにふれた文言はない。結局、引継ぎのための時間外労働に適用される規定は、前項に指摘したもの以外、存在しないのではないか。
七 申告人らは、労基法第百十五条に基づき、以上の引継ぎ時間の労働に対する過去二年間の未払い賃金を遡及して支払うよう請求している。当局も、この請求を認め、会社に対し、速やかに支払うよう指導すべきでないか。
八 引継ぎ時間をただ働きさせるやり方は、八幡だけでなく、新日鉄の全国の職場を通じて共通しており、すでに多くのところで所轄労基署長に対する申告がなされている。新日鉄以外の鉄鋼大手各社もほぼ同じ実態に置かれている。
政府としては、申告の有無にかかわらず、これらの職場全部について行政指導を行うべきでないか。
右質問する。