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昭和五十七年十二月二十一日提出
質問第三号

 苫田ダム建設計画に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十七年十二月二十一日

提出者  瀬崎博義

          衆議院議長 福田 一 殿




苫田ダム建設計画に関する質問主意書


 岡山県苫田郡奥津町に建設省が計画している苫田ダム建設問題について質問する。

一 苫田ダム建設計画をめぐる地元住民との合意について
 1 苫田ダムは、当初(昭和三十二年十一月十八日)県主管の農業ダムとして構想され、えん堤の高さ四十二メートル、貯水量三千万トン、水没戸数三百五十〜四百戸程度と公表されていたのではないか。
 2 苫田村(当時)では、この四日後に村民大会を開いて「絶対阻止」を決議し、苫田ダム阻止期成同盟会が結成された。
   翌十二月には、同期成同盟会が岡山県議会に陳情、同議会は「苫田ダムに関する限り、地元の了解なくして実施しない」と全会一致で議決した。こうした歴史的経緯を建設省は承知しているか。
 3 昭和三十四年六月二十九日には、合併して二カ月後の奥津町議会で町是「苫田ダム建設阻止」を決議するとともに、「苫田ダム阻止特別委員会条例」を制定した。
  (1) 建設省はこのことを歴史的事実として承知しているか。
  (2) この条例は、昭和三十八年六月二十八日に改正し、条例第十七号として今日まで存在している。
      同委員会の設置の目的は、「奥津町大字久田下原地区に苫田ダム建設の構想に対し、これが実現を阻止する」ことにあり、同委員会は今日も条例の定めるところにより存在し、正常な機能を果たしているのではないか。
  (3) また、これまで、奥津町の議会と関係機関が苫田ダムの建設を承認したことは、ただの一回もないし、そういう記録もない。
      建設省は、奥津町議会がこうした異例とも言える条例を制定した理由や意義をどう考えているか。
 4 ところが、こうした現地のダム建設反対の動きに逆行して、昭和三十八年に特定多目的ダムとして、えん堤の高さ七十メートル、貯水量八千五百万トン、水没戸数四百〜七百戸という、建設省の巨大ダム建設構想が報道を通して公表された。なお、中国地方建設局は、報道と全く同じ計画を昭和四十七年に発表している。
   地元住民や自治体が反対の意向を公式に明らかにしてきているときに、建設省がそれに逆行して、岡山県案よりさらに大規模なダム計画案を発表したのはなぜか。
 5 その後、建設予定地奥津町では、ダム建設に対する基本的合意を得られないまま推移し、昭和四十二年四月十七日、建設省と奥津町との間で「吉井川総合開発事業苫田ダム調査協定書」が締結された。
  (1) この協定書は、奥津町と建設省との間に結ばれた公式文書ではないのか。
  (2) そのうえに立つて聞くが、同協定書には、「第二条 甲は、将来建設に関する実施調査の必要があるときは、乙と事前に十分協議のうえ、乙の承諾なくしては当該調査を実施しないものとする。(注)第二条の乙の承諾とは、町民の総意がダム建設賛成の方向に向かい、少なくとも旧苫田村地区在住の町議会議員全員の賛成を含む奥津町議会の賛成決議を背景とすることを意味する。」とうたわれている。
      協定の当事者建設省が、協定にある「乙の承諾」を得て行つた調査とはどの段階の調査だつたのか。
  (3) 今後、さらに発展した次元の調査を行うつもりはあるのか。その場合、「乙の承諾」はどの段階でどういう形でとるつもりなのか。
 6 ダム建設計画案が発表された昭和三十年代初期から今日まで、奥津町長は、岸川忠雄氏(苫田村長)、日笠善一氏、伊丹哲男氏、岸川忠雄氏、現岡田幹夫氏と代わつてきたが、すべての町(村)長が、ダムの建設に対し明確に反対を公約として掲げてきたのである。
  (1) 建設省は、右の経緯を確認していたか。
  (2) 建設省は、歴代町長及び議会が今日まで、反対の意思を変えないことの背景、重要性をどのように認識しているのか。
 7 いま、現地奥津町内では、賛成派の田畑に測量用のポールが立てられたことから、反対派は止むなくダム建設絶対阻止等の立看板を立て、それぞれの意思をだれの目にも分かるような形で具体的に表示しているのである。
   こうして、隣近所の間に、親せき、友人の間にさらに広く住民間に極めてトゲトゲしい異常な対立が生まれていることに関し、建設省は国の行政機関として、今日の奥津町のこの現状をどのように考えているのか。
 8 岡山県は、「移転先選定資金」という名目の貸付金を一世帯当たり百万円貸し付けているが、その基準が明確でないため、本来一世帯であるべきものが、親子、兄弟等何世帯にも分離していく傾向が顕著である。中には、津山市や大阪市、遠くは海外在住者までが一世帯として貸付金の交付を受けている事実さえあると言われる。
  (1) 建設省は、こういう事実を確認しているか。
  (2) 建設省主管のダムであるならば、ダム建設促進にかかわる資金は、国庫補助金の中から使われていると考えるのが常識である。「移転先選定資金」とは、どういう名目の国庫補助金から支払われているのか。
  (3) こうして、員数合わせ的に「移転先選定資金」貸付けを手段として「獲得」した賛成派の世帯は、県の公表で六割だと言う。しかし、その実態たるや疑わしいのである。
      そこで聞くが、昭和五十三年十二月、「移転先選定資金」を貸し付けるとした以前と以後とでは、奥津町の人口は増えたのか、減つたのか。また、同時期の世帯数は増えたのか、減つたのか。数字を挙げて答えて頂きたい。
  (4) なお、六割と言われる賛成派世帯のダム建設に伴う水没予定地内の土地の所有面積は二割程度でしかなく、残りの八割は反対派住民が所有しているのである。
      この八割の地権者は、現在もダム建設に反対しているのは当然であるが、仮に工事着手の段階に突入したとしても、同土地の所有者から同意は得られないものと判断できる。
      このような場合でも、建設省は、地権者の意思を無視して工事着手を強行するつもりか。そうでないとしたら、どう合意を得ていくつもりなのか。その考えを明らかにされたい。
二 岡山県の水利用の現状と苫田ダム建設計画について
 1 建設省の苫田ダム建設計画(案)によれば、その目的の一つに「都市用水の確保」を掲げ、「あらたに日量四十二万立方メートル確保」するとあるが、その根拠の一つとされている岡山県水利用基本計画によれば、吉井川にかかる工業用水の場合、流域の昭和六十年の工業出荷額は、岡山県全体の伸び予測の二倍以上に当たる四・三九倍(四十八年比)を想定し、使用水量もこの工業出荷額の伸び予測に立つて計算している。
  (1) この点について聞くが、昭和五十四年度の工業出荷額の実績は、昭和六十年度の予測の半分にも満たない二・〇九倍にしか到達していない。建設省は、この事実を承知していたか。
  (2) また、工業用水の使用実績についてみると、昭和五十四年実績は、十三万六千九百八十六トン/日で、昭和四十八年実績と大差なく、昭和六十年予測需要二十四万五千トン/日の半分に過ぎないという結果が出ている。
      さらに、農業用水、生活用水についても、実績は新規利水を必要としないとの調査結果も出されている。
      建設省は、こうした状況を把握していたか。そのうえで、苫田ダムの利水計画を立てたのか。
 2 先に述べたとおり、苫田ダム建設計画は、当初案より「三十八年案」は大規模になり、以後十九年経過するも、ダム計画にほとんど変更が加えられていない。
   水需要実績が予測を大幅に下回つていることなど、日本経済の成長率に変化が生まれ、そこから今後の吉井川水系の実態にも大きな変化が生まれてくる可能性が十分にある。その意味で、苫田ダム計画は、しやにむに決定された計画の線で推進するというのでなく、今後の事態の推移を十分見守りつつ、慎重に検討を重ねていくことが必要なのではないか。
   この点について、建設省の考えを聞いておきたい。
三 吉井川水系の治水対策と苫田ダム建設計画について
  建設省の計画では、苫田ダムの治水計画について「ダム地点の計画高水量毎秒二千七百立方メートルのうち毎秒二千百五十立方メートルを洪水調節し、下流の水害を防除」するものとされている。ところで、吉井川水系では、下流即ち、佐伯町に佐伯ダム建設計画が提起されたことがある。
 1 この事実を建設省は承知しているのか。
 2 しかし、この計画は、町及び住民の強い反対にあつて坐折した経緯があるのではないか。
 3 同ダムについては、主に、たい砂が多く、治水上効果が少ないこと、バックウォーターによる上流部の水害の危険などが予測されたため、建設を断念したとされているが、それは事実だつたのか。
 4 もしも2項の住民の反対及び3項での治水上効果が少ない等の理由以外の事情によつて中止されたものであるならば、その理由を明らかにされたい。
 5 佐伯ダムについては、住民の反対があつて計画を断念した歴史的事実があり、苫田ダムに限つてだけ、住民の反対意見を聞かないなどということが通用するであろうか。この点明確に答えられたい。
 6 また、苫田ダムは、佐伯ダムの上流に位置することから、当然のこととして、佐伯ダムよりははるかに狭い範囲についての治水効果しかないうえに、佐伯ダム以上に大量のたい砂が予想され、ダムの上・下流に新たな水害を生む危険性すらあることが指摘されている。佐伯ダムは治水効果が少ないことが有力な理由となつて建設を断念したのに、より治水効果の少ない苫田ダム建設について住民の理解が得られるだろうか。
四 奥津町の町財政圧迫の問題について
 1 奥津町が、電源立地促進対策交付金に基づく町医療センターの建設に対し、岡山県当局は、一度認可をしておきながら、同センターの入札の前日になつて「認可をしていない」と入札にストップをかけ、入札は行われなかつた。
   ほかにも類似の事例として、同町非水没地域の事業で、公共育成牧場整備事業、大釣園休憩所建設、第三期山村地域農林漁業対策事業(ほ場整備と水路改良)、間伐促進対策事業など、国、県補助対象事業のほぼ全般にわたつて、執行できない事態がつくり出されている。
   こうした事実について、建設省始め、政府関係省庁は承知していたのか。明らかにされたい。
 2 このうえに立つて聞くが、政府関係各省庁は、なぜ奥津町に限つてそういう事態が発生していると考えるのか。政府の考えを明らかにされたい。
 3 政府関係省庁に聞く。
   こうした事態は、ダムの建設と全く関係がないのか。もし、関係がないというなら、奥津町では、通常の行政が執行されていなければならないはずである。
   政府において、今後いつさいこうした事態を起こさないと約束できるか。
 以上、各項目ごとに明快に答えられたい。

 右質問する。





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