衆議院

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昭和五十八年三月十一日提出
質問第一三号

 外国人の公立小・中・高等学校教員任用に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十八年三月十一日

提出者  斎藤 実

          衆議院議長 福田 一 殿




外国人の公立小・中・高等学校教員任用に関する質問主意書


 現在、公立の小・中・高等学校(以下「公立学校」という。)の教員に採用されるためには、都道府県及び指定都市の教育委員会の教育長が毎年実施する選考試験を受けなければならないことになつている。この選考試験の受験には、学校教育法第九条に定められた教員の欠格事由に該当しないこと及び教育職員免許法に定められた所定の免許状を有することが、当然要求される。
 ところで、現行法では、日本国籍を有しないということは、教員の欠格事由や教員免許状を授与されない事由とはされていない。従つて、法律上は外国人もこの選考試験を受験できることになつている。
 しかるに、現在、三十の道府県では、選考試験要領に「日本国籍を有する者」という国籍要件を明記して、外国人に受験資格を認めていない。
 このように、多数の道府県が外国人に教員選考試験の受験を認めないのは、公務員の身分を有する公立学校の教育に外国人を任用することは望ましくない、という政府見解に基づいて、文部省の行政指導が行われているからである。この政府見解は、「……一般にわが国籍の保有が、わが国の公務員の就任に必要とされる能力要件である旨の明文の規定が存在するわけではないが、公務員に関する当然の法理として、公権力の行使又は、国家意思の形成への参画にたずさわる公務員となるためには日本国籍を必要とするものと解すべきであり、他方においてそれ以外の公務員となるためには日本国籍を必要としないものと解せられる。」という内閣法制局の意見をその根拠としている。そして、政府は、国、公立大学においても講師以上の教員の職に外国人を任用することは、この公務員に関する当然の法理に抵触する、という見解をとつていたのである。
 ところが、昭和五十七年九月一日に公布、施行された「国立又は公立の大学における外国人教員の任用等に関する特別措置法」によつて、外国人を国、公立大学の教授・助教授・講師に任用することができることになつた。同法の施行に伴つて、同じ教育公務員の身分を有する高等学校以下の国・公立学校の教員に、公務員に関する当然の法理をそのまま適用することについても、改めて検討してみるべき時期が到来したといえる。
 しかるに、文部省は同法施行に当たつて、「国立又は公立の小学校、中学校、高等学校の教諭等については、従来どおり外国人を任用することは認められない」という趣旨の文部次官通知を都道府県、指定都市教育委員会の教育長あてに出し、高等学校以下の公立学校における外国人教員任用に関して、従来の取り扱いを改める考えのないことを明らかにしている。
 外国人に公立学校の教員の選考試験の受験資格を認めないという取り扱いの合法性に関しては、従来から一部の法律家や教育関係者から強い批判や多くの疑問が出されている。
 そこで、一部の都府県では外国人にも選考試験の受験を認めている。その結果、東京都、大阪府、三重県、大阪市では、既に外国人が教員に任用されており、教員として在職している外国人の数は、昭和五十六年度末現在で小学校十二、中学校八、高等学校七、養護学校一、合計二十八名とされている。
 また、一部の県ではこれまでの取り扱いを改めて、外国人にも選考試験の受験を認めようとする動きも出ていたのである。
 このような実態があるにもかかわらず、文部省が、公立学校の教員に外国人を任用することは認められないという考えを公文書で改めて明らかにしたことは、都道府県や指定都市の教育委員会の教員人事行政の実務に及ぼす影響及び教員として既に在職し、又は教員を志願しようとする外国人に与える不安や動揺という点で、看過することは断じてできないといわなければならない。のみならず、公務員に関する当然の法理として外国人を公立学校の教員に任用することはできないという政府の見解自体にも、強い疑問を感ぜざるを得ない。
 よつて、次の事項について、政府の見解を求めるものである。

一 外国人の地方公務員任用に関する従来の政府見解との関連について
  政府は、「公権力の行使又は公の意思の形成への参画にたずさわる地方公務員であるかどうかについては、一律にその範囲を画定することは困難である。いわゆる管理職であるかどうかを問わず、地方公務員の任用にかかる職の職務内容を検討して、当該地方公共団体において具体的に判断されるべきものと考える。」(昭和五十四年四月十三日付、質問第一三号答弁書)と述べている。この政府の見解によれば、地方公務員の身分を有する公立学校の教員が公権力の行使又は公の意思形成への参画に携わる職に該当するかどうかの判断は、当然教員の任命権者である都道府県及び指定都市の教育委員会に委ねられることになる。
  従つて、文部省が全国一律に外国人の公立学校教員の任用を厳しく規制する行政指導を行うことは、前掲答弁書に示された政府見解と矛盾することになると思うが、この点について政府の考えはどうか。もし、前述の政府見解は公立学校の教員には適用されないというのであれば、その理由を明らかにされたい。
  また、地方自治を尊重し、教育の地方分権を基調としている現行法制の下では、外国人の公立学校教員任用に関する文部省の行政指導は教員の任命権者である教育委員会を法的に拘束するものではないと解するが、この点について政府の見解を明らかにされたい。
  なお、「公権力の行使または地方公共団体の意思の形成への参画にたずさわることが将来予想される職員(一般事務員、一般技術職員等)の採用試験において、日本の国籍を有しない者にも一般的に受験資格を認めることの適否はどうか」という照会に対して、「適当でない」と回答した行政事例があるが、この回答は、公立学校の教員を直接その対象としたものではないと解するが、この点について政府の考えはどうか。
  公立学校の教員に採用されれば、将来学校において校長その他の指導的地位に就くことが予想されるとしても、公立学校の教員がこの回答にいう職員に該当するといえるかどうかの判断も、前掲の答弁書に示された政府見解によれば、教員を任命する教育委員会の判断に委ねられていると解するが、この点について政府の考えはどうか。
二 公立学校の教員の職務内容と公の意思形成への参画との関連について
  昭和五十七年四月二十日の衆議院法務委員会において、文部省の初等中等教育局地方課長は、「公立学校の教諭は学校の校務の運営に参画することをその職務の内容としているので、公の意思形成への参画にたずさわる公務員に該当することになる」という趣旨の答弁を行つている。しかし、公立学校の教員の学校の校務運営の面における地位や権限と、国、公立大学の管理・運営の面における大学教員の地位や権限との間には著しい違いがあることは、教育公務員特例法の規定からも明らかである。
  従つて、公立学校教員が国、公立大学の教員と同じ意味で公の意思の形成へ参画しているとみることは困難であると思うが、この点について政府の見解を明らかにされたい。
  文部省は、学校で行われる校務の運営の権限と責任は校長にあり、校長は、校務の運営に関して所属教員の意見や判断を求める場合でも、その意見や判断に拘束されることはなく、また、所属教員に校務を分掌させることができるが、教員は分掌を命じられた校務を校長の指揮監督の下に行う、という見解をとつてきている。校務の運営に参画することが教員の職務であることを強調することは、このような文部省の見解と矛盾する結果になると思うが、この点について政府の考えはどうか。
三 外国人教員の任用が公立学校の管理や教育に及ぼす影響について
  政府は、公務員に関する当然の法理として外国人の公務員就任能力は制約されるとしているが、本来は、公権力の行使や国家意思の形成に直接的に関与する行政機関等の職員に適用されるこの法理を、公務員であるという理由で教育機関である国、公立学校の教員に適用すること自体が、非権力性という教育活動の本質的特質を無視するという点で根本的な無理があるといわなければならない。このことは、公立学校の教員がなぜ公の意思の形成への参画に携わることになるかに関して、政府による説得性のある説明がなされていないことからも明らかであろう。
  法の下の平等と個人の職業選択の自由を保障している憲法の下では、外国人が公的地位に就くのを制限するのが許されるのは合理的理由が存在する場合に限られる、という見解が最近ではかなり有力になつている。外国人が公立学校の教員になることは適当でないとしてその任用を制限する以上は、政府にはその制限に合理的理由があることを具体的に明示する責任があるといわなければならない。
  そこで、外国人を公立学校の教員に任用することには公立学校の管理運営や教育活動の面でどのような支障があるかに関して、政府の見解を明示されたい。

 右質問する。



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