質問本文情報
昭和五十八年四月一日提出質問第一七号
在日米軍基地の日本人従業員に対する武器携帯強行措置に関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
昭和五十八年四月一日
提出者 ※(注)長亀次郎
衆議院議長 福田 一 殿
在日米軍基地の日本人従業員に対する武器携帯強行措置に関する質問主意書
全国各地の在日米軍基地で、日本人従業員が銃を持たされて基地の警備に当たつていることが、本年三月二十五日の参議院沖縄及び北方問題特別委員会で、日本共産党の立木洋参議院議員の追及によつて明らかにされた。
嘉手納基地では、日本人警備員に対して拳銃携帯を強要し実施させていた。
しかも拳銃携帯が、「射撃不適格者」の解雇、配置転換と結びつけて強制されていることは、重大である。
今回のこの措置は、レーガン政権の限定核戦略に基づく基地強化の一環として行われたものであり、米軍当局が「基地への破壊防止」と言つているように、沖縄県民を始めとする日本人に対して、銃口を向けるものであることは明白であり、断じて容認できない。
日本人従業員を始め全駐留軍労働組合は、「安全対策上問題であり事件、事故に巻き込まれかねない」として、米軍当局に撤回を強く要求している。
日本国民の生命と安全にかかわる重要な問題に関し、次の諸点について政府の見解をただしたい。
これは、日本人に銃口を向けるものであるという点で、一層重大である。
1 政府は、直ちに米側に対し撤回を求めるべきと考えるが、どうか。
2 日本人従業員に武器を携帯させてまで、基地を防衛、警備しなければならない事態があるのか。
あるとすれば、それは何か。
3 外務省は、「米軍の政策によつてもたせている」と述べているが、政策だからといつて日本人従業員に武器を持たせてもいいと言うのか。
嘉手納基地で新たに拳銃を所持させた理由は何か。米軍の政策の変更があつたというのか。
二 昭和二十七年十二月十七日、衆議院外務委員会で当時の林法制局次長は、米軍が、日本人従業員に武器を携帯させることについて、行政協定第三条において認められていると考える、という趣旨の答弁をしている。
また外務省は、最近の委員会で、「地位協定第三条第一項第一号で認められる」との答えを行つている。
これは極めて問題である。
1 日本人従業員に武器を携帯させ、基地の防衛、警備に当たらせることは、米軍隊の行動そのものの性格を持つものである。
林法制局次長らの答弁は、日本人をして基地を防衛、警備させるなど、米軍隊の行動、任務の一端を肩代わりさせることができるということになるのではないか。
これを認めるということは、日本人従業員を米軍隊の事実上の「傭兵」として使用することもできるということにならざるを得ない。
地位協定第三条はそのようなことまで許しているということか、政府の明確な見解を求める。
2 このようなことが許されるとするならば、日本人従業員が、米軍隊の行動の一環として武器を携帯し、基地を防衛、警備することは、必ずしも基地内に限定されないのではないのか。
米軍が、必要と判断したら日本側との協議によつて、場合によつては基地外にも及ぶということがあり得るのかどうか、明確に答弁されたい。
三 日本人従業員に武器を携帯させ、警備させている基地は、三沢(青森県)、横須賀、厚木(神奈川県)、富士(静岡県)、岩国(山口県)、嘉手納、瑞慶覧(沖縄県)の七ヵ所であることが分かつた。
1 武器を携帯し警備に当たつている基地は、これだけか。また、携帯人数、携帯武器の種類、いつから携帯しているのかなど、その全容を明らかにされたい。
2 外務省は、武器の携帯について昭和二十七年十二月三十日の第三十四回日米合同委員会で、取り決めたと述べている。
その合意事項と内容を明らかにされたい。
3 昭和三十二年の基本労務契約の別添にある「職務定義書」によると、散弾銃、カービン銃をも携帯させ、「必要最小限度是正措置」をとるとなつているが、そのとおりか。
また、日米間の協議と合意によつては、これ以外の武器を持たせることができるということか。
四 基地内において、日本人従業員が公務中、米軍の命令、規則に基づき日本人に対して、武器を使用する事故、事件が発生することも現実に予想される。
日本人従業員が、「不測の事態もありうる」として不安と危惧を抱いているのは当然のことである。
1 米軍の命令、規則に基づき日本人従業員がとつた行動については、日本の法令が適用されるのか。
また、行動の結果、事件、事故が発生し、しかも日本人従業員のとつた行動が日本の法令に違反する場合は、どうなるのか、説明されたい。
2 日本人従業員の行動は、それが不法行為であつても米軍の命令、規則に基づくものであり、公務中であるとの理由から違法性は阻却されるということなのか。
3 被害者の補償問題も生じ得るが、補償責任は米側がとるのか。
この補償については、地位協定第十八条に基づくとしているが、詳しく説明されたい。
4 政府は、ことあるごとに日本人従業員の「法律上の雇用主」であることを強調してきた。
だとするならば、雇用主である政府は、日本人従業員に武器を携帯させ、米軍隊の行動の一端を担うがごとき任務に就かせることを、安全対策上の見地からも断固拒否すべき責任があると考えるが、どうか。
事件、事故が発生した場合、雇用主としての責任をどうとるのか。
五 日本人従業員に対しては、基地内で、しかも米軍の行動の一環として行う公務中の任務であつても、日本の法令が適用されるとすれば、武器の携帯そのものが、「銃砲刀剣類所持等取締法」(以下「銃刀法」という。)第三条の規定によつて禁止されていると考える。
「銃刀法」には、「法令に基づき職務のため所持する場合」には許されるとしているが、この法律の規定にある「法令」には地位協定などの条約は含まれないと解するが、どうか。
もし含まれるとするならば、その解釈と理由を明確に答弁されたい。
六 日本人従業員に武器を携帯させて、日本人を直接の対象とした米軍当局の基地の防衛、警備措置には、断固反対する。
このことについて、基地に働く日本人従業員も強く反対していることは先に指摘したとおりである。
また、全駐留軍労働組合は、解雇、配置転換と結びつけて押しつけられていることに厳しく抗議している。
在日米軍基地に関する事件、事故が多発している中で、この措置は事態を一層深刻化させるものである。
政府は、日本人従業員はもとより、沖縄県民を始め日本国民の生命と安全のために、この米軍当局の武器携帯の強制的措置を撤回させるべきである。
重ねて政府の見解を求める。
右質問する。