衆議院

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昭和五十八年七月二十三日提出
質問第一〇号

 我が国の人権状況と「世界人権宣言三十五周年記念行事」等に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十八年七月二十三日

提出者  中路雅弘

          衆議院議長 福田 一 殿




我が国の人権状況と「世界人権宣言三十五周年記念行事」等に関する質問主意書


 周知のように今年は、世界人権宣言が採択(一九四八年)されてから三十五周年にあたる。国連は、この年を「国際理解、協力及び平和並びに人権の全世界的かつ効果的な尊重を促進するために特別な努力を払う機会」とするため、各国政府、非政府機関に対し、「世界人権宣言三十五周年記念行事」を取り組むようよびかけている。
 だが、日本政府は、このよびかけに対して、極めて消極的な姿勢をとつているばかりか、日本国憲法の平和的民主的諸原則はもとより、国際社会における人権の擁護・拡充の方向にも反する事態が広範に現出するという由々しい人権状況を温存しようとさえしている。
 そこで以下、我が国の人権状況と、国連がよびかけた「世界人権宣言三十五周年記念行事」への取り組み等についてたずねる。

一 国際人権規約に基づく日本政府の報告書等の公表について
 世界人権宣言を法的拘束力をもつ条約に発展させた、いわゆる人権規約(一九六六年の国連第二十一回総会で採択)は、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(A規約)、「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(B規約)及び、B規約に定められた権利侵害にたいして個人が国際機関に提訴することを認める「選択議定書」の各文書からなり、日本政府は、一九八一年、国の内外からの民主的世論が高まるもとで、A及びBの両規約に加入する手続きをとつた。
 B規約は、その第四十条第一項で、各締約国に対し、「(a)当該締約国についてこの規約が効力を生ずる時から一年以内に、(b)その後は委員会が要請する時に、この規約において認められる権利の実現のためにとつた措置及びこれらの権利の享受についてもたらされた進歩に関する報告を提出する」ことを義務付けている。日本政府は、この規定に基づいて、国連人権委員会に対し、「日本政府の報告書」を提出し、同委員会の審議・検討をうけた。
 だが、提出された「報告書」は、「規約に規定されている権利は、ほとんどすべて日本国憲法によつて保障されている」とするなど、全体として、日本社会に広く存在する人権侵害の実態を隠ぺいするものとなつている。そればかりか、政府は、この「報告書」と人権委員会の審議・検討の内容を国民に一切明らかにしようとしていない。
 1 国連人権委員会に、人権規約(B規約)第四十条第一項の規定に基づいて提出した「報告書」はどのレベルで決定された文書か ―― 事務次官会議なり閣議なりで決定された文書か、それとも、外務省限りの文書かを明らかにされたい。
 2 人権規約で明示された権利の実現のための施策を総合調整し、かつ一元的に所管する部局は定められているか。定められているとすれば、それはどこか。
 3 国連人権委員会に提出した前記「日本政府の報告書」と、同委員会における審議・検討の内容を、政府の責任で広く国民に公表すべきではないか。
二 人権規約加入に際しての保留の解除、婦人差別撤廃条約の早期批准等について
 1 前記のとおり、日本政府は、一九八一年、国際人権規約のうち、A及びBの両規約に加入する手続きをとつたが、その際、「公の休日についての報酬」保障(A規約第七条(d))、「同盟罷業をする権利」(A規約第八条第一項(d))及び「中高等教育の無償化の漸進的実現」(A規約第十三条第二項)について保留するとともに、「選択議定書」への加入手続きをとらなかつた。
   政府は、これら保留条項を速やかに解除し、「選択議定書」への加入手続きをとつて、国際人権規約が定める権利を国民の権利として保障すべきではないか。
 2 国際人権規約は、各締約国に対し、「この規約に定めるすべての経済的、社会的及び文化的権利の享有について男女に同等の権利を確保すること」(A規約第三条)、「この規約に定めるすべての市民的及び政治的権利の享有について男女に同等の権利を確保すること」(B規約第三条)及び働く婦人の母性保護(A規約第十条第二項)などを義務付けている。
   だが、現実には、婦人に対する不当な差別は、雇用や賃金、昇進などにおいて普遍的にみられるだけでなく、教育の機会や社会生活のさまざまな分野に広範に存在している。
   政府は、母性保護を切り捨てる労働基準法改悪の企てを即時中止するとともにその拡充に努め、十分な母性保護に立脚して男女平等を保障する雇用平等法の制定や国籍法の改正など婦人差別撤廃の国内法整備を速やかに行い、婦人差別撤廃条約を早急に批准すべきではないか。
三 「世界人権宣言三十五周年記念行事」への取り組み等について
  国連は、前記のとおり、各国政府及び非政府機関に対し、「世界人権宣言三十五周年記念行事」を取り組むようよびかけている。
  これに呼応して、憲法改悪阻止各界連絡会議を始め、自由法曹団、職場の自由と民主主義を守る中央連絡会議、新日本婦人の会、全国商工団体連合会、全国生活と健康を守る会連合会、全国部落解放運動連合会、統一戦線促進労働組合懇談会、日本国民救援会、日本婦人団体連合会の十団体は、「世界人権宣言三十五周年記念行事実行委員会」をつくり、九月に討論集会、十二月十日に記念集会を開催し、これと並行して、我が国の人権状況を「人権白書」(仮称)にまとめるなどの多様な運動をすすめることとしている。
  政府としても、
 1 国連のよびかけにこたえ、世界人権宣言とその後の人権理念の発展経過を広く国民に明らかにする記念行事を、国民各界、各層と協力して展開すべきではないか。
 2 国民各界、各層の協力のもとに、日本社会に広く存在する人権侵害の実態を調査・検討し、「人権白書」(仮称)にまとめて公表すべきではないか。

 右質問する。



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