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昭和五十八年十月二十七日提出
質問第一〇号

 農家養鶏の経営安定に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十八年十月二十七日

提出者  寺前 巖

          衆議院議長 福田 一 殿




農家養鶏の経営安定に関する質問主意書


 現在、養鶏農家の経営は、二年続きの低卵価に飼料価格の値上りも加わつて重大な困難に直面している。
 低卵価の大きな原因は、商社、飼料メーカーなどに支援された一部の大規模養鶏業者が、政府の行政指導に基づく生産調整のルールを無視してヤミ増羽を各地ですすめ、鶏卵の供給過剰を生み出してきたところにある。とりわけ、この夏、全国養鶏経営者会議などの調査によつて明らかにされた北東北におけるヤミ増羽は、その規模においてもやり方の悪質さにおいても際立つており、卵価回復を期待しながら生産調整にまじめに協力してきた養鶏農家の大きな怒りを買うこととなつた。
 こうした事態を放置するなら、我が国養鶏は、農外資本と結び付いた大規模経営によつて支配され農家養鶏は崩壊せざるを得ない。
 本来、養鶏は家族労働を主体とする農民経営及びその協業体が中心となつて担われるべきである。これは、昭和五十三年六月に衆議院農林水産委員会が「養鶏を農業の一部門として位置づけ、農民が生産意欲をもつて取り組める基本的養鶏政策を確立すること」と決議していることにも示されているところである。そのことは、現に養鶏で生計を立てている農家の生存権を守ることとあわせて、我が国畜産経営の土地と結び付いた発展、農村地域の経済の振興、消費者に対する安全で栄養価の高い鶏卵の供給などという点でも重要と考えるからである。
 それだけに、大規模養鶏業者のヤミ増羽に対して実効ある規制措置を講ずることは、農外資本の養鶏分野への進出を規制し、農家養鶏の経営安定を図るために、今日、政治に課せられた緊急かつ重要な課題であると考える。
 以上の見地に立つて、現在焦点となつている北東北の大規模ヤミ増羽問題、その誘因と指摘されている八戸飼料コンビナートの問題及び農家経営安定のための諸施策等について、以下政府に質問する。

一 北東北の大規模ヤミ増羽について
  北東北で進行している数十万羽規模の大規模増羽は、例えば、過去二回無断増羽との指摘を受けながらそれを無視して鶏舎建設を次々と強行してきた青森県の日本鶏業、ヒナ育成場の名目で農場建設しながら採卵鶏を飼つている秋田県の八竜養鶏組合、岩手県の宮崎養鶏組合などにみられるように極めて悪質である。政府がこれらに対しどんな処置を下すかは、今後の政府の養鶏政策の方向を占うものとして全国の養鶏農家が注目しているところである。そこで聞きたい。
 1 政府は、全国養鶏経営者会議などが指摘している事例のそれぞれについて、どう認識しているのか。無断増羽と認定しているのか。
 2 それらについて卵価安定基金や配合飼料価格安定基金から除外したのか。
 3 ヒナ育成場、種鶏場、ブロイラー育成場などの名目で農場を建設しながら採卵鶏を大規模に導入している養鶏場については、目的どおりの使用を義務付け、採卵鶏の飼育は一切認めるべきでないと考えるがどうか。
 4 ヤミ増羽と認定された養鶏業者とエサの供給や鶏卵の売買などで関係している企業に対して、エサの供給のストップを始め、一切の関係をやめるよう指導すべきと考えるがどうか。
   三井物産系列の飼料メーカー日配が、日本鶏業に飼料を供給し、八竜養鶏組合の土地に根抵当を設定していると指摘されているが、この日配にどんな指導をしたか。
 5 現在の生産調整の制度では、県の羽数枠の範囲なら市町村間や業者間で羽数調整ができることになつている。これに基づき、青森県鶏卵需給調整協議会は、日本鶏業が最初の二十万羽無断増羽を行つた際、「今後指導に従う」ことを条件に十三万羽の枠を与え、ヤミ増羽の既成事実を追認するような処理をした。
  @ こうしたあまい態度がヤミ増羽者を増長させ、農家養鶏の生きる道を一層狭めることになつたのではないか。それは、前記の国会決議の趣旨と逆行する措置と考えるが、政府の見解はどうか。また、今回のヤミ増羽者に新たな枠を与えることはないと明言できるか。
  A 今後の羽数調整に当たつては、家族労働を主体とした農家養鶏で羽数増加を希望する経営に優先的に配分するという原則を確立すべきと考えるがどうか。
 6 北東北のヤミ増羽の特徴は、特定の養鶏企業が二県以上にまたがつて展開していることである。これらに対する羽数調査や生産調整の指導は、県まかせにせず、国の責任において実施すべきと考えるがどうか。
二 八戸の飼料コンビナートについて
 1 北東北の大規模ヤミ増羽の背後には、八戸の飼料コンビナート建設に伴う商社等の飼料供給戦略、すなわち、工場完成とともにフル操業に入れるよう各社とも建設前から飼料の拡販競争を激しく繰り広げ、その供給先確保のため一部養鶏業者と結び付いて、増羽をあおる動きがあると指摘されている。
   そこで聞く。配合飼料工場の建設は、農水省の承認事項になつており、その承認を与える際の基準として、飼料の供給が過剰とならないことを挙げているが、八戸飼料コンビナート建設によつて飼料供給が過剰となり、鶏卵生産調整を攪乱する要因が生まれるとの心配はなかつたのか。
 2 昨年七月操業を開始したこのコンビナートの最初の工場は、農水省に届け出ている生産予定数量を上回つて生産していると伝えられている。しかも、商社トーメンの八戸グレーンターミナルに関する資料には、この飼料コンビナートの五つの工場がすべてフル操業に入れば、年間百万トンを超す生産量に達するとの記述があり、五工場全体の生産計画月産六万トン、年産にして七十二万トンを大幅に上回ることが見込まれている。
   こうして計画を大幅に上回つて生産した飼料の供給先を確保するために、飼料メーカーが大規模ヤミ増羽をあおつてきたという事実はないのか。また、八戸の工場から今回指摘されているヤミ増羽企業に飼料が供給されているという事実はないのか。
 3 今後、飼料工場がヤミ増羽者に飼料を供給し鶏卵の計画生産を乱す行為に手を貸し続ける場合、飼料工場としての承認を取り消すことも検討すべきと考えるがどうか。
三 農家養鶏の経営安定について
 1 前記の国会決議は「農民が意欲のもてる養鶏政策の確立」を政府に求めている。ところが、成鶏メス飼養戸数は、昭和五十三年の二十七万七千戸から昭和五十八年の十四万四千戸へと半減し、飼養戸数で〇・二四%に過ぎない五万羽以上の経営が総羽数の二六・七%(五十八年)を占めるようになるなど、その後の事態は、かなりの数の農家養鶏が経営困難ななかで廃業に追い込まれたことを示している。
  @ この数年間の推移は、国会決議の趣旨に反するものと言わざるを得ないが、政府はこの決議をどう具体化してきたのか。
  A 大規模養鶏のシェアが拡大することは、今回の北東北の例にみられるように、結局、全国的な養鶏企業グループとか商社など農外資本の進出を許し、農民経営の道を狭めることになると考えるが、政府の認識はどうか。
 2 農家養鶏がかなりのペースで減少を続けている現実は、このままでは我が国養鶏が農外資本によつて支配されかねないことを示している。農家養鶏を守つていくための当面する最大の課題の一つは、大規模ヤミ増羽を規制する実効ある措置をとることである。
  @ これまでの経過からみて、現行の行政指導による生産調整のルールだけでは規制に限界があると考えるがどうか。それとも現行の制度でまにあうと断言できるのか。
  A 当面、鶏卵の供給過剰が顕著な間の時限的な措置として、一定羽数以上の経営における羽数増加や新規参入を認めない、それを可能とするために、鶏卵需給調整協議会に一定の権限を与えるなど新たな法制度の導入を検討してはどうか。これこそが、国会決議に真に責任を負う立場と考えるがどうか。
 3 長引く低卵価の下で、エサ代の支払いに窮する危機的状況の養鶏農家が続出している。これに対し、緊急融資を実施すべきと考えるがどうか。
 4 養鶏を始め我が国の畜産経営を長期的に安定して発展させるためには、飼料の大半を外国に依存するという現在の加工型畜産の体質を根本から転換し、国内の土地生産と結び付いた畜産経営の確立が重要と考える。
   国内の飼料基盤の整備などを飛躍的に強め、飼料自給率の向上に本格的に取り組むべきと考えるが政府の見解はどうか。

 右質問する。





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