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昭和五十八年十月二十九日提出
質問第一二号

 アメリカのグレナダ侵攻に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十八年十月二十九日

提出者  野間友一

          衆議院議長 福田 一 殿




アメリカのグレナダ侵攻に関する質問主意書


 今回、レーガン米政権が佐渡が島の半分弱の面積、人口わずか十一万人の極小国グレナダに対して行つた軍事侵攻は、グレナダ民族の主権を力で踏みにじつた侵略行為であつて、国際法上いかなる意味でも正当化することのできない蛮行である。
 非同盟諸国、社会主義諸国を始めフランス、イタリア、西ドイツなどの諸国がアメリカのグレナダ侵略を非難し、十月二十五日、二十六日両日の国連安保理事会において、アメリカとともにグレナダに出兵した国を除いては各国がこぞつてアメリカを非難したのは当然のことである。二十八日の安保理事会ではグレナダ侵略非難決議が、アメリカの拒否権によつて葬られたとはいえ、賛成十一力国(棄権三、反対はアメリカ一国のみ)の支持を得ている。
 ところが中曽根首相は、「在留米人の保護と関係各国からの要請でやむをえずああなつたことは理解できる」(十月二十六日付「毎日」)とアメリカの蛮行に理解を表明した。アメリカのかかる侵略行為を擁護することは、国際正義も道理も投げすてた許し難い態度である。
 今日の事態の重大性にかんがみ、若干の質問をする。

一 中曽根首相が行つた、「在留米人の保護と関係各国からの要請でやむをえずああなつたことは理解できる」との発言における「理解できる」とは、アメリカのグレナダ侵略それ自体を容認したものかどうか。
  また、この首相発言が政府の統一見解であるのか。
二 アフガニスタン問題では、「ソ連の軍事的行動は国際の平和及び安全を損うもの」と批判し、「軍事介入を直ちに停止」することを要求した(昭和五十四年十月二十九日外相談話)が、
 1 今回のアメリカの軍事侵攻は「国際の平和及び安全を損うもの」ではないというのか。
 2 米軍など侵略軍はグレナダから即時撤退すべきと考えないのか。なぜ撤退要求をしないのか。
 3 ソ連のアフガニスタン侵略の際と同じ態度がとれないのはどういう理由か。
三 グレナダ侵略について、レーガン政権からは事前に通知があつたか。また、事後アメリカから説明があつたかどうか。あつたとすればその内容を明らかにされたい。
四 レーガン大統領は十月二十五日、米海兵隊のグレナダ上陸について、@千人の米国人を含む市民の安全確保、Aこれ以上の混乱の回避、Bグレナダの法と秩序の回復、という三つの理由を挙げた。これが、グレナダ侵略を正当化する理由とならないことは明白である。
 1 米国人の安全確保という理由について
  ア 今日、国連憲章は、自国民保護を理由として軍事侵攻すること自体を許していない。
    ましてやグレナダ政権は、米国人を含むグレナダ在住のすべての外国人の安全を保障し、米英外交官を国内情勢の調査のために国内に招き入れることさえしていた。これは、米国大学生など五百人の関係者がいるセントジョージズ医科大学の学長(米国人)や副学長が、「当地の米国市民はまつたく危険にさらされていない」、「グレナダ政府は米市民の安全を約束していた」と、述べていることからも確かなことである。
    こうした事実を無視し、政府は、自国民保護を目的とした軍事侵攻が国連憲章と国際法が許しているとでも解釈しているのかどうか。
  イ レーガン政権が、グレナダ政権によつて在留米国人の安全が約束されているにもかかわらず、これを無視したことを外交的にも許されないこととみているのか。
  ウ 中曽根首相は、グレナダ政府によつてグレナダ在留米人の安全が保障されていたことについて、在外公館から情報を得ていたのかどうか。在グレナダ大使館を兼轄しているトリニダードトバゴ大使館は、グレナダにおける在留外国人の安全について、どういう情報を外務省に送つていたのか、内容を明らかにされたい。
 2 グレナダの混乱を回避するためとか、グレナダの法と秩序の回復のためとかいう理由について、これこそグレナダ国民自身が解決すべき完全な内政問題である。政府は、グレナダの内部問題に対するレーガン政権の介入を支持するのか。いつたい、アメリカの介入は国連憲章と国際法のどういう根拠に基づいて正当化されるというのか、明確にされたい。
 3 さらに、首相が発言した「関係各国からの要請」について
  ア 東カリブ海諸国機構(OECS)の議長であるドミニカの首相が、今回の軍事侵攻が「新たなマルクス主義政権の軍事力増強に対処する予防的防衛策」と述べているが、OECS条約は“予防的防衛”のために軍事侵攻することを取り決めているのか。だとすれば、それは国連憲章に違反した取決めではないか。OECS条約上の根拠及び国連憲章との関係について見解を求める。
  イ このようなOECSの要請なるものがアメリカのグレナダ侵略の理由となるなら、周辺諸国が、主権国の政治・外交方針が好ましくないというだけで外国の軍事力を使つて当該主権国の政権を打倒するという無法状態を容認することになる。これは、少なくとも国連憲章と国際法に基づく世界秩序を破壊することであるが、政府は、OECSの要請がアメリカのグレナダ侵略を正当化するとの見解をとつているのか。
  ウ アメリカの行動は、グレナダ政府の要請によらない、すなわち国連憲章第五十一条の集団自衛権に基づく行動でないことは明白である。つまり、アメリカの行動は国連憲章が禁止した戦争行為=侵略行為ではないか。政府の見解を問う。
五 アメリカは、この侵略の後の計画として、イギリスのグレナダ総督に臨時政府を樹立させることが伝えられている。
  グレナダ人民の独立と主権を武力で破壊し、自らに都合のよい政権をつくろうとすることに政府は反対なのかどうか。
  また、そのような政権は認めない態度なのかどうか、明確にされたい。

 右質問する。





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