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昭和五十八年十一月十二日提出
質問第二三号

 琵琶湖周辺の地質と地盤沈下に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十八年十一月十二日

提出者  瀬崎博義

          衆議院議長 福田 一 殿




琵琶湖周辺の地質と地盤沈下に関する質問主意書


 さきに私が提出した「琵琶湖の水位低下に伴う地盤沈下に関する質問主意書」(昭和五十入年七月二十三日提出)に対して、政府は何ら具体的な理由を明示しないまま「(地盤沈下は)現実化する可能性がない」との答弁書を出してきた。このため、私は重ねて、「琵琶湖の水位低下に伴う地盤沈下に関する申し入れ」を行い、答弁もれになつている点について政府の見解をたださざるを得なかつた。その際、建設省は、私の質問主意書で引用した通産省工業技術院地質調査所の金井孝夫氏の研究論文の内容について、@論文中に指摘されている地盤沈下量の算定の仕方に土質工学的な誤りがあり、最終的結論に達したものではない。A琵琶湖総合開発では、琵琶湖の水位低下が一時的なものに過ぎないのに、論文では恒常的に水位低下が起こることを前提にしている。B論文では、「スクモ層では地下水位低下に伴つて局部的な不同沈下をもたらす」と指摘しているが、スクモ層は粘土質とたいして変わらないものであり、それほど重視する必要はない ―― などと反論した。
 しかし、その後、この地質調査所の研究以前に建設省近畿地建が実施した研究でも水位低下に伴い地盤沈下が起こり得るとの指摘がなされていたこと、また、金井氏と共同で琵琶湖周辺の土質調査に当たつた相原輝雄氏の論文でも、超軟弱地層の存在が指摘されていることが明らかになり、さらに琵琶湖周辺で実際に地盤沈下が起こつていることも判明した。
 私は、建設省からの反論及びその後の新たな事態を受けて、ここに改めて次の諸点について質問し、今回はとくに、各項目ごとに詳細な答弁を求めるものである。

一 建設省からの反論について
 1 建設省は、琵琶湖の水位低下に伴つて地盤沈下が起こり得るとした地質調査所の論文について、「現実化する可能性がない」と否定したが、その科学的根拠を示されたい。また、その後の「申し入れ」の際に、建設省としても地質調査所の研究を補完する調査、研究を行うことを約束されたが、具体的にはどこの機関でどのように実施されるのか。
 2 建設省は、琵琶湖総合開発事業による水位低下について、「恒常的な水位低下は起らない」と言うが、現に今日の琵琶湖の平水位は明治初期の平水位よりも八十センチメートルも低下しており、当初はマイナス一・五メートルが一時的であつても長期的にみれば恒常的に水位が低下してしまうのではないか。
 3 地質調査所の金井氏の論文では、スクモ層が不同沈下をもたらすと指摘しているのに、建設省は、「スクモ層はそれほど重要でない」と言つているが、その根拠を明らかにされたい。
 4 スクモ層については、当初、金井氏とともに共同調査に当たつた相原氏の論文では、「湖岸沿いに超軟弱層が比較的厚く堆積しており、スクモと思われるとくに異状に軟弱な値を示す箇所が見受けられた。層厚も三〜六メートルを示しており、この地層は土木工事・構造物の建設などに当つては排除するか、以深に基礎を設定するかなどの工夫を要する地盤といえよう」と指摘しているが、これは、「スクモ層は重要でない」とする建設省の見解と全く異なるばかりか、金井氏、相原氏の二人の専門官が琵琶湖周辺のスクモ層を重視していたことを示している。このスクモ層における建設工事に特別な注意を喚起した見解について建設省はどう考えるのか。
二 近畿地建の「びわ湖周辺地帯の土質・地質・地下水の性状に関する研究」の内容について
 1 この研究の中で、「地盤沈下への影響」と題して、地下水面の一メートル低下の沈下量八十七センチメートル、同じく二メートル低下の同百十二センチメートル、同じく三メートル低下の同百二十六センチメートル ― との表を掲げた上で「びわ湖周辺のように地層変化のはげしい地域では地下水位低下による沈下量は場所的に顕著に変化すると考えられる。」との指摘があるが、これをどう受けとめているか。
 2 この研究の中で、琵琶湖の水位低下と周辺地下水位低下の関係を調査した当時の京都大学教授松尾新一郎氏は、「びわ湖周辺地帯の地下水位変動について」という論文の「むすび」で、「今後残された問題点としては、地下水と特に密接な関係を有する地点において以上すすめてきた解析を部分的により高い精度で調査し、研究することである。」と追加研究の必要性を説いている。いかなる追加研究がなされているか。
三 現実に起こつている具体的な地盤沈下の代表例 ― 国道八号線木之本町大音地先の地盤沈下について
 1 国道八号線の木之本町大音地先で、国道の周辺が地盤沈下し、一帯が沼地化している箇所があるが、滋賀国道工事事務所では、「深い腐植土層(スクモ層)のため沈下が起つていると考えられる」と指摘しているが、これは事実かどうか。
   また事実であるとすれば、「スクモ層は重視する必要はない」とする建設省見解と相反することになるのではないか。
 2 滋賀国道工事事務所は、国道建設以前から、このスクモ層の存在と地盤沈下の可能性が判明していたことを明らかにしている。そして、道路建設後において予想以上の沈下現象が続いているのである。国道建設という限られた公共工事においてさえ、スクモ層の存在に遭遇していながら、広範囲、多面的、大規模な公共工事からなる琵琶湖総合開発事業の計画に当たつて、なぜ琵琶湖周辺全域にわたつてのスクモ層の分布調査を行わなかつたのか。
 3 滋賀国道工事事務所は、地盤沈下が一年につき十二センチメートルないし十三センチメートルの割合で進行し、サンドマット工法を採用しても沈下が食いとめられないくらい深刻であると説明している。道路の両側の相当範囲の土地も沈下の影響を受けて沼地化し、田畑の冠水、ヤブカの大量発生など周辺住民に甚大な被害を及ぼしているが、路盤沈下が防ぎきれないため、道路下を横断する排水管の改良は不可能となり、別途排水路の新設に取りかかりつつある現状となつている。こういう事実があつても、なお建設省は、「スクモ層は重視する必要はない」との主張に固執するつもりなのか。

 右質問する。





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