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答弁本文情報

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昭和五十八年十一月二十五日受領
答弁第二三号
(質問の 二三)

  内閣衆質一〇〇第二三号
    昭和五十八年十一月二十五日
内閣総理大臣 中曽根康弘

         衆議院議長 福田 一 殿

衆議院議員瀬崎博義君提出琵琶湖周辺の地質と地盤沈下に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員瀬崎博義君提出琵琶湖周辺の地質と地盤沈下に関する質問に対する答弁書



一について

1 土質力学によれば、粘土に荷重をかけると徐々に収縮していくが、この大部分は粘土中の間隙水が抜け出ることにより発生するものであつて圧密現象と呼ばれている。この収縮による変形は塑性的変形であつて一度変形が生じると荷重が取り除かれた後も元に戻らないという性質がある。一度荷重をかけられて収縮した粘土に再び荷重をかけても、その粘土が過去に受けたことのある荷重の最大値に達するまでは圧密現象による収縮は発生しない。この過去に受けたことのある最大荷重のことを圧密先行荷重といい、現在かけられている荷重が圧密先行荷重より小さい状態を過圧密状態、圧密先行荷重より大きい状態を正規圧密状態と呼んでいる。
  御指摘の地質調査所の論文は、当時一般的に採用されていた圧密沈下の計算式を用いたものであり、結果として地層が正規圧密状態にあると仮定したものとなつているが、建設省の調査によれば、琵琶湖総合開発計画(以下「計画」という。)に伴う湖水位低下の影響を受ける地域における地層は、計画に伴う湖水位低下の範囲では過圧密状態にとどまるものと考えられること、圧密が完了するのには長い時間を要すること、明治以降湖水位低下が生じたときにも地盤沈下による影響が見られなかつたこと等から総合的に判断して、現実化する可能性がないと考えているものである。
  また、御指摘の「申入れ」の際に、建設省として地質調査所の研究を補完する調査、研究を行うことを約束した事実はない。

2 明治以降における琵琶湖の平均水位の低下は、琵琶湖周辺の地域を洪水から守るため瀬田川等を積極的に改修した結果生じたものである。
  計画に伴う湖水位変動は、一定の範囲内で渇水時には低下し、豊水時には回復するという性質のものであり、長期的に見て恒常的に湖水位が低下してしまうことはない。

3 計画に伴う湖水位低下の影響を受ける地域に存するスクモ層については、計画に伴う湖水位低下の範囲では過圧密状態にとどまり、周囲の他の粘土層と同様の挙動を示すと考えられること等の理由から、計画に伴う湖水位低下による地盤沈下を考える上では、特に当該スクモ層を周囲の他の粘土層と区別して考える必要はないものと考えている。

4 計画に伴う湖水位低下による地盤沈下を考える上では、3において述べた理由から、特にスクモ層を周囲の他の粘土層と区別して考える必要はないものと考えるが、構造物の基礎としては必ずしも適当でないものもあると考えられるので、個別の土木工事の施工に当たつては、その都度必要な調査を行い、適切な対応を行つているところである。

二について

1 御指摘の研究のうち地盤沈下への影響について検討した部分は、地層は正規圧密状態にあり、湖水位低下は永久に続くものと仮定した上で検討したものであり、一についての1において述べた理由から、この調査の結果が現実化するおそれはないものと考えている。

2 この研究は、計画の策定過程における様々な可能性の検討の一つとして行われたものであり、現在行われている計画の策定に用いられたものではない。

三について

 御指摘の沈下は、計画に伴う湖水位低下の影響を受ける地域の外において、腐植土層(スクモ層)が構造物の設置により正規圧密状態となつて発生したものであり、計画に伴う湖水位低下による地盤沈下とは関係がない。また、御指摘の沈下は、当初より予想されていたものであり、現在までのところおおむね予想された範囲内にある。
 今後とも、個別の土木工事の施工に当たつては、その都度必要な調査を行い、適切な対応を行つてまいりたいと考えているが、計画に伴う湖水位低下の影響による地盤沈下を考える上では、一についての3において述べた理由からスクモ層と周囲の他の粘土層を特に区別して考える必要はないものと考えている。

 右答弁する。




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