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昭和五十九年三月三十一日提出
質問第一〇号

 国民の請願権問題に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十九年三月三十一日

提出者  柴田睦夫

          衆議院議長 (注)永健司 殿




国民の請願権問題に関する質問主意書


 請願は、専制君主制の時代において、為政者に民意を伝達し、権利を救済するための極めて重要な手段の一つであつた。その後、請願の重要性は、国民の参政権の拡大や権利救済制度などの発達に伴つて次第にうすれてきた。しかし、請願権は、今日なお、諸国の憲法において、伝統的な国民の参政権的権利として広く保障されている。
 我が国においても、主権在民の原則に立つ現行憲法が、請願権を侵すことのできない国民の基本的人権として保障するとともに、この憲法規定を具体的に施行するため、一般法たる請願法が制定され、国会法等で国会等に対する請願の手続規定が定められている。
 ところが、我が国の現行の請願権保障法制とその実際の運用には、多くの黙視し得ない重大な問題がある。国会における請願審査についてみても、委員会、本会議とも会期末に一括して処理するなど、まつたく形式化している。政府の各行政機関等における請願審査と処理にいたつては、実質審査をほとんど行わないばかりか、請願書の受理を拒否する行政機関さえあるなど、まさに「無法状態」ともいうべき驚くべき現状である。
 そこで以下、国民の請願権問題に関し、次の事項について質問する。

一 請願の相手方たる「官公署」について
  現行請願法(昭和二十二年法律第十三号)は、天皇をはじめ各省庁や地方公共団体など、すべての官公署に請願を提出できる旨を定めている。この「官公署」には、裁判所や会計検査院はもとより、政府関係特殊法人、日本銀行などのいわゆる認可法人、地方公社など地方公共団体が出資する法人が含まれると理解する(請願法が制定された帝国議会において、官公署には公共組合等が含まれる旨の政府答弁もある。)が、政府の解釈はどうか。
二 請願人について
  現行憲法第十六条は、「何人も……請願する権利を有し」と定め、請願法は、法人の請願権を認める旨の規定を設けている。この「何人」には、国家公務員や地方公務員はもとより、本邦に在住又は滞在する外国人も含まれると理解するが、政府の解釈はどうか。
三 請願事項の範囲について
  現行憲法第十六条は、請願事項について「損害の救済、公務員の罷免……」と具体的に例示している。この例示は、「……その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し」とあるように、限定例示したものではなく、請願事項の範囲は、官公署にかかるすべての事項に及ぶと理解するが、政府の解釈はどうか。
四 請願書の書式について
  現行請願法は、「請願は、請願者の氏名(法人の場合はその名称)及び住所(住所のない場合は居所)を記載し、文書でこれをしなければならない。」(第二条)と定めている。従つて、@請願書は、住所と氏名が記載された文書であれば足り、書式について特段の規制はなく、捺印なども必要でない。A当該文書の表題に「〇〇に関する申し入れ」などと記載されたものであつても、その内容が、官公署に対して希望を表明したり、意見を表明するなど、実質的に請願に該当するもので住所と氏名が記載された文書であれば請願書として扱わなければならないと理解するが、政府の解釈はどうか。
五 請願を受理する窓口の設置と請願担当官の配置について
  国会や地方議会に対する請願の手続は、国会法や地方自治法等の定めによることとされ、国会及び地方議会には、請願課など請願を受理するための窓口が設置され、請願担当官が配置されている。ところが、一般法たる請願法が適用される国の各行政機関や特殊法人では、請願受付け窓口を設置し、請願担当官を配置しているところほとんどないといわれている。国の各行政機関と特殊法人のうち請願受付け窓口を設置し、かつ、請願担当官を配置しているところはどことどこか。当該窓口の名称は何か。配置されている請願担当官はそれぞれ何名か。
六 請願書提出の方法について
  請願の方法については、憲法第十六条が「平穏に」しなければならない旨を定めているだけで、現行請願法にはなんらの定めもない。従つて、請願書は、「平穏に」という要件さえ遵守すればよく、代理人が提出することもできれば、郵送で提出することもできるということになるが、政府の解釈はどうか。
七 請願を受理する義務について
  現行請願法は、官公署に請願を受理する義務を課している(第五条)。ところが、国の行政機関のなかには、国民が郵送してきた請願にかかる郵便物の受取りを拒否したり、申入れ文書を申入れ者の面前で破り捨てるなどという態度をとるものがある。
 1 こうした態度が違法であり、許されないことは明白であるが、どうか。
 2 受理を拒否された請願については、現行請願法第三条第二項「請願の事項を所管する官公署が明らかでない」の請願とみなして内閣が受理すべきものと考えるが、どうか。
八 請願の誠実な処理について
  現行請願法は、官公署に請願を「誠実に処理」するよう義務付けている(第五条)。この規定は、請願者に請願の処理結果を回答する義務まで課したものではないとの解釈が広く行われているが、少なくとも、関係部局の会議や省議等で各請願を個別に実質審査、処理し、なお、請願者が求める場合には、請願の処理経過又は結果を回答するという意味を含むものと理解できる。また、請願法が制定された帝国議会において、当時の金森国務大臣は、各官公署では実質的な請願審査を行う、重要な請願については公聴会を開くなどして審査をつくす、請願の処理結果については事実上回答できるようにしたい旨の答弁を行つている。政府の解釈はどうか。
九 請願に関する細則について
  国会では、国会法に基づく衆・参の各議院規則で請願に関する細則を定めている。地方議会も、地方自治法に基づく地方議会会議規則で請願に関する細則を定めている。ところが、一般法たる請願法については施行令が定められていないうえ、同法の適用を受ける国の各行政機関や特殊法人などでは、請願処理規則・要綱などの細則さえ定めていないという。請願に関する細則を定めている国の行政機関・特殊法人はあるか。あるとすれば、それはどことどこか。
十 地方公共団体における細則について
  地方公共団体でも、そのほとんどが請願条例や規則・要綱などの細則を定めていないという。
 1 請願に関する細則を定めている地方公共団体はあるか。あるとすれば、それはどことどこか。
 2 政府は、地方公共団体に対し、請願に関する細則を定めるよう指導したことがあるか。

 右質問する。





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