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昭和六十年十二月十三日提出
質問第二三号

 東大農業部コンピューターの民間企業による不正使用問題と虚偽報告等に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和六十年十二月十三日

提出者  矢山有作

          衆議院議長 坂田道太 殿




東大農業部コンピューターの民間企業による不正使用問題と虚偽報告等に関する質問主意書


 東大農学部・生物環境制御システムセンター(以下「CERES」と略す。)において、一九八二年四月、日本電気株式会社(以下「NEC」と略す。)からレンタル契約によつて導入した研究用中型コンピューター(年間契約料約二千八百万円)が、NECの社員等によつて「ソフト開発」等自社業務のために、納入後二年九ヵ月にもわたつて不正使用されていた疑いが報道されて以後、この問題に対する国民の関心が高まつた。この疑惑にこたえるべく東大農学部は、五月四日付「電子計算機利用実態調査委員会報告書」(以下「和田報告書」と略す。)を配布したが、その内容は疑惑を解明するに足るものではなかつた。
 そこで、国民の納税者としての立場と、この問題を学問・研究の府にあるまじき重大問題として深い関心を寄せ、かつ究明すべしとする声を代弁すべく、本年五月二十二日付質問主意書を提出した。ところが、これに対する答弁書(五月三十一日付)は、答弁内容に重要な欠落があり、また事実に反する内容を含むなど、極めて不十分といわざるを得ないものであつたため、六月五日の衆議院文教委員会において質疑を行い、なお細部にわたる資料要求を重ねて、さらに追及を続けたのであるが、依然として事実を隠ぺいしようとする不明確な答弁と、事実を歪曲した不誠意極まる資料しか得ることができなかつた。そのため、再び質問主意書(六月二十五日付)を提出して問題の究明に努めたが、なお多く不明の点を残した。
 しかも、その後東大農学部の「電算機問題調査報告書」(十一月十九日付、以下「藤原報告書」と略す。)が出されたが、その内容は事実上一年に近い長期間を要しながら、欺瞞に満ちたものであり、「調査」と称して費やした長期間が、むしろ事実隠ぺいのためではなかつたかを疑わせる点すら少なくない。
 この藤原報告書は、端的にいえば、「なお真相を解明する必要がある」として、「真相解明に努力をしなければならぬと思う次第」との文部大臣答弁(六月五日衆議院文教委員会)の意に反し、これを欺くものと断ぜざるを得ない。
 ことここに至つては、この「調査」にたずさわつた調査委員、この藤原報告書に責任を有する東大農学部教授会の構成員に、重ねて直接国民に負うべき責任を問い、いかなる理由でNECという一企業の立場を擁護し続けるのか。「内外の批判に応える」としながら、何ゆえ、この問題について事実を明確にしないのか。
 これまで、東大農学部の自浄努力に期待してきたのであるが、度重なる質問主意書に対する欺瞞、委員会質疑への詭弁、資料要求に対する不十分な対応ですまされない虚偽資料の提出に加えて、文部大臣答弁の本旨にもとる藤原報告書が出されるに至つては、主権者国民の付託に依拠する国会軽視もはなはだしい行為として、尋常の手だてのみではすまされないものと判断せざるを得ないが、取り急ぎ、ことがらの重要性と緊急性に鑑み、次の事項について質問する。

一 藤原報告書に述べる機種選定について
 (一) 「ACOS三五〇、MS五〇、MS三〇というNECの機種だけを決め、ディスク、MT等周辺装置の有無、容量等はセンター長に一任」し、他社機との優劣も不明で、単にNECを指名しただけといえる機種選定原案を、センター長は如何なる意図で出したのか。
     また、この「原案」作成に関与した委員氏名、会議録の内容を明示し弁明せよ。
 (二) 本来ならば、先に研究者の要望をきき、最適の業者(社)を選ぶべきところ、NECに発注することを決定した後に、同社から提案書が出され、それを受けて東大研究者の要望をきいたという。その結果、多くの追加ソフトや技術開発が必要となつたというが、そのこと自体、NECの実績の欠如、発注先としての不適格性を如実に示すもので、しかも、その経費捻出のために当初予定のシステムが切り下げられ、ACOS三五〇は研究用としていわば欠陥システムというべきものとなり、NECの手で十三ヵ月にもわたる負荷テストを必要とし、MS五〇、MS三〇は納入後使用不能のまま六ヵ月ないし二年間も無駄にレンタル料を支払い、しかも、検収者、検収日時は不明、どのように検収したかも不明という。この経緯から考察すると、東大関係者の専門知識ないし基礎認識の欠落によるものか、さもなければ、癒着、すなわち何らかの理由で東大側責任者がNECの言うがままにならざるを得なかつた結果と断ぜざるを得ない。釈明を求める。
 (三) 研究用画像処理は、大きな容量の電算機によるのが常識であり、東大農学部の要望も、例えば当時既に全国百二十ヵ所以上の研究機関等で実用化されていた日本の画像処理研究の集大成ともいうべきソフトウェアパッケージ「SPIDER」を用い、これに画像の入出力機能を付加すれば実現され得るはずであり、何ゆえ主システムを利用しないのか、六ヵ月以上にもわたつて無駄なレンタル料を支払うこともない、MS五〇ではさしたる機能を期待できない、というのが専門家の見解である。MS五〇の現状に照らして、専門家を納得させ得る説明を求める。
 (四) コンピューターによるチャンバーの計測・制御は、当時既に内外で一般化されていたはずであり、藤原報告書が述べるように「研究開発」といえるほどの内容ではない。論拠を問いたい。当時の技術水準と東大農学部の状況を対比して説明されたい。
二 検収について
 (一) 「ACOS三五〇は二名の教官により稼動が確認された」と藤原報告書に記されるが、ACOS三五〇の図形処理機能と多摩農場のRJEは稼動していなかつた。すなわち、当時センター内で科学計算ができるというだけの状況でなぜレンタル料支払いに通ずる稼動確認ができたのか。当時MS五〇は搬入されたものの利用できるシステムにはなつておらず、標準機能は動いたというが、先の答弁書(内閣衆質一〇二第四三号)によれば、誰が、いつ、どのように検収したか不明という状態で、利用者も不明、MS三〇については搬入もなされていない。レンタル料はシステム全体に対する対価で、契約の便宜上、有償、無償の区別はあるものの、この稼動状況でレンタル料を支払うことはできないはずである。釈明を求める。
 (二) まして、画像処理を独立して運用できる条件でNECを選定しておきながら、MS三〇、MS五〇の検収も判然としない理由はなにか。
三 電子計算機使用時間通知書の記載について、次の七項の疑問に明確な答弁を求める。
 (一) 本来、ACOS三五〇のみのJECCメーター値を記載すべきところに、MS五〇、MS三〇の値を加えて「水増し」されている。何故か。
 (二) 右のMS五〇、MS三〇の数値も根拠のない数字である。MS三〇については搬入前であつたにもかかわらず、稼動時間が記載されている。何故か。
 (三) JECCメーターの検針日が三十六ヵ月分、すべて虚偽である。如何。
 (四) JECCメーターの検針者も三十六ヵ月中、二十四ヵ月分は虚偽である。如何。
 (五) JECCメーターの「水増し」は、昭和五十七年八月十六日付NECメモにおいて、四宮元技官とNEC岩田主任の「協議」の結果として記載されており、意図的になされたことは明白である。如何。
 (六) JECCメーター検針日に関する当方要求資料において、「昭和五十九年三月十二日」であるべき日付を、「三月六日」と回答したのは、明白に虚偽記載である。如何。(併せて、理由を説明せよ。)
 (七) 和田報告書九ページ、藤原報告書十三ページに記載される「比率一・二六」は、アカウント三十一日分とJECCメーター二十一日分の比として計算しており、無意味極まる。如何。
四 特別業務I、IIについて
 (一) 答弁書(内閣衆質一〇二第四三号)に「センター要請」となつている特別業務I、IIについて
     藤原報告書は、「特別業務I、IIはNECの自社業務のために使用したと考えざるを得ない」としているが、それは次のいずれによるのか、明確に答弁されたい。
    イ センター長の許可
    ロ 四宮技官(当時)の単独許可
    ハ NECの無断使用
 (二) 右に関して、東大としては如何なる措置を講ずるのか。(次のいずれを選ぶのか。)
    イ 諸経費(多額にのぼる電力料金を含む。)の請求
    ロ 損害賠償の請求
    ハ 被害届を出す
    ニ その他(具体的に)
五 特別業務IIIについて
  藤原報告書は、「東大のための使用か、NECのためのN1システムの応用開発を目的としているか、明確にできなかつた」旨記載しているが、次の諸点を明確にされたい。
 (一) 専門家に対して、どのような資料を提示して判断を求めたのか。具体的に示せ。
 (二) 判断を求めた専門家の氏名、専攻分野、現職を明示し、各人の所見を具体的に示せ。
 (三) 特別業務I、IIがいわゆる「黒」で、IIIが「不明」では説明にならない。公正な第三者機関による調査を実施し、明らかにされたい。
 (四) 特別業務IIIに関する内容も、それがどのように東大のために役立つかを明らかにする資料もないと答弁しながら、藤原報告書が「将来のオフィスオートメーション化を目指したもの」とするのは、何を根拠とするものか。
 (五) 当時、センター長は機種更新の意思がなかつた(内閣衆質一〇二第四三号)としながら、実際には更新作業が進められていた。この機種更新作業は形式のみで、内実は再度NECに発注するつもりであつたものと考えざるを得ないが如何。
六 学部長の措置について
 (一) 藤原報告書は、「討議、反省の機会のないまま学外から批判を受けた」旨述べているが、次の諸点に答えられたい。
    イ 学部長が本件を知つた時期はいつか。
    ロ 学部長は、本件にどのように取り組んできたか。経時的に、学部内の協議、NECとの交渉その他具体的に示されたい。
 (二) 当方の調査の結果、NECが使用するに際してはセンター長の了解があり、実質的には学部当局の何らかの了解ないし関与があつたものと判断している。
     釈明の余地ありや。
七 和田報告書は表5において、NECの聴き取り調査として、月別、業務別人数を明記し、MS三〇のトラブル対策の派遣を考えると人数に異常がない旨結論づけている。しかし、再質問主意書に対する答弁(内閣衆質一〇二第四三号)は、昭和五十九年十一月のNEC(注)西裕之氏が通常業務に十九日間就業したとするそれまでの資料等を訂正し、実態は、延べ数時間以外はすべて特別業務IIIであつたと述べているとおり、和田報告書表5に真憑性のないことを認めている。その上、NEC派遣者の所属、作業の時期、内容等に関する当方の資料要求(六月二十五日付)について、NECは東大農学部からの聴き取り調査に応ぜず、さらに文書による質問に対しても拒否回答(七月十七日付)をした旨の文書を受け取つた。このことから、和田報告書中の派遣人員に関する記載は根拠のないもの、すなわち虚偽であることが判明した。藤原報告書においても、和田報告書の記載と同様にNECから聴取したとする記述(十六ページ)をし、さらに五十七年末までの派遣人数について新たな考察をも加え、NEC側に問題がないかの如く印象づけている。右に述べたとおり、七月十七日以降においては、NECから聴き取り調査をしたなどといい得ないことは明らかで、藤原報告書がこのように記述することは、「内外の批判に応える」どころか、世間を欺く行為といわざるを得ない。
  この報告書に責任を有する調査委員、農学部教授会構成員の教育・研究者としての資格、資質、東大農学部の学問・研究に対する基本的姿勢と体質を疑わざるを得ない。事実を調査の上、明確な回答を求める。
八 答弁書(内閣衆質一〇二第四三号)において、「六十年五月七日付農学部長見解の訂正発表を行う予定である」と答えているが、いつ履行されたか。
  和田報告書、藤原報告書の訂正は如何にするつもりか。
九 東大農学部は、本件にかかる責任の所在を明らかにし、また、度重なる虚偽の報告による信頼失墜の回復措置をどのように講ぜられるか。
十 本件真相解明に当たつては、本件にかかわるNEC並びに東大農学部関係者からの事情聴取 が不可欠である。しかるに、これまでの質問及び答弁から判断する限り、所管省である文部省の対応のみでは限界もあり、不十分である。従つて、しかるべき機関の積極的対応を求めざるを得ないと思料するがどうか。

 右質問する。





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