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昭和六十一年二月四日受領
答弁第二三号

  内閣衆質一〇三第二三号
    昭和六十一年二月四日
内閣総理大臣 中曽根康弘

         衆議院議長 坂田道太 殿

衆議院議員矢山有作君提出東大農業部コンピューターの民間企業による不正使用問題と虚偽報告等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員矢山有作君提出東大農業部コンピューターの民間企業による不正使用問題と虚偽報告等に関する質問に対する答弁書



一について

(一) 東京大学農学部附属生物環境制御システムセンター(以下「センター」という。)における昭和五十七年度の電子計算機の機種選定に当たつては、センターの運営委員会の下に設置された機種選定委員会において、三菱電機株式会社、日本電気株式会社及び株式会社日立製作所の三社からの提案書について、学部内からの要望事項を踏まえて検討した結果、日本電気株式会社(以下「NEC」という。)の提案が他社の提案と比較して優れていることを評価して、NEC製の機種を選定したものであると承知している。
    同機種が選定された後、「主要な全チャンバーとの結合」を考慮すべきであるとの強い意見が機種選定委員会において出されたことから、センター長は、この意見を受けて、NECに対し、必要とされていた要件を満たしつつ、提案を修正するよう求め、修正された提案に基づき、昭和五十六年十月十三日の運営委員会において、センター長が次期システムの内容の概略を黒板に書いて説明を行つた結果、ACOS三五〇、MS五〇及びMS三〇の三装置で構成されるシステムを採用することが決定されたものであると承知している。
    なお、同日の運営委員会に出席した委員は、熊澤喜久雄教授(センター長)、中島哲夫教授、平野礼次郎教授、白井清恒教授、土井淳多教授、茅野充男助教授、田中学助教授及び菅野茂助教授(澤崎坦教授の代理)であり、その会議録は作成されていないと承知している。
(二) 昭和五十七年度におけるセンターの電子計算機の機種更新については、あらかじめ仕様書が作成されていなかつたこと、機種選定委員会での検討に当たつて考慮すべき要件が必ずしも明確でなく、また、検討が不十分であつたこと、MS五〇及びMS三〇について納入時点での検収が確認できないことなど、必ずしも適切に行われていない点があつたと考えられることは遺憾である。
    なお、各装置とも搬入された時から標準機能により稼動していたが、MS五〇及びMS三〇については、使用者から画像処理及びチャンバー制御について種々の要望が出されたために新たなソフトウェアの研究開発が必要となり、新たに開発されたソフトウェアを用いた稼動が開始するまでに時間を要したものであり、また、ACOS三五〇については、前機種より性能が優れたものであり、導入後、低利用ではあつたものの、機種そのものには欠陥が認められたことはないと承知している。
    また、MS五〇及びMS三〇については、NECとの無償使用貸借契約に基づいて使用していたものであり、借料は支払つていないものと承知している。
(三) 研究用画像処理については、御指摘のとおり、大きな容量の電子計算機を使用することが必要であることから、センターにおいても、MS五〇で処理したデータを磁気テープを介してACOS三五〇で処理することができるようなシステム構成としていたものであると承知している。
    なお、「SPIDER」が公開され利用者マニュアルが出版されたのは昭和五十七年十二月であり、センターの新機種導入時には、これを使用できる状態にはなかつたと承知している。
(四) 昭和五十七年当時において、植物を中心とした生物の環境条件を電子計算機で制御することを目的としたセンターのシステムと類似のシステムは、九州大学生物環境調節センター(以下「九州大学」という。)、環境庁国立公害研究所(以下「公害研究所」という。)等で試作されている。
    しかし、これらのシステムとセンターのシステムが大きく異なるのは、次の二点であると承知している。
  (1) 九州大学、公害研究所等のシステムは、一台のグロース・チャンバーを一台の電子計算機で計測・制御するものであり、九州大学の広範囲温度制御グロース・チャンバー並びに公害研究所の複合大気汚染ガス暴露キャビネット及び植物環境系の解析のためのシミュレータがこれに該当する。
      一方、センターでは、制御内容の異なる六台のグロース・チャンバーを一台の電子計算機で同時に計測・制御することを最終目的としていた。
  (2) センターでは、土壌中の水分含有量を計測・制御するという全く新しい要素を含んでいた。
      以上のように、環境制御といつてもその内容は一様ではなく、部分的には既に技術開発されていたものがあるものの、それ以外に更に研究開発を要する側面があつたものであると承知している。

二について

(一) ACOS三五〇、MS五〇及びMS三〇については、学部内からの要望に応じて、それぞれが独自に稼動するとともに、相互の結合により新たな機能を発揮することが期待されていたものであるが、これらのうち、賃貸借契約に基づき使用していたものは、ACOS三五〇のみであると承知している。
    なお、ACOS三五〇については、契約書に即した納入がなされたので、借料を支払つていたものであると承知している。
(二) MS五〇及びMS三〇の検収が確認できないことは、センターの管理運営が適切でなかつたためと思われ、遺憾である。

三について

(一) センターにおける電子計算機が、更新前の一機種から更新後にACOS三五〇、MS五〇及びMS三〇の三装置から構成されるものになつたこと等により、電子計算機使用時間通知書にACOS三五〇の使用時間を記入すべき日本電気フィールドサービス株式会社(以下「NEFS社」という。)の社員及び当該記入を確認すべきセンターの担当者の両者が、錯誤により、これら三装置を一体のものと考えたため、同通知書に使用時間が併せ記入されることになつたものであると承知している。
(二) MS五〇及びMS三〇に関しては使用時間を示すメーターがなかつたため、NEFS社の社員が、センターの担当者から聞き取つた使用時間を電子計算機使用時間通知書に記入したものであるが、遺憾ながら、使用時間の正確な記載とは言い難く、また、MS三〇の搬入前における使用時間の記載は、錯誤によるものであつたと承知している。
(三) NEFS社の社員による実際のJECCメーターの検針は、原則として毎月第一月曜日の定期保守点検時に行われていたが、センターの電子計算機の借料の支払は、契約上、月単位となつていたことから、電子計算機使用時間通知書上の検針日は、前月末日とされていたものであると承知している。
(四) センターの電子計算機の保守点検及び検針は、NEFS社の社員が行つていたものであり、電子計算機使用時間通知書には、すべてセンターの電子計算機の保守点検及び検針の担当者である同社の社員の氏名が記載されていたが、当該社員の都合により、他の社員が保守点検及び検針に当たつた場合、既に当該社員の認印を押した電子計算機使用時間通知書の用紙をそのまま使用して記録していたことから、電子計算機使用時間通知書に実際に検針を行つた者以外の者の氏名が記載されていた場合があつたものであると承知している。
(五) (一)において述べたとおりであると承知している。
    なお、電子計算機使用時間通知書に三装置分の使用時間を記入していたのは、昭和五十七年四月分からであり、御指摘の元技官とNECとの協議は、その後の同年八月に行われたものであると承知している。
(六) 昭和五十九年二月分のJECCメーターの検針については、同年三月六日に、センターの担当者がメーターの数値を読み取つた上、これを黒板に記録し、同年三月十二日に行われた保守点検時に、NEFS社の社員が黒板に記録された数値を電子計算機使用時間通知書に記載したものであると考えられるため、御指摘の資料においては、検針日を同年三月六日としたものである。
(七) 「東京大学農学部附属生物環境制御システムセンター電子計算機利用実態調査委員会報告書」(以下「第一回報告書」という。)に記載されていたCPU時間とJECCメーター時間との比率の推計については、「東京大学農学部附属生物環境制御システムセンター(セレス)電算機問題調査報告書」(以下「第二回報告書」という。)において、その誤りが指摘されているところである。

四について

(一) 昭和六十年九月三日内閣衆質一〇二第四三号の五についてにおいて述べているNECに対するシステム・エンジニアの派遣等の要請については、当初の要請は、センター長が御指摘の元技官を介して口頭で行つたものであり、更なる要請は、センター長の特段の指示に基づくものではないが、同元技官が行つたものであると承知している。
(二) 調査委員会の精力的な調査にもかかわらず、センターの管理運営が十全でなかつたこともあつて、特別業務に関係する書類等を十分に整えることができなかつたため、御指摘の問題について今後どのような措置が可能であるかを東京大学において検討中であると承知している。

五について

(一) 専門家に提示した資料は、次のとおりであると承知している。
 (1) 特別業務I、II及びIIIに関するアウトプット
 (2) 特別業務I、II及びIIIに関する説明のため、NECが昭和六十年四月二十六日の調査委員会に提出した資料
 (3) 第一回報告書
 (4) センターの土井淳多教授が作成した「コンピュータ使用に関する調査報告」
 (5) 月刊「宝石」(昭和六十年五月号)中の関係記事
(二) 意見を求めた専門家五名の専門分野及び身分等は、次のとおりであると承知している。
 (1) A氏 理学(原子核物理学) 元大学教授
 (2) B氏 工学(液体力学) 大学助教授
 (3) C氏 工学(電子工学) 大学講師
 (4) D氏 工学(電気工学) 大学教授
 (5) E氏 工学(電子工学) 企業役員
   なお、氏名の公表については、本人の了解が得られなかつた。
   また、各人の所見は、次のとおりであると承知している。
 (1) A氏 N1ネットワークに係るソフトウェアの開発を目的としたものか、東京大学農学部で利用するためのソフトウェアの開発かは、大学側のNECに対する依頼の内容によつて決まるものである。
 (2) D氏 「プログラム開発」を行つていたことが疑える。
     しかし、それが、「N1ネットワーク開発業務」そのものか、「N1ネットワークを応用する開発業務」かは、判定できない。「OA化ネットワークシステム」と、N1ネットワークシステムとの結び付きは十分あり、N1ネットワークシステムを応用してOA化ネットワークシステムが完成したなら、センターコンピュータを利用する人たちは、センターコンピュータのみならず、N1ネットワーク網をも多面的に活用できるようになるなど、このシステムのテストが将来直接的にセンターのために役立つことになることは十分考えられる。
 (3) E氏 相当高度な技術を持つた者によるプログラム開発である。
     なお、B氏及びC氏は、特別業務IIIについては、特段の意見を述べていない。
(三) センターの管理運営が十全でなかつたことによる関係資料等の欠落等困難な状況の下で、調査委員会は、農学部内外の専門家の意見の聴取、各種資料の調査、関係者からの聞き取り調査等可能な限りの手段を尽くして、精力的に調査を行つたものであると承知している。
(四) 特別業務IIIについて、調査委員会は、「本業務に関しては、本学部で将来行われるであろう情報処理を予測して、オフィス・オートメーション化を目指したものという見方もできるが、NECが行おうとしていたACOS三五〇の利用によるN1システムの応用開発を目的としたものという見方もでき、両者のいずれであるかは明確にできなかつた。」という結論を得ているが、これは、NECの説明、専門家の意見の聴取及び調査委員会としての独自の調査、検討を経て得られたものであると承知している。
(五) 昭和五十九年八月に、センターが電子計算機の利用促進のため、NECに対しシステム・エンジニアの派遣等を要請した当時、センターには機種更新の予定はなく、更新作業が進められていたという事実もないと承知している。

六について

(一) 次のとおりであると承知している。
   イ 学部長がセンターの電子計算機に係る問題(以下「本件」という。)を知つた時期昭和六十年一月二十一日に、土井淳多教授が作成した「コンピュータ使用に関する調査(中間報告)」により本件を知つた。
   ロ 本件に対する学部長の取組み
    (1) 昭和六十年三月十五日 土井淳多教授が作成した「コンピュータ使用に関する調査報告」の内容の事実関係を確認するため、和田照男教授及び高倉(注)教授に調査を依頼した。
    (2) 昭和六十年四月九日 農学部学科主任・施設長会議で右の二名に森島賢教授、上村賢治助教授を加えた調査委員会の設置を提案し、了承を得た。
    (3) 昭和六十年四月二十五日 農学部教授会で右の調査委員会の設置について承認を得た。
    (4) 昭和六十年五月四日 農学部臨時教授会を招集し、調査委員会から提出された第一回報告書について報告した。
    (5) 昭和六十年五月二十日 農学部組織・運営検討委員会準備委員会にセンターを含む農学部附属施設の在り方及び管理運営の見直しなどについて諮問した。
    (6) 昭和六十年六月二十六日 農学部臨時学科主任会議で、調査委員会委員を追加して補充調査を行うことを提案し、了承を得た。
    (7) 昭和六十年六月二十七日 右の調査委員会委員の追加並びに補充調査実施を農学部教授会に提案し、了承を得た。委員の構成は、従来の委員四名に、玖村敦彦、南雲秀次郎、戸田昭三、藤原公策の各教授、二村義八朗、石津敦、唐木英明の各助教授の七名を加えた十一名である。
    (8) 昭和六十年十一月二十八日 第二回報告書を農学部教授会に報告し、承認を得た。
        なお、学部長は、NECとの交渉は行つていない。
(二) NECがセンターの電子計算機を使用したのは、センターの電子計算機の利用促進のため、センター長等が、NECに対しシステム・エンジニアの派遣等を要請したことに基づくものであつたと承知している。

七について

 第二回報告書中の御指摘の記述は、昭和六十年七月十三日に調査委員会が行つたNECからの聞き取り調査に基づいたものであると承知している。

八について

 第一回報告書の一部誤りについては、第二回報告書で指摘、訂正しており、昭和六十年十一月二十八日に行われた農学部長及び調査委員会委員長と東京大学大学記者会との会見においても説明したところであると承知している。

九について

 本件は、主要な電子計算機が必ずしも有効に活用されず、また、センターの管理運営が十全でなかつたこともあり、民間企業による不正使用の疑いを招くに至つたもので、極めて遺憾なことであり、東京大学農学部としても真剣に受け止め、今後再びこのような問題が生じないよう、センターの在り方について検討するとともに、その管理運営に万全を期し、大学の使命である教育研究の着実な遂行に努める所存であると承知している。

十について

 関係資料等の欠落等困難な状況の下で、東京大学農学部及び文部省としては、最大限の努力をして事実関係の究明に努めたものと考えている。

 右答弁する。




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