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昭和六十一年五月二十二日提出質問第二八号
国語政策に関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
昭和六十一年五月二十二日
衆議院議長 坂田道太 殿
国語政策に関する質問主意書
国語審議会においては去る三月六日、「改定現代仮名遣い」について文部大臣に答申したが、その内容については、なお幾多の問題点を残しており、我国国語の傳統的本来的美点を損なうところ少しとしない。
そもそも国語における漢字及び仮名の書き方及び用い方は、古事記・萬葉集等に発して、幾多の文献と学究先達によつて開花し整理され、しかも長い民族的傳承のうちに発達充実し来つたもので、その根元は極めて深く、その水準は誠に高いものがあつた。
しかるに、戦後俄に起つた国語改革の運動と、アメリカによる教育使節團の占領政策的助言に基づき、当時の文部省は、国語審議会における極めて短急な審議によつてこれを改革した。
もちろん、それ以前においては、国民は国語に関して些も不満不便を感ぜず、むしろ誇りを以つて用い育て傳えて来たものであることから、この火事場泥棒的・革命的改定については、基本的に不当として反対を表明する国民も決して少くなかつた。
故にこそ、昭和五十六年に至つて、当用漢字一、八五〇字を廃して常用漢字一、九四五字を採用するとともに、これを強制から目安へと緩和した。
しかし官公庁・教育現場をはじめマスコミに至るまで、徒らなる外来語・新語・変語の横行とともに、国語は今日なお依然として危機的混乱をつづけている。
ことに戸籍法において、子の命名に用いる文字を二、一一一字に限るとする制限は憲法違反と言うも過言ではなく、ために、出生届において不本意な選名を余儀なくされている例は後を絶たない。
かかる時に行われた今回の改定答申は極めて重大なことであるが、なお甚だ非学問的便宜主義による欠点を幾多残している。
これをこのまま是認して内閣訓令を以つて制度化するならば、国語は永久にその本姿を取りもどすことなく、国と国民とが受ける文化的不利益は計り知れないものがあろう。即ちこれが対策は極めて緊急を要するものがある。
從つて次の事項について質問する。
二 漢字の制限や仮名遣いを行政権力によつて操作することを止めて、国語を本来の傳統に復すか。
三 戸籍法における人名用漢字の制限をやめるよう、法令の改正をされる考えはないか。
四 戰後の国語政策を再吟味するため国語審議会を改組し、ことにその委員の人選には広く有能な人材を登用される用意があるか。
右質問する。