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昭和六十二年十二月四日提出
質問第一号

 トリクロロエチレン等による地下水汚染に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和六十二年十二月四日

提出者  寺前 巖

          衆議院議長 原 健三郎 殿




トリクロロエチレン等による地下水汚染に関する質問主意書


 発がん性の疑いがある有機塩素系化学物質(トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、一,一,一 ― トリクロロエタン)による地下水汚染が全国的に問題になつている。京都市でも厚生省の暫定水質基準の三百十七倍という汚染井戸をはじめ、調査対象井戸の八四%以上が汚染されている。京都市の場合、伝統的な豆腐製造が六百六軒、酒類製造が四十三軒等があり、井戸水の美味さが味の良さになつている。京都市当局は、汚染された井戸水は飲まないように注意し水道水への転換をすすめているが、井戸水を使用しないと伝統的な味を出せないこれらの人達の死活問題となつている。
 これらトリクロロエチレン等による地下水汚染が問題にされはじめたのは十年以上前になるが、環境庁が実態調査にのりだしたのは五十七年度になつてからであり、すでに高濃度かつ広範囲にひろがつていた。現在トリクロロエチレン等の有機塩素系溶剤は、年間約二十六万トン生産されICチップ製造前工程等の金属部品脱脂洗浄に使用されている。この間政府は、暫定的な水質・排水管理目標の設定及びトリクロロエチレン等適正利用マニュアル等の措置を行い、五十九年度から環境庁が構造解明及び制度問題の検討を進めているが現在に至つても抜本的な対策を打ち出しえていない。発生源の原因者責任の特定を困難にさせるほど長期間にわたつて汚染の拡大を見過ごしてきた政府の責任は重大である。
 共産党は、水質の汚濁防止のため工場排水基準を厳しくし、総排水量と汚染物質の総量規制を行い、監視体制の確立を強く主張してきたが、現状の有機塩素系化学物質による地下水汚染の拡大は、古都京都の伝統的な味を守ることにとどまらず、全国八百十四万人の飲用井戸水使用者をはじめ国民の生命と健康を守るためにも、トリクロロエチレン等の地下水汚染防止の対策は、緊急を要すると考える。
 従つて、次の事項について質問する。

一 地下水汚染機構の究明と使用施設の安全対策について
 1 厚生省は、六十二年に飲用井戸等衛生対策要領をまとめ汚染実態の把握及び水質の検査等の汚染対策を都道府県に指導しているが、実際には汚染経路等の実態把握は困難であり、発生源に対する指導も不十分なものとなつている。京都市の場合、右京区のIC工場付近の井戸から管理目標の五倍以上のトリクロロエチレンと二十六倍以上のテトラクロロエチレンが検出されているが、調査井戸の八四%から検出されるというあまりにも広範囲にわたつており、市の独自調査では汚染経路の特定が困難になつている。政府は、飲用水の安全確保のため、自ら必要な予算措置を講じて本格的な実態調査を行い、地下水汚染機構を解明すべきではないか。
   厚生省は、六十年度からクリーニング所が排液処理装置を設置した場合、環境衛生金融公庫の貸付を指導している。政府は、酒類等の製造所が簡易な蒸気吹込等ばつ気方式等の処理装置を設置した場合、助成及び長期で低利な融資の対象にすべきではないか。
 2 有機塩素系の溶剤の保管、使用及び廃棄等の実態については、政府自らが正確、迅速に把握して必要な対策をとるべきだが、政府は現在どのように実態を把握し対策を講じているのか。
   とりわけ、六十年度に環境庁が行つたIC産業実態調査は、全国九十八工場のうちたつた十ヵ所の工場の調査結果であり極めて不十分である。しかも地下水については調査した井戸二十八本中一本から〇・〇三五mg/1が検出されたにもかかわらず原因が明らかにされていない。これらの製造工程、貯蔵及び廃棄等の実態を改めて把握し対策を強化すべきではないか。
   また、排水処理については暫定排水基準があるということで問題にしていないが、活性炭吸着装置等の排水処理装置は排水中に油分が混入すると効果が極端に低下するといわれており、系統的な追跡調査が必要ではないか。
   政府は、汚染防止装置の早急な開発及び有機塩素系溶剤にかわる代替溶剤の開発を促進すべきではないか。
 3 環境庁は、五十九年度から三ヵ年計画で地下水汚染機構解明のための調査を行つており、この調査結果に基づいて対処することをしばしば国会においても答弁している。政府は早急に結論を出し排水規制等の具体的対策をしめすべきではないか。
 4 米国では、五十六年にシリコン・バレーの地下タンクからの漏洩事故で子供百十七人を含む二百六十七人が被害を受け、うち死者十三人や多数の流産、がん、皮膚病、血液障害を引き起こしている。その教訓から米国では、Cortes法を制定、及び有害物質貯蔵許可条例の制定等の対策を講じ、企業側も地下タンクの廃止や二次容器の設置等を行つている。日本においても万が一にも事故が起きないとはいえず、しかもこれ以上の汚染の広がりを防ぐためにも、二重壁及び二次容器の設置と漏洩監視等を義務付けた消防法による危険物規制とおなじ安全対策を講じる必要があるのではないか。
二 法令の整備による排水規制及び使用抑制について
 1 六十年度の厚生省のトリクロロエチレン等による水道水源の水質基準を超える汚染状況調査によると、三十五の浄水場が取水停止及び十四の浄水場が処理導入の措置を行つている。厚生省は、五十九年に水道における暫定的な水質基準を講じているが、そもそも水道法による水質基準のなかに有機塩素系溶剤は含まれておらず水質検査等が不十分になつている。有機塩素系溶剤について法による規制を明確に行うべきではないか。
 2 地下水は、そもそも水質汚濁防止法の目的である「公共用水域の水質の汚濁の防止」という公共用水域の範疇に含まれていないので汚染に対する法規制がない。従つて、同法第十四条第五項は「排出水を排水する者は、有害物質を含む汚水等が地下にしみ込むこととならないよう適切な措置をしなければならない。」としているが、トリクロロエチレン等の物質は排水規制の有害物質に規定されておらず排水規制も水質基準もなく放置されたままになつている。法改正を行い排水規制及び水質基準を設定すべきではないか。
 3 昨年化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律が改正され、トリクロロエチレン等が指定化学物質に指定されたが、通産省の「トリクロロエチレン等適正利用マニュアル」にしたがつた指導にすぎず、実際に地下浸透の抑制及び排水系への流入防止が図られているのか疑問である。現実に高濃度で広範囲に検出されており、最終的には必要な限度において生産及び輸入量を抑制するしかないのではないか。そのためには環境庁の調査結果に基づき早急に第二種特定化学物質に指定すべきではないか。

 右質問する。





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