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昭和六十三年四月四日提出
質問第二二号

 沿岸漁場整備開発事業の実施に当つての構造物設計指針に定められたコンクリートの抗張力強度に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和六十三年四月四日

提出者  竹内 猛

          衆議院議長 原 健三郎 殿




沿岸漁場整備開発事業の実施に当つての構造物設計指針に定められたコンクリートの抗張力強度に関する質問主意書


 世界第一を誇つた我が国の漁業は、遠洋漁業においては、米国、ソ連及びその他関係沿岸国による厳しい漁業規制のもとで、外国二百海里水域での漁獲の権利を失い、漁獲の著しい減少を余儀なくされており、また、我が国沿岸水域においても水質の汚濁、埋立ての進行等により貴重な漁場を失つてきた。
 政府は、このような状況に対処するため、昭和四十九年に沿岸漁場整備開発法を施行し、沿岸漁場整備開発計画に基づく人工魚礁設置等の事業を実施することとした。
 その後、この計画は更新されたところであるが、私はこの間、人工魚礁構造の科学的・技術的発展を願い、また、安全性、耐久性、機能性、経済性等の面においても、国の補助事業に使用されるに足りる十分な人工魚礁が開発・普及されるよう願つてきた。
 このため、日頃から人工魚礁に関する技術的知見を有する専門家等との交流を進めてきたが、最近、専門家の間から、また設置現場から、人工魚礁の耐久性・安全性に関して疑問が提起されている。
 昭和六十三年度からは、第三次の沿岸漁場整備開発計画に基づく事業が実施されることとされており、緊急を要すると考える。
 従つて、次の事項について質問する。

一 沿岸漁場整備開発計画に基づき、現在まで沿岸漁場の整備のために投じられた総事業費、そのうち、人工魚礁設置のために投じられた事業費、並びに国と事業主体等が支出したそれぞれの経費の総額を明らかにせよ。
二 人工魚礁設置に関する計画の具体的内容とその実施状況を示せ。
三 第一次・第二次沿岸漁場整備計画に基づく人工魚礁の具体的設置場所及びその効果を明らかにせよ。
  また、この間に人工魚礁に関し会計検査院による査察が行われたか。行われたとするならばなにが指摘され、どのような改善措置を講じたか明らかにせよ。
四 国の予算支出の対象となる事業については、その事業に関し統一的な基準があるべきと考えるが、基本的な考えはどうか。
五 沿岸漁場整備開発事業の実施に関し、「沿岸漁場整備開発構造物設計指針 ― 昭和五十九年版 ― 」がある。これは、現在における水産土木技術の最高水準の知識を集めたもので、同事業の実施に当たつては、すべてこれに準拠すべきであると考えるが、本指針の性格と評価はどうか。
六 同指針の第四編、各論第一章、魚礁の一 ― 六部材強度Dは、コンクリートを部材とする人工魚礁の設計に当たつての強度計算として「コンクリートの抗張力計算」を記している。
  このことについて、人工魚礁の専門家は次のような見解を持つている。
  「コンクリートは、圧縮に強く、抗張力は小さい。特に海中で使用される人工魚礁のような製品は、設置時の衝撃力並びに海中に於ける外力を受けるため、コンクリートの抗張力計算がなされていないものについては、当然コンクリートのひび割れが発生し、海水により鉄筋が腐食膨張して、そのために人工魚礁が崩壊してしまうことは火を見るより明らかなことである。よつて、コンクリート強度の計算時においては、指針Dで規定しているように、最低限圧縮の十分の一の引張り強度を遵守すべきものである。」
  「コンクリート部材の設計法には、許容応力度設計法と終局強度設計法とがある。許容応力度設計法では、コンクリートなどの使用材料の許容応力度をこえることを許していない。換言すれば、部材の応力度がコンクリートなどの使用材料の許容応力度に達したときをもつて部材の破壊とみなしている。従つて、この方法で設計を行つた場合、コンクリートの引張許容応力度が圧縮許容応力度の十分の一のときに、部材の引張側にひび割れが発生するということになる。これは、非常に大変な計算ではあるが、海中の構造物に対しては、この位の設計は必要である。」
  「たとえ、鉄筋入りのコンクリート製品であつても、魚礁のような、大きな衝撃を受ける海中構造物は鉄筋にその働きを頼ること自体が無理で、まず、コンクリートの破壊を防ぐことが先決である。」
  以上のような見解に対し、農林水産省ほどのような考え方を持つているか。また、人工魚礁に係るコンクリートの抗張力問題についていかなる指導を行つてきたか示せ。
七 現在設置されている人工魚礁はすべて十分な抗張力強度が確保されているのか。設置されている人工魚礁にはコンクリートが崩れ落ち、錆びた鉄筋・鉄板等がむき出しになつているものがあるといわれている。万一、このような事態があるのであれば予算執行上問題があると考えるが、その改善策を示せ。

 右質問する。





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