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平成元年六月二十日提出
質問第三一号

 障害児の卒業後の社会参加の保障に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  平成元年六月二十日

提出者  岡崎万寿秀

          衆議院議長 田村 元 殿




障害児の卒業後の社会参加の保障に関する質問主意書


 障害者の「全面参加と平等」を実現することを目標とする「国際障害者の十年」は、すでに七ヵ年を経過しようとしている。
 ところが、文部省の「学校基本調査報告書」によれば、養護学校高等部卒業者の進路及び就職状況は、「国際障害者の十年」がスタートした一九八三年と昨年三月で比較すると、専修学校を含めた進学率は、一六・三%から七・五%に、就職率は三五・一%から三一・〇%にともに大幅に後退する一方、無業者が四八・五%から六一・五%に急増している。まさに「国際障害者年」のめざすべき方向に逆行する深刻な事態になっている。
 「自立した生活」、「社会への能動的な参加」という障害児・者とその家族の切実な願いに応えるために、実効ある施策を強化することが緊急に求められている。とりわけ、さまざまな困難をのりこえて障害児学校を卒業した子どもたちに社会参加への道を保障することは、今年十年を迎える養護学校の義務制を真に実りあるものとするうえでも極めて重要であると考える。
 従って、次の事項について質問する。

一 さきに示したとおり養護学校卒業生の進路状況は年々悪化しているが、政府は「国際障害者の十年」の期間において、養護学校卒業生の進路、社会参加への保障について、いかなる具体的な目標をもっているのか。
二 働く能力と意思、強い希望をもちながらも受入れ企業がないために就職を断念せざるをえなかった卒業生の事例が、毎春数多く報告されている。養護学校卒業生をはじめ障害者の自立と社会参加を促進するうえで、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づき、民間企業に障害者の雇用義務をきちんと達成させることが重要である。
 1 八八年の労働省調査によれば、一、〇〇〇人以上の大企業における障害者法定雇用率未達成企業は八〇・五%と平均の四八・五%を大きく上回っている。政府は、一九七五年一二月に障害者の雇用率が〇・五%以下の事業所一一五ヵ所を公表したことがあるが、これら大企業のうちいまだに障害者の雇用率が〇・五%にも満たない企業があるのか。また、もしあるとすればその企業数及び企業名を明らかにされたい。
 2 すべての民間企業が法定雇用率一・六%を達成した場合、新たに何人の障害者雇用が確保されるのか。八九年三月末現在で、全国の職業安定所に求職を希望している障害者は四七、四〇二人と聞いているが、大企業をはじめとする民間企業が法定雇用率を達成すれば、現在求職中の障害者のほとんどが、雇用への道をひらかれるのではないかと考えるがどうか。さらに、雇用率未達成の都道府県の機関が早急に達成するためにいかなる具体的方針をもっているのか明らかにされたい。
 3 政府は昨年法定雇用率をわずか〇・一%引き上げ一・六%としたが、ヨーロッパ諸国では最低のスペインにおいても法定雇用率は二%であり、イタリア一五%、西ドイツ、フランス六%、イギリス三%に比べ、我が国の法定雇用率は極めて低い水準にある。政府は五年ごとにこの見直しを行うこととしているが、雇用率のおもいきった引上げが必要であると考えるがどうか。
三 養護学校卒業生に就業の道を保障するうえで、民間企業とりわけ大企業における障害者雇用の促進とともに、障害の重度化、重複化に応えうる制度の確立が緊急の課題になっている。政府は、障害の重度化、重複化という新たな問題のなかでの障害者の雇用についていかなる責任をもち、どのように対応しようと考えているのか。
四 東京都障害児学校教職員組合の調査は、一九八八年三月の都内の養護学校高等部卒業生のうち肢体不自由児校では一七九名中六一名(三四・一%)、ちえおくれ校では六七五名中二一三名(三一・六%)の卒業生が民間のいわゆる小規模作業所に入所していることを明らかにしている。一方、共同作業所全国連絡会の「加盟作業所・施設第九次実態調査」は、小規模作業所(共同作業所)に通所している障害者の二九・八%を養護学校からの卒業生が占めていることを明らかにしている。これらの調査結果は、今日、無認可の小規模作業所が養護学校の卒業生の社会参加の場として大きな役割と位置を占めていることを示すものである。
 1 共同作業所全国連絡会は昨年、地方自治体等の協力を受け小規模障害者作業所等全国実態調査を行い、全国に二、二三一ヵ所の小規模作業所があることを明らかにしている。今日、無認可の小規模作業所に入所している障害者は、法定の通所型授産・更生施設の入所者数をうわまわるまでにいたっていると思われるが、政府は、こうした小規模障害者施設の果たしている役割についてどのように認識しているのか。
 2 政府は、一九八七年度から従来の精神薄弱者通所援護事業に加えて、身体障害者並びに精神障害者を対象とした小規模作業所への助成を制度化し、今年度より助成額を若干引き上げた。しかし、一施設当たり年間八〇万円という補助額は「すずめの涙にもみたない」というのが、小規模作業所をささえる家族、職員、ボランティアの共通の声である。政府は補助単価を決定するに当たり、小規模作業所がその運営に必要とする予算を年間いくらくらいと把握しているのか。
 3 補助単価とともに対象施設数が実態と大きくかけはなれたものになっている。小規模作業所に対する補助対象施設数は、身体障害者・精神障害者・精神薄弱者の三つの制度をあわせて、今年度予算化されたのは六一七ヵ所分しかなく、二、二〇〇ヵ所をこえる小規模作業所のわずか四分の一である。仮に平均的に交付されたとして、国の補助を受けられるのは四年に一度ということになる。国会では衆・参両院において「小規模作業所に対する国庫補助制度については、これを拡充し、その交付に際しては一定の要件を満たしたすべての小規模作業所を対象とする」請願が採択されているが、この主旨に従い制度の抜本的拡充を速やかに行うべきと考えるがどうか。
五 小規模作業所をはじめ法定の認可施設においても、そこで働く障害者のための仕事の確保は、八〇年代後半の円高以降いっそう困難な状況にある。
 1 身体障害者福祉法第二十五条は、障害者施設で作られた製品について官公庁が優先して購入することを趣旨として設けられた条文であると理解するが、本法施行以来今日までに指定した法人数、それらに対する官公需の発注実績を明らかにされたい。
 2 一昨年の「障害者の雇用の促進等に関する法律」への大幅な改正の経過を踏まえても、官公需の優先発注が、身体障害者施設に限られ、精神薄弱者や精神障害者の授産施設が除外されていることは、不合理なことと考えるがどうか。
 3 同条に基づく政令で定められている購買物品は、「ほうき、はたき、ぞうきん、モップ、清掃用ブラシ及び封筒」に限定されている。しかも一九四九年の本法制定以来四十年間、これらの品目は、いっさい変わっておらず、時代のニーズともかけはなれたものとなっている。神戸市では、精神薄弱者を含めた特別雇用制度を確立し、公園清掃などの分野でも障害者の優先雇用を行っているが、こうした事例も踏まえ、再検討すべきと考えるがどうか。
 4 また、少なくない小規模作業所が、金額としては少ないものの公共施設の清掃・管理、クリーニングやデータ処理などを受注し、実績をあげているが、政府は、こうした実情もより具体的に把握し、小規模作業所や法定の認可施設への官公需の優先発注をはじめ、仕事確保のために努力すべきであると考えるがどうか。
六 ILOは、一九八三年に「職業リハビリテーション及び雇用(障害者)に関する条約」を採択している。障害者の社会参加を拡大するうえで同条約の早期批准が求められるが、政府は「国内法体制の未整備」を理由にいまだこれを批准していない。政府は、いかなる条件が整えば同条約を批准するのか。また、いつまでに批准することを目標にしているのか明らかにされたい。

 右質問する。





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