衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成二年六月二十二日提出
質問第一三号

 トリブチルスズ化合物の規制に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  平成二年六月二十二日

提出者  新村勝雄

          衆議院議長 櫻内義雄 殿




トリブチルスズ化合物の規制に関する質問主意書


 船底塗料などに用いられているトリブチルスズ化合物(以下「TBT化合物」という。)について欧米では使用禁止等の規制がすでに行われてきている。しかしながら我が国においては、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(以下「化審法」という。)によってビス(トリブチルスズ)=オキシド(以下「TBTO」という。)だけが第一種特定化学物質に指定され、その製造、輸入、使用が全面的に禁止されたものの、その他のTBT化合物十三種については未だに指定化学物質のままである。即ち、TBTO以外のTBT化合物十三種はその製造、使用が禁止されておらず、実質的には野放し状態にある。TBTOとその他のTBT化合物とをなぜ別々に分けて規制するのか、その根拠となる資料の提出を私は再三求めてきた。昨年秋の臨時国会開会中にこの件に関する質問主意書を二度提出し、今国会においても去る六月十四日の衆議院決算委員会の場で質問したが、私の求める明確な回答は得られていない。
 そこで改めて質問する。次の事項に明確かつ詳細に答えられたい。

一 十四種のTBT化合物について行った魚類蓄積性試験の結果について、個々のTBT化合物毎に、(一)試験時期(その期間の年月日)、(二)試験実施機関名、(三)具体的かつ詳細な試験方法、(四)具体的かつ詳細な試験結果、(五)「化審法」上の取扱い(例えば高蓄積性、中蓄積性など)の判断基準となる数値及びその根拠、またこれらに関連して通産省の関知するもの全てを明らかにされたい。
二 十四種のTBT化合物のうちTBTOだけが「高蓄積性」と判定され、現在、第一種特定化学物質に指定されている。TBTOだけが「高蓄積性」と判定された根拠となる具体的かつ詳細な試験結果及びその判断基準を示されたい。また、「高蓄積性」の判断基準は何を根拠にしてどのように定められたのか。
三 「高蓄積性」の判断基準はその蓄積性が一〇〇〇〇倍(濃縮係数が1OOOO)以上かどうかであると聞いているが、これは事実か。また、そのように判断基準を定めた根拠は何か。
四 去る六月十四日の衆議院決算委員会における私の質問に対し、通産省化学品安全課が六月十五日付で届けた資料によれば、トリブチルスズ=ヒドロキシド(以下「TBTOH」という。)0.4μg/1溶液中でコイを八週間飼育したときのコイへのTBTOHの蓄積率(濃縮係数)は8280〜9210であり、一方、TBTO0.4μg/1溶液中では8230〜8580であるとされていた。この結果を見ると、TBTOHはTBTOと同程度かやや上回る蓄積性を有している。厳密に言えば、試験に用いられたコイの脂質含有量の差の補正がなされていない点、TBTOHの蓄積性においてみられる濃度依存性、八週目の時点でもその蓄積性は平衡に達していない点など、この蓄積性試験には問題点が少なくないのだが、いずれにせよこのような試験結果からTBTOだけが「高蓄積性」であると言えるのか。人体への跳ね返りを考えると、TBTOだけが「高蓄積性」という判定は人の健康への影響を軽視した姿勢ではないか。また、TBTOHは指定化学物質にも指定されていないが、これはなぜか。
五 欧米ではTBTOとその他のTBT化合物とを分けずに、ひとまとめにTBT化合物として使用禁止、販売禁止などの規制を行っている。一方、我が国では通産省がその「蓄積性」に差があるとしてTBTOとその他のTBT化合物とに分けて規制を行っている。ところが、去る六月十四日の衆議院決算委員会における私の質問とそれに対する通産省の答弁から、両者を別々に分けて規制する明確な根拠は存在しないものと考えられた。この件についてはいかがであろうか。こうした解釈に問題があるかないか、具体的な根拠となる資料を提示しながら答弁されたい。特に、両者を別々に分けて規制する明確な根拠が存在すると言うのであれば、一との関連において、その根拠となる全ての試験結果を具体的かつ詳細に示されたい。
六 運輸省に問う。TBTOとその他のTBT化合物とを別々に分けて扱い、規制する「根拠」がなくなったとき、即ち、通産省がこれらを分けて規制する「根拠」があいまいであることが明らかになったとき、TBT化合物を含んだ船底塗料を使用する側の監督官庁としてどのように対応するか、答えられたい。
七 農林水産省に問う。水産生物に対してはTBTOだけでなく全てのTBT化合物が極めて毒性が強いと考えられている。TBTOとその他のTBT化合物とを別々に分けて扱い、規制する意味があると考えるか。その根拠とともに答えられたい。また、通産省がこれらを分けて規制する「根拠」があいまいであることが明らかになったとき、運輸省同様、TBT化合物を含んだ船底塗料を使用する側の監督官庁として、また一方で、水産資源に対する悪影響という被害を受ける側の監督官庁としてどのように対応するか、答えられたい。
八 環境庁に問う。生物モニタリング調査の中では、TBTOとその他のTBT化合物とを別々に分けずにひとまとめにTBT化合物による汚染として扱っているはずである。個々の化合物毎に分析・測定することが現時点では不可能であり、また環境や生物への悪影響という点では、これらを別々に分けて考えることにほとんど意味がないことによるのではないのか。現在のようなTBTOとその他のTBT化合物とに分けた規制は、国際的な潮流に逆行するとともに環境行政として片手落ちになるのではないか。環境庁としての考え方を示されたい。また、通産省がこれらを分けて規制する「根拠」があいまいであることが明らかになったとき、環境庁としてどのように対応するか、答えられたい。
九 厚生省に問う。魚介類の汚染を通してやがて人体にもそれが跳ね返って来るという点では、TBTOもその他のTBT化合物も汚染物質として、また毒性の点で同じではないのか。TBTOだけでなくその他のTBT化合物も併せて規制すべきではないか。
十 「化審法」に基づく魚類蓄積性試験ではコイという淡水魚を用いて真水で蓄積性試験を行い、その結果からその化学物質の蓄積性について判断・評価が行われている。こうして現在、「高蓄積性」のTBTOと「中蓄積性」のその他のTBT化合物とが別々に分けて規制されている。しかるに、TBT化合物による汚染問題は海洋汚染問題である。前記の質問事項から現行の魚類蓄積性試験についても問題点が少なくはなく、明らかにされるべき点が多いことがわかるが、本質的に淡水魚の試験結果が現実の海洋汚染問題に対処する上でどの程度役に立つのか。マダイを用いた蓄積性試験では、海水からマダイへのTBTの濃縮係数が10000を超えるとの報告があり、また、実際の海域に生息する天然魚介類(スズキ)では、海水からのTBTの濃縮係数が90000であるとの報告がある。現実の海洋汚染の実態と「化審法」上の判定・評価とのズレの大きさを認めよ。そしてこのズレを埋めるために法体系について、また現実にこの問題を解決するためにそれぞれ政府としてどのように対応するか、具体的かつ明確に答えられたい。

 右質問する。





経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.