答弁本文情報
平成二年七月十七日受領答弁第一三号
内閣衆質一一八第一三号
平成二年七月十七日
衆議院議長 櫻内義雄 殿
衆議院議員新村勝雄君提出トリブチルスズ化合物の規制に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員新村勝雄君提出トリブチルスズ化合物の規制に関する質問に対する答弁書
一及び二について
十四種類のトリブチルスズ化合物(以下「TBT化合物」という。)のうち、ビス(トリブチルスズ)=オキシド(以下「TBTO」という。)については同化学物質を被験物質として用い、また、TBTO以外のTBT化合物十三物質については、基本的にはそれらの水中変化物である水酸化トリブチルスズを用いて、濃縮度試験が実施されている。
試験時期は、TBTOに係る濃縮度試験については昭和五十九年十月一日から昭和六十年三月二十六日までの期間であり、水酸化トリブチルスズに係る濃縮度試験については昭和六十年一月二十五日から同年三月二十六日までの期間である。
試験実施機関は、財団法人化学品検査協会である。
試験方法については、新規化学物質に係る試験及び指定化学物質に係る有害性の調査の項目等を定める命令(昭和四十九年総理府・厚生省・通商産業省令第一号)等によって定められている魚介類の体内における化学物質の濃縮度試験の方法を用いており、当該方法は、経済協力開発機構(OECD)が公表している化学物質テスト・ガイドラインにも合致しているものである。
これらの試験の結果は、厚生省生活環境審議会及び通商産業省化学品審議会において、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(昭和四十八年法律第百十七号。以下「化審法」という。)の上で、TBTOについては生物の体内に蓄積されやすいものであり、TBTO以外のTBT化合物についてはそれに該当しないものであるとの判定を受けている。なお、このような判定は、化審法の立法趣旨が、ポリ塩化ビフェニル(以下「PCB」という。)による環境汚染等に類似した問題の再発を防止するものであることにかんがみ、PCBの濃縮度との比較考量によって得られたものである。
一及び二についてにおいて述べたとおり、生物の体内に蓄積されやすいものであるか否かの判定は、PCBの性状との比較考量によって行われており、御指摘の濃縮倍率が一つの目安となっている。
TBTO等の蓄積性については、一及び二についてにおいて述べたとおりの判定を受けている。
化学物質の人の健康への影響については、化審法上は、生物の体内に蓄積されやすいものであるか否かとは別に、当該化学物質が継続的に摂取される場合に人の健康を損なうおそれがあるか否かの観点から判断することとされており、PCBと類似した蓄積性を示さないものであっても、継続的に摂取される場合に人の健康を損なうおそれがある化学物質に該当する疑いのあるものについて指定化学物質として指定する等必要な措置を講じることとしている。したがって、TBTO等の蓄積性の判定が人の健康への影響を軽視した姿勢であるというようなことはない。なお、TBTO以外のTBT化合物十三物質については、既に指定化学物質に指定されているところである。
また、水酸化トリブチルスズは、他のTBT化合物から水中での変化物として生成することはあるものの、製造され、又は輸入された実績がなく、化審法に基づく既存化学物質名簿にも収載されていないため、同化学物質自体は、化審法に基づく指定化学物質に指定されていない。
TBTO等の蓄積性については、一及び二についてにおいて述べたとおりの判定を受けている。
TBT化合物を含有する船底塗料の取扱いについては、化審法に基づきTBT化合物を審査した省庁の判断を踏まえ対処しており、TBT化合物を含有しないもの又は低含有率のものを使用するよう指導しているところである。
TBT化合物の取扱いについては、化審法を所管する省庁の判断を踏まえ対処しており、従来から、漁船の船底塗料については、TBT化合物を含有しないもの又は低含有率のものを使用するよう指導しているところである。
環境中のTBT化合物の測定に当たっては、個々のTBT化合物を分離し、測定することが極めて困難であることから、生物モニタリング調査では全TBT化合物として分析しているところである。化審法上は、TBTOとその他のTBT化合物とに分けて規制しているが、その根拠は一及び二についてにおいて述べたとおりである。
TBTO以外のTBT化合物については、TBTOのような高蓄積性は認められなかったものの、TBTOと同様な毒性を有する疑いがあると認められ、継続的に摂取される場合には人の健康を損なうおそれがある化学物質に該当する疑いがあることから、化審法に基づき指定化学物質に指定したところである。
化学物質の濃縮度試験における試験魚の設定は、多数の化学物質の濃縮度試験を順次早急に実施するとともに、蓄積性を客観的に判定するため試験条件を標準化する観点から必要なものである。経済協力開発機構(OECD)においても、淡水魚を用いた濃縮度試験の方法をテスト・ガイドラインとして公認しており、我が国においても、新規化学物質に係る試験及び指定化学物質に係る有害性の調査の項目等を定める命令等により化学物質の濃縮度試験に淡水魚であるコイを用いることとしている。
TBT化合物の海洋汚染問題については、化審法上は、既に指定化学物質に指定されているTBT化合物十三物質について、環境での残留状況や長期毒性からみて必要な場合には第二種特定化学物質に政令指定し、所要の規制措置を講じていくこととしている。また、政府としては、今後ともTBT化合物による海洋汚染状況を監視するとともに、TBT化合物を含有する船底塗料等について、その製造、使用等の面で、環境汚染を防止するためのマニュアルの普及、製品中のTBT化合物の含有率の低減、可能な限りの使用の自粛等を指導することとしている。