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平成三年一月十六日提出
質問第四号

 国土利用計画法の運用等に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  平成三年一月十六日

提出者  辻 第一

          衆議院議長 櫻内義雄 殿




国土利用計画法の運用等に関する質問主意書


 一九八七年五月、リゾート開発推進のための「総合保養地域整備法」が成立して以来、全国各地で大規模なゴルフ場開発が進められている。奈良県においても、全村面積の十パーセントを超える山添村を始め、奈良市、吉野郡などで同様の事態が進行している。奈良県生駒郡平群町においては国土利用計画法違反の疑いを持ち、周辺住民の生活に重大な悪影響を及ぼす開発計画、すなわち、御堂開発株式会社が計画しているゴルフ場開発が、圧倒的多数の町民の反対にもかかわらず業者と町及び県当局によって強引に進められようとしている。
 そこで、この問題点について以下のとおり質問する。

一 国土利用計画法第二三条の土地に関する権利移転等の届出の運用について
  国土利用計画法の運用に当たっては、土地の投機目的による取引に規制を加え、地価の異常ともいえる高騰を抑止し、国民生活の安定を図るとともに、土地利用計画の策定と公共的な土地利用の確保を進めることが緊急に求められている。
  ところで、国土利用計画法第二三条は、土地売買の契約を締結するに際して所定の事項につき、市町村長を経由して都道府県知事への届出を定めている。そして、第二四条でその届出に係る土地取引について売買予定価格及び土地利用目的の審査を行い、第二三条の届出の内容が不適切である場合、勧告を行うものとしている。これらの規定に従い、届出を受け、審査の結果、勧告を行ったとしても、その勧告に従うか否かは届出者の判断にまかされており、勧告に従わない場合は公表という処置しかなく、その土地取引を規制し得るものとなっておらず、国土の土地利用計画の遵守及び地価高騰の抑制について、何ら実効性のないものとなっている。また、第二三条の規定に反して、当該届出を行わず、土地取引をなす者が見られる。
  これらの者を放置することは、国土利用計画法の趣旨に反するもので、断じて容認しがたいものである。
  そこで、伺いたい。
 1 国民共通の財産と言える国土の適正な利用を確保し、地価高騰を抑制するため国土利用計画法の改正強化が求められていると考えるが、政府の見解を伺いたい。
 2 勧告に従わなかった場合の措置、あるいは、法に違反する無届けの場合の措置等について、現行法のままでは、国土利用計画法の実効性を担保し得ないものと考える。法に違反する無届けの場合などには、その土地取引を無効とするなど、真に実効性ある規制措置をとる必要があると考えるが、政府の見解を伺いたい。
二 奈良県平群町における御堂開発株式会社の土地取引をめぐる国土利用計画法違反の疑いについて
  一九八六年五月頃、御堂開発株式会社の代理人である北和開発株式会社から、奈良県生駒郡平群町櫟原・鳴川両地区にまたがる御堂開発株式会社のゴルフ場開発予定地の土地買収に係る国土利用計画法の届出が平群町に提出された。この届出の内容が、御堂開発株式会社のゴルフ場開発予定地の用地買収に関わるものであり、その中に自然公園第三種特別地域が含まれていたことなどから、「県の事前協議」との兼ね合いを考慮して、平群町計画課(担当課)は、奈良県開発調整課と連絡をとり、指導を仰いだ。何らかのやりとりがあったが、結局指導らしき指導もないまま時間が経過し、平群町は、その後に北和開発株式会社を通じ、同届出書面を返却した。
  一九八七年五月頃、御堂開発株式会社から再びゴルフ場予定地の用地買収に係る国土利用計画法の届出がなされた。この届出の内容は、ほとんどが農地の買収に係るものであったため、平群町は「農地の売買は農地法の規制対象である」との説明を行い、「届出書面は受け付けられない」旨回答した。これ以降、何らの届出がなされないまま用地買収が、御堂開発株式会社によって進められた。
  一九九〇年四月四日、御堂開発株式会社から平群町に提出された「対応状況報告書」(ゴルフ場開発にかかる平群町の審査・事業部の指摘事項に対する回答書)の中で、同社は「国土利用計画法の届出は行います」としているが、これによれば、その時点では「届出している」とはしておらず、「届出を行います」としているのである。しかし、今日まで国土利用計画法の届出はなされないまま経過している。
  そこで、伺いたい。
 1 このような経過について、国土庁は「無届けとは言えない」との見解を示しているが、業者自身が将来「届出を行います」と言っている以上「正式な届け出はなされていなかった」と見るのが正しい認識だと考えるが、どうか。
 2 当時の「県の担当課長が死亡している」から、その当時の事情がわからない、と国土庁は説明しているが、この問題に対応したのは当時の課長だけでなく、県として組織的に対応しているのだから、当時の対応の内容を事実に基づいて明らかにしていただきたい。
 3 平群町の当時の担当課長が「国土利用計画法に習熟していなかった」と国土庁は説明しているが、もし、そのとおりであるならば、他の届出もミスが生じているはずである。他に同様の事例があったのかどうか、明らかにしていただきたい。
 4 また、届出が受理されず、返却された後、用地買収を進めた(昨年十一月時点では、予定地の七十パーセント以上を買収済み)御堂開発株式会社の責任が免罪されるものではない。御堂開発株式会社は建設大臣の免許を持つ宅地建物取引業者であり、国土利用計画法の規制は十分承知していなければならないものである。承知していながら、届出書面が返却されたのをよいことにして、用地買収を進めたのならば、このような行為は国土利用計画法の精神に反するものと考えるが、政府の見解を伺いたい。
 5 国土庁は、「届け出がなされたものと見なさざるをえない」としているが、一回目と二回目に出された届出と称するものの中身について伺いたい。この業者の総ての用地買収に係る土地取引内容がその中に網羅されていたのかどうか、明らかにしていただきたい。
 6 国土庁は御堂開発株式会社の当該土地取引について、「国土利用計画法に違反しているとも、違反していないとも、どちらとも言えない事態」との判断しか示していない。しかも「御堂開発株式会社の件は、県が事後チェックする」「国土利用計画法の届け出がなされたものとして、その後の指導のルールに乗せる」「土地買収の契約内容についても調べる、など国土利用計画法上の指導を行う」としている。どのような指導を行ったのか、明らかにしていただきたい。
三 奈良県の国土利用計画法運用上の問題点について
  奈良県は、「平群町当局および御堂開発株式会社の双方から数回にわたり事情を聴取した」としている。その結果、「法第二三条の届け出書面らしき物がその当時存在したと見られる。当該届け出書面らしき物は、約三か月程度過ぎてから後、平群町当局から御堂開発株式会社へ返却された。これらのことから、法第二三条の届け出について、外形上なされた形跡があり、『無届け』とは断定できない。また、当時平群町当局から奈良県担当課に相談があったかどうかを含め、その内容や対応については具体的に把握できない」としている。さらに、平群町当局が六週間以内に処理しなかった理由も、奈良県当局がどのように指導したかも不明であるとして、奈良県としては、御堂開発株式会社の土地取引について、国土利用計画法第二三条に反するのかどうか判断しなければならず、この件については「『無届け』ではなく、『届け出』があったと判断する」としている。これは御堂開発株式会社が当時の「届け出書面」らしきものに、「当該土地取引にかかるすべての内容が記載されている」とする業者側の主張を無批判に容認するものとなっている。しかも、奈良県当局は「御堂開発株式会社からの『土地リスト』と契約書、登記簿謄本との照合を行った」としている。そして「買収価格についても検討した」として「推定できる内容としては、その当時として妥当な価格という判断が下せる」としている。
  そこで、伺いたい。
 1 「『届け出書面』らしきものがあった」としているにもかかわらず「現在当該書面は行方不明で存在しない」としている。御堂開発株式会社から出された「土地リスト」の内容と同社が出したと称する「届け出」の内容とが照合するのかどうか、明らかにしていただきたい。
 2 業者の土地取引価格は、同社が申告した特別土地保有税の内容から逆算して、平均三・三平方メートル当たり五万円という常識を逸した価格である。現地周辺の土地取引の実態に照らして、とても妥当な価格と言えないと考えるが、妥当とした根拠を示していただきたい。
 3 奈良県は、受理窓口である市町村から指導を求められたにもかかわらず、受理に際しての指示、あるいは不受理通知の発行、不受理に際しても「届け出書面」を返却しないことなど、何ら具体的に適切な指導もなさず、機関委任事務を担当する奈良県自身の責任を回避している。「国土利用計画法の届け出は本来受理すべきもので、これを受理しなかったのは行政側の手落ち」と言うなら、それは県知事が負うべき責めである。「平群町が受理しなければならなかったものを受理しなかったことがこの件の発端」と言うのならば、それは奈良県が適切な指導を行わなかったことから生じた問題である。このことは、本年十一月の平群町議会総務委員会での町長答弁によっても「町に手落ちはない、担当課長の責任もない」と確認されている。これら奈良県の態度は、国土利用計画法の運用につき、問題点があったことを示していると考えるが、政府の見解を伺いたい。
四 以上の経過と問題点について
  政府は、御堂開発株式会社の国土利用計画法違反の疑いについて、前述した経過と問題点に照らして、再度厳密に調査し、政府として厳正な措置を講ずるべきだと考えるが、政府の見解を伺いたい。また政府として、国土利用計画法の運用を機関委任している県知事に対し問題点を正し、厳正な指導を行うべきだと考えるが、政府の見解を伺いたい。

 右質問する。





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