衆議院

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平成三年十月四日提出
質問第一一号

植物新品種の保護に関する質問主意書

提出者  吉田正雄




植物新品種の保護に関する質問主意書


 今年三月の「植物の新品種の保護に関する国際条約」(UPOV条約)の条約改正外交会議において、新条約案が採択されたことにより、同条約に対応する関係国内法の改正も必要となり、種苗法改正案提出の予定も伝えられている。
 バイオテクノロジーは、近年飛躍的な展開をみせ、さらに二十一世紀には技術革新の中核分野になるものと予測されており、国際的にも我が国における進歩への評価が急激に高まりつつある。そしてこの進歩を持続させるためには、育成者の権利の保障が不可欠であることは言を待たない。
 従来、UPOV条約や品種登録に関連する国会審議の場で、知的所有権と品種登録の関係を円滑に調整し、二重行政の弊を回避すべきことが再三強調されたが、現状は必ずしも満足すべきものとは言えない。UPOV条約改正の機会に従来の経過を総括し、その到達点を明確にするとともに、問題点を整理し、解決の方向を発見することが緊急の課題である。
 以上の観点から、次の事項につき政府の所見を質すものである。

一 この際、次の各項について政府の見解を明らかにされたい。
 1 衆議院議員川俣健二郎君提出植物新品種の保護に関する質問に対する昭和五十三年三月二十四日付け答弁書において、政府は、当時農林省が整備を進めつつあった制度、すなわち種苗法において、育成者の地位については知的所有権に属しないようなものとして構成する方向で検討中である旨答弁した。その後成立した種苗法において品種登録に関する条項には「権利」なる用語は使用されず、従って、法的権利の創設ではないと解さざるを得ない。行政当局も、これを行政処分である登録の反射的利益から生じる財産的状態と説明したことがあるが、種苗法の品種登録に伴う育成者の地位が、今日においても、知的所有権のカテゴリーに属する権利でなく、品種登録の反射的利益に関するものであることを再確認されたい。
 2 農林水産省が設置したバイオテクノロジー成果物保護研究会が平成二年九月に公表した報告書は、「バイオテクノロジー成果物保護研究会は、バイオテクノロジーの進展に伴い生じている植物分野の知的所有権による保護の問題点の解決方策についての検討を進めるとともに、これに即してUPOV条約改正案への対応と種苗法の改正方向についての検討を行うこととした」と述べ、さらにその全体を通じて種苗法の品種登録制度を植物品種保護制度としてそれを知的所有権になぞらえることを示唆する表現が随所にみられる。農林水産省は、内閣における如何なる調整を経ていつから品種登録制度を知的所有権に属するものとして扱うことにしたか。かりにそれが知的所有権に属さないものと解しているとするならば、自己の機関の所管外の知的所有権の問題を私議する国家行政組織法上の根拠を問う。
二 農産種苗法一部改正案に対する昭和五十三年六月十六日の参議院農林水産委員会の審査において、政府は植物新品種の特許が稀であろうとの予測に基づき特許権と品種登録の効果との間に調整規定を置かなかったとされたが、同時に種苗法第十二条の五第二項第五号に規定された方法特許の優越性からの「もちろん解釈」により植物新品種の特許権の効力が品種登録に優越するとの趣旨の答弁がなされた。その後、制定法においても、解釈においても、前記答弁の変更はなされていないので、その趣旨は今日なお有効なものと思料されるが、その点確認されたい。
三 UPOV条約第二条第一項は「同盟国は、この条約に定める育成者の権利を、特別の保護の制度により又は特許を与えることにより承認することができる。国内法によりこれらの二の方式の双方による保護を認める同盟国においては、同一の種類の植物の保護は、一の方式により行われなければならない」旨規定した。そして特許法第二十六条は「特許に関し条約に別段の定めがあるときは、その規定による」旨規定し、同法第四十九条において、拒絶査定の根拠となる条項にも同旨の規定がおかれている。
 昭和五十七年四月九日の衆議院外務委員会において、条約の保護の対象、態様と特許法の保護の対象、態様とが異なるので、UPOV条約は特許法に規定する条約に該当しない旨の答弁があり、それが主管官庁たる特許庁の有権解釈として、昭和五十九年三月二日の衆議院予算委員会の質疑において内閣法制局長官も再確認したものである。
 条約と特許法との適用関係における前記解釈は、現時点においても変更はないか。変更がなされたならば、その時期、内容および如何なる手続きによりなされたかを明らかにされたい。
四 昭和五十一年に「よもぎ新品種に属する植物」が出願され、植物新品種に関する特許権が成立し、稀ではあるが理論的にあり得るとされたものが、現実のものとなった。
 ところで条約の前記規定では、「同一の種類の植物の保護は、一の方式により行われなければならない」旨規定し、種苗法の規定によりよもぎに関する重要な形質の決定と公示が既になされている。前記よもぎの特許権の設定がUPOV条約第二条に違反するものとされない法律上の根拠は、品種登録が国内法上は登録の反射的効果による財産的状態であって、法的権利に属するものでないことにより、法律上の権利として競合しないことによるものと解してよいか。
五 バイオテクノロジーの発展により、植物新品種の発明に新たな技法が開発され、特許の対象も昭和五十年に策定された植物新品種に関する審査基準で想定されなかった領域に広がり、生物に関する自然法則の理解も大きく変革された。そのことにより審査基準も従来のメンデルの法則に基づくものから、メンデル則を包含してより高次の生物の遺伝法則に基づき、産業の現状と将来の発展に寄与し得るものに改定すべき時期に到達したとみられるが、行政当局の見解と対策を問う。
 また現行審査基準の運用に関して、一部に効果の判断をきわめて高い水準に設定し、事実上メンデル育種がほとんど特許されない事態にあるとの見解もあるが、現行の「植物新品種」に関する審査基準は、メンデル育種の領域に関する限り、その創作性と明細書の記載要件に関する基本的立場を変更する必要がなく、参考資料として示されたメンデル育種に関する発明の例示が今日なお有効に機能するものと思料されるが、政府の見解を問う。
六 知的所有権は、例えば世界知的所有権機関設立条約において法律用語として確立されているが、知的財産権と知的所有権との法的概念における差異点を明示し、通商産業省産業政策局に設置された知的財産政策企画官の所掌事務につき、工業所有権の専管官庁である特許庁との権限の区分と分担をその法的根拠を含めて示し、この両機関が二重行政の弊を生じないようにするための対応策につき、具体的に説明されたい。

 右質問する。



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