衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成三年十二月四日提出
質問第二号

福島県東白川群塙町におけるフィリピン人女性ダンサー死亡に関する質問主意書

提出者  志賀一夫




福島県東白川群塙町におけるフィリピン人女性ダンサー死亡に関する質問主意書


 去る九月十四日、福島県東白川郡塙町のナイトクラブで働いていたフィリピン人女性ダンサーが死亡した。その死因について、フィリピンでは、連日、マスコミが「暴行による虐待死」として報道し、人権擁護団体等が在比日本大使館に抗議のデモを行うなどフィリピン中を揺るがす「大事件」となっている。このため、先頃、フィリピンのトーレス労相が事実調査のため来日したほか、フィリピン政府は、我が国への女性の出稼ぎを実質的に禁止することを決定するなど、今後の日比関係に悪影響を及ぼしかねない事態となっている。
 よって、以下の点について質問する。

一 死亡したフィリピン人女性ダンサーの死因については、フィリピン法務省国家捜査局(NBI)の検視解剖報告書は、「死因は頭部の外傷」によるものとし、また、検視に当たった医師も暴行・虐待による死亡を示唆している。一方死亡したダンサーの治療に当たった塙厚生病院は、「死因は劇症肝炎であり、病死である」としている。また、関係者からの事情聴取を行った福島県警棚倉署では、死因を「劇症肝炎」とした病院側の死亡診断書に不審な点は認められなかったとしている。さらに、同じナイトクラブで働いていた十数人の同僚フィリピン人女性も伝えられるような暴行や虐待の事実を否定している。
  先日、事実調査のため来日したトーレス労相は、病院側の説明に大筋で同意したものの、その死因についてはまだ不明の点が残るとして、関係データを本国に持ち帰る一方、我が国の捜査当局に対しては捜査の再開を申し入れている。以上の如く、その死因については、日比両国関係者の見解が対立したままとなっている。
  最近、フィリピン側の検視解剖報告書等を分析した我が国の専門医等の判断によると「病死」の可能性が濃厚となっているものの、いまだ明確な結論が得られていないのが現状である。
  本件が国際問題化していることに鑑み、政府においては、「死因」についての真相解明を行い、フィリピン政府の疑念を払拭することが肝要と考えられるが見解を明らかにされたい。
二 フィリピン政府は、去る十月十六日、福島県を「問題地域」として挙げ、福島県へのフィリピン人の出稼ぎを禁止する措置をとり、さらに、十一月二十日にはフィリピン人女性の我が国への出稼ぎを実質的に禁止することを決定した。
  福島県は、以前より、フィリピンからの農業技術研修者の受け入れを行うなど日比両国の親善交流を推進してきておるところであり、今回の一方的措置は、内外の福島県に対するイメージを著しく損ね、誠に遺憾と言わざるを得ない。ことは、一地方自治体である福島県の問題にとどまらず我が国の名誉と国際的信用にかかわる問題と考えられる。
  フィリピン政府によるこれら一連の措置に対し、政府の見解を明らかにされたい。
三 本件に関して、フィリピン国内において予期せざる感情的反発が起きた背景には、我が国で働く外国人労働者、とりわけアジア諸国からの「出稼ぎ女性」に対する我が国社会における偏見と差別、それに伴う人権上の問題、彼女等をとりまく劣悪な労働環境と労働内容、そしてこれらの問題に対する我が国の行政の立ち遅れ等への不満、苛立ちがその根底にあるものと思われる。
  今後も、拡大する経済格差を背景に、深刻な労働力不足に悩む我が国と就労の場を求めて海外への流出圧力を強めるアジア諸国という構造が変わらない限り、我が国への外国人労働者の流入はますます強まるものと思われ、外国人労働者をめぐる様々な問題が起こることが予想される。
  我が国は経済大国と言われるようになり、国際国家として政治的にもより以上の責任と役割を求められるようになってきており、特に近隣アジア諸国との関係では、外国人労働者問題にどのように対処していくかは極めて重要な課題となっている。
  この際、特に外国人労働者の人権保護についての政府の見解を明らかにされたい。

 右質問する。





経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.