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平成三年十二月二十日提出
質問第八号

植物新品種の保護に関する質問主意書

提出者  吉田正雄




植物新品種の保護に関する質問主意書


 私が平成三年十月四日に提出した「植物新品種の保護に関する質問主意書」に対して同月二十二日付けで政府が提出した答弁書の内容も含め、本件について重ねて政府の見解を問うため、次の事項につき質問する。

一 政府は、表記答弁書において「品種登録により与えられる育成者の法的地位はいわゆる反射的利益というものではない。」旨述べているが、昭和五十三年五月三十日の本院農林水産委員会における松沢俊昭委員の質問に対して、新井説明員は、「今回の登録制度、これは品種を育成した者に認めるわけでございまして、これは種苗法という行政取り締まり的な法規によって認められる……新品種の育成をした者に対しまして、登録をする、その登録の反射的な利益といたしまして、一定の特権的な利益を与える」旨答弁し、また、同年六月十三日の参議院農林水産委員会においては、丸谷金保委員の質問に対して小島説明員が、「この登録によって与えられます地位というのは、この法律の中におきまして第三者がその許諾を得なければ勝手に有償譲渡ができないというふうな禁止規定を置いたことのいわば反射的な効果として、ある種の経済的な利益が本人に確保されると、こういう仕組み……」と答弁している。
 1 政府の表記答弁書における回答は、昭和五十三年当時の国会におけるこれらの答弁と全面的に矛盾するが、国会における当時のこの説明は誤りであったか。
 2 表記答弁書の、育成者の法的地位が登録の反射的利益というものではないとする見解は、いつ、いかなる手続きにより、いかなる機関が決定したものか。
二 衆議院議員川俣健二郎君提出植物新品種の保護に関する質問に対する昭和五十三年三月二十四日付け答弁書において、政府は、当時農林省が整備を進めつつあった制度、すなわち種苗法において、育成者の地位については知的所有権に属しないようなものとして構成する方向で検討中である旨回答し、また、同年五月三十一日の本院農林水産委員会における竹内猛委員の質問に対して、野崎政府委員は、「確かに今回の法律は、何々権という権利法の形態はとっておりません。したがいまして、特許権、著作権等のような知的所有権に属さないようなものとして立案されておる……」旨答弁しているが、育成者の地位は、現在もなお知的所有権に属さないものと解してよいか。もし変更されたなら、その時期、理由、経緯及び手続きにつき説明されたい。
三 表記答弁書において、植物新品種の特許権の効力が品種登録に優越するとする、種苗法第十二条の五第二項第五号に規定された方法特許の優越性からのいわゆる「もちろん」解釈に関する昭和五十三年六月十六日の参議院農林水産委員会における内閣法制局の答弁の再確認につき答弁がなされていないので、重ねて答弁を求める。
四 政府は、表記答弁書において、昭和五十七年四月九日の本院外務委員会及び同五十九年三月二日の本院予算委員会の答弁につき「植物新品種について特許が与えられることは事実上ないことを背景としてなされた」旨の限定を付したが、審査官は個別の出願への特許法第四十九条第二号の適用の判断に当たり、この限定につき如何なる形で参酌するか。それに関する基準を示されたい。また、その限定は、個別の特許出願に対する審査官の法適用上は単なる事情に過ぎないものであって、認定判断に直接の関係はないものと思料されるが政府の見解いかん。
五 政府は、表記答弁書において、「御指摘のよもぎ案件は、UPOV条約が我が国について効力を生ずる以前の特許出願であり、よもぎ案件への特許の付与は条約上の問題を生じない」旨回答した。一方、特許第一二八一五四四号「ヨモギ属に属する新植物」は、昭和五十二年二月七日に出願され、昭和六十年七月四日に特許査定されたものであり、UPOV条約は、その出願の日と特許査定の日との間の昭和五十七年九月三日に効力を生じた。
 1 特許法第四十九条第二号適用の判断の基準時点は、同法第百二十三条第一項第二号及び第五号、第百二十五条ただし書との関連からみても、出願時でなく査定時におくのが相当と解されるが、政府の解釈を問う。
 2 よもぎ案件について、出願の時点がUPOV条約発効の時点以前であることを理由として条約上の問題を生じないとする解釈は、判断の基準時点が査定の時点であることからみて誤りというべきである。出願の時点との関連においてよもぎ案件への特許の付与が条約上の問題を生じない旨の解釈をなお撤回しないなら、その法律上の根拠を明確にされたい。
 3 よもぎ案件が特許法第四十九条第二号の規定に該当するものとされなかった理由は、昭和五十七年四月九日の本院外務委員会における佐藤満秋説明員の「条約の保護の対象、態様と特許法の方の対象、態様とは異なっておりますので、この条約が特許法第四十九条で適用されることはない……」との答弁、あるいは昭和五十九年三月二日の本院予算委員会における茂串政府委員の同旨の答弁の趣旨に基づくものとするのが最も自然である。UPOV条約が特許法第四十九条に規定する条約に該当しないとする有権解釈につき、法律上の疑義はあるか。
六 現行種苗法の品種登録は、農林水産植物の植物体の全部又は一部の種苗としての利用を効力の対象としている。また、現行UPOV条約第五条は、保護の対象につき品種の種苗の商業的販売を目的とする事項を特定し、一九九一年改正条約案も繁殖素材に関する一定の行為を育成者の許諾を要する行為として特定している。これらすべての規定は、保護の対象が植物体の全体を再生させることを目的として植物体の全部又は一部を利用する態様にかかるもののみを特定したものと解される。
  昭和六十一年四月十日の参議院農林水産委員会における丸谷金保委員の質問に対して、カルスと細胞につき、関谷政府委員は、「カルスというのは、細胞段階のものが培養してそれ自身いわゆる細胞培養ということで……細胞体あるいは細胞体の分泌物かなんかで有用物質が出てくることになりますと、その過程自身は、これは全体が農林水産植物というところまでは参っておらない」、あるいは「最終的に植物体をつくるという目的のものが種苗でございますから、カルスが、あるいは細胞が培養だけしておって、それがもうそこで生産過程おしまい、こういうことになりますと、これは植物になるわけじゃございませんので、その場合のカルスは、これは植物の種苗ではもともとないわけでございましょう」と答弁した。
 1 種苗法、UPOV条約及びその改正案は、増殖一般すべてを対象とするものでなく、種苗あるいは繁殖素材、すなわち最終的に植物体の全部をつくることを要件として効力の対象を規定したものと解してよいか。
 2 細胞及びカルスは、それが植物体の全部を再生する目的に使用されない限り、種苗法、UPOV条約及びその改正案の効力の範囲に含まれないものと解されるが、政府の見解を問う。

 右質問する。





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