衆議院

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平成四年六月十八日提出
質問第一三号

診療報酬に関する質問主意書

提出者  児玉健次




診療報酬に関する質問主意書


 本年四月一日から実施された診療報酬改定は、「医療機関の機能、特質に応じた評価」の名のもとに、病院、診療所などの施設を幾重にもランクをつけて機能別に再編成し、国民皆保険制度のもとでこれまで一応維持されてきた診療についての医師の自由裁量権及び患者の医療機関と医師を選択する自由に大きな制約を加えている。
 次に医療保険制度の面では、「患者ニーズの高度化・多様化への対応」などを口実に、室料差額を病床数の五割まで認める規制緩和をはじめ、予約診療、時間外診療に保険外負担を導入するなど、医療に貧富の差による新たな差別を持ち込んでいる。
 また、公称二・五%の引き上げといわれる今次診療報酬改定は、薬価引き下げや建値制の導入とあわせて、実際には大多数の医療機関でマイナス改定となり、医療機関の経営改善はもとより、看護婦不足など今日の医療危機を解消するにはほど遠いものとなっている。特に、地域の第一線医療を担ってきた一般中小病院は、外来の診療報酬が低く抑えられ、老人収容比率が厳しくなったため、病棟の閉鎖、老人病院や老人保健施設への転換を余儀なくされるなど、存亡の危機を迎えている。また、特定疾患療養指導料の算定対象疾患を、従来の慢性疾患指導管理料の対象疾患から大幅に削減したり、一〇種類以上の内服薬の投与に対する一〇%カットなど、医療の実態や医学を無視した新たな不合理を生みだしている。
 歯科診療報酬については、初診、再診料の医科歯科格差はさらに拡大するばかりでなく義歯の技術料をほとんど据え置くなど、歯科医療軽視の姿勢が依然として続いている。
 以下、今次診療報酬改定について質問する。

一 慢性疾患指導料・同外来医学管理料の廃止について
 1 今回慢性疾患指導料・同外来医学管理料を廃止して、特定疾患療養指導料を設けたが、五月二十日、衆議院厚生委員会での私の質問に答えて、厚生省は「慢性疾患のうち、栄養、運動等の日常生活についての指導がその療養上特に重要な地位を占める疾患というようなものを優先的に取り上げさせていただいた結果」と述べている。何を根拠にしてこういう判断をしているのか。医学的根拠も含めて明らかにされたい。
 2 これまで慢性疾患指導管理料・同医学管理料の算定は、医療機関の区別なく算定できたが、今回の改定により特定疾患療養指導料は、二〇〇床以上の病院においては算定できず、二〇〇床未満の病院でも一〇〇床未満と一〇〇床以上二〇〇床未満の病院とで格差をつけている。これは、どういう医学的根拠で行った措置か。また、病院外来における特定疾患の療養指導のあり方、その経済的保障をどのように考えているか。
二 看護料等入院料関係について
 1 看護料を入院担当の看護婦一人当たりの年間収入に置き換えると、基準看護は約五〇〇万円に、「その他看護料」は約二五〇万円に、また特例許可老人病院等老人看護料を看護婦・介護人一人当たりの年間収入に置き換えると約八〇万円にしかならないケースもある。このように看護料をわけた理由と点数設定上の根拠は何か。
 2 看護婦不足の解決には看護婦の労働条件の改善が不可欠である。しかし、このように低く設定された「その他看護料」では現行の賃金さえ賄えない。厚生省は、看護婦確保に不可欠な労働条件改善の原資を診療報酬のどこに、どのようなかたちで設定しているのか。
 3 その他三種病棟に一年以上入院している患者の投薬と注射の薬剤は一日二五〇点に制限されたが、なぜこうした措置を講じたのか、その理由と医学的根拠を示せ。また薬剤の使用が二五〇点を超えた部分は医療機関に負担を強いるのか、それとも今後患者に負担をさせることを考えているのか。
 4 老人病院に入院している老人患者は、従来にまして検査や処置、注射の手技料、薬剤料などが一般患者に比べて減額されたり、回数の制限を受けている。このような減額や制限は老人差別であると各界から強い批判が出ている。今回、「老人病院」の基準の老人収容比率を、これまでの「七〇歳以上の老人患者が六割以上」から「六五歳以上の老人慢性疾患患者が六割以上」に変更したが、この収容比率の変更はどういう理由で行ったのか。また、この変更により影響を受ける病院をどの程度に及ぶと推計しているか。
三 歯科診療報酬について
 1 歯科診料報酬において、初診料一〇点、再診料五点が引上げとなったが、医科乙表では診療所は初診料三〇点、再診料一〇点がそれぞれ引き上げられた。歯科と医科乙表診療所の初診料、再診料の引上げ点数が異なった理由は何か。
 2 今次改定では、医科診療報酬の甲乙一本化を目指すという事で、甲表の基本診療料を診療所についてはそれぞれ初診料は二点、再診料は二六点引き下げるとともに、外来管理加算四二点を新設し、従来包括されてきた投薬、検査、処置にかかわる多数の項目を個別に算定できることとなった。他方、歯科診療報酬での基本診療料については処方料の新設と、調剤料の制限廃止がうちだされたが、これまで基本診療料に包括されていた検査、処置等は従前のままであり、外来管理加算も歯科では新設されなかった。政府が衆議院予算委員会において「医科と歯科の初診料を構成しております要素は…簡単な処置とか投薬とかいろいろなものがずらずらと、特に医科についてはずっと並んでおりましてしたがって、評価の対象になる項目が違っている」と説明してきた基本診療料の医科歯科格差の根拠は無くなったと思われる。
   それにもかかわらず、歯科と甲表診療所では初診料で三八点、再診料で二八点の格差が存在していることは、不合理な歯科医療軽視と思われるがどうか。
 3 従来、保険給付外診療とされていたダミー三歯以上のブリッジが保険適用となり、あわせてブリッジの支台歯の制限も廃止された。このことにより、ブリッジでの補綴治療と有床義歯の補綴治療のどちらでも可能となる同一の症例が大幅に拡大されることとなった。しかしブリッジの場合、支台歯を取るために健全な歯でも削る必要があることから補綴学会の「ブリッジの適用症と設計」でも「ブリッジのみに固執することなく、部分床義歯の適用なども検討すべきである」と指摘されており、本来、ブリッジか有床義歯かは純然たる学問的、臨床的な判断によって決定されるべきものである。ところが保険点数上では、同一の症例であっても有床義歯とブリッジでは点数にかなりの開きが存在している。例えば前歯が四歯欠損した場合、ブリッジでは前歯部を前装鋳造ダミー、支台歯二本を前装鋳造冠、他の二本の支台歯を五分の四冠とした場合の技術料は六二五二〇円、有床義歯では九六八〇円(人工歯、鋳造鈎含む)と六倍以上の開きがある。更に診察料などすべての診療行為で見ると、前者のブリッジでは約一三万円だが、有床義歯では約三万六千円にしかならない。こうしたアンバランスの存在は補綴歯科学会の指摘にもかかわらず、臨床上の判断が経済的な条件によって左右され「ブリッジのみに固執」する危険性をはらむと思われるがどうか。
 4 NHKの「入れ歯のハナシ」でも指摘されたように、今日、義歯の製作を行う歯科技工士は低賃金と長時間労働のなかで、少なくない歯科技工士が、資格を捨てて転職を図るという深刻な事態になっている。厚生省の「平成2年度衛生業務報告」によっても就業技工士が一九六九年以来二一年ぶりに減少したことが明らかになっている。
   今回の改定では有床義歯関連の改定を見るならば、いわゆる製作料では一歯〜四歯三〇点、五歯〜八歯二〇点、九歯〜一一歯一〇点とそれぞれ若干の引上げに止まり、一二歯〜一四歯と総義歯は据え置かれた。今回の改定で、歯科技工士の状態が改善されるどころかますます深刻な事態に追い込まれる事は必至である。高齢化社会を迎えて義歯の技術料を引き上げる事は、歯科技工士の深刻な状態の改善とともに、「保険で良い入れ歯を」との国民の切実な願いに応える道である。従って緊急に義歯の製作料をはじめ補綴関連の点数を、二倍以上引き上げるべきではないか。
   全体の診療報酬で経営が成り立つなら個々の不採算は問題にならないという厚生省の方針により、不採算となる部分が増加した場合、経営が成り立たなくなるため、どうしても不採算部門を押さえるということにならざるを得ない。現実に、義歯の診療では時間や工程を省略するという「経営努力」が行われておりその結果、義歯に対する患者の不満が半数に及ぶという現実を生んでいる。厚生省は、この方針自体を改めるべきであると思うがどうか。
 5 歯科技工士の問題は、経済的な改善とともに、保険診療における役割の確立と評価が不可欠である。今次の改定では、さまざまな制約があるとはいえ歯科衛生士の行う指導を加算という形で認めた事は、今後の歯科衛生士の役割と評価を向上させていく上でも貴重な改善であった。歯科技工士においても、保険診療の上で専門技術職としての役割を明確にし、あわせて歯科技工の点数も明確にすることが極めて重要であると考える。
   厚生省は五月二十日の厚生委員会での私の質問にたいして、一九八八年六月の大臣告示、及び関連通知で「製作技工に要する費用がおおむね百分の七十、製作管理に要する費用がおおむね百分の三十」としたことをもって「歯科技工を委託する場合の円滑な実施に資しているものと考えておる」と答弁した。これはなんら合理的根拠も示さないまま従前の点数の上で七対三の線引きしたものに過ぎず、明文において歯科技工士の技術・労働をなんら評価したものとなっていない。また実効性を担保したものでもない。
   診療報酬で、歯科医師のいわゆるチェアサイドの技術料とは別個に、歯科技工士の技術として明確に区分した評価を設定すべきであると考えるがどうか。
四 診療報酬の決め方について
   今日、診療報酬は、国民皆保険医療の下で、国民医療と密接な関わりをもっている。
   それは、てんかんが特定疾患療養指導料の対象疾患からはずされたことで、てんかん患者がてんかん医療の後退と不安をもったことでも明らかである。しかし、そのような国民がうける医療の要にある診療報酬の決め方が必ずしも国民の中で明確になっていない。だからこそ、マスコミも密室審議で決められてしまうと社説で批判するのである。現在の診療報酬の決め方、基準はどうなっているのかを明らかにされたい。
   日本医事新報の診療報酬特集をみると、外科系学会、内科系学会の社会保険診療報酬の担当者も、今度の改定について不満を表明している。これは、医学的根拠をあいまいにしたまま、医療の実態を軽視した診療報酬点数の諮問案づくりを非公開で行っているからである。医学的根拠を明確にし、今日の医療の実態をも反映するよう、中医協の専門委員会を拡充し、関係学会より委員を委嘱して、そこに点数諮問案の作成を依頼するようにしてはどうか。
   また、国民、患者の意見を診療報酬に反映させるよう、中央・地方の公聴会も開催しとりあえず中医協の議事録を公表するなどの手続きをとるべきだと考えるがどうか。

 右質問する。



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