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平成六年十二月五日提出
質問第三号

歯科医療に関する質問主意書

提出者  岩佐恵美




歯科医療に関する質問主意書


 「保険の入れ歯でも、良く噛めて、話せるようにしてはしい」との患者・国民の切実な願いを反映して、本年四月の診療報酬改定では、総義歯の製作料などが一定程度引き上げられた。しかし、今回の改定では義歯の中でも頻度の少ない総義歯や多数歯欠損義歯の製作料を引き上げたものの、入れ歯の大半を占める少数歯欠損義歯の製作料や歯科医師の診断・型取り・かみ合わせなどの技術料はすべて据え置かれた。また義歯調整料が復活はしたが、それと引き換えに有床義歯指導料や関連検査の一部が突如廃止された。
 さらに重大な問題は、本来であれば条件を整えて全額保険導入すべき金属床義歯が特定療養費制度に組み込まれ、ごく一部分しか保険給付されなかったことである。
 また、かねてより歯科技工士より要望されていた、歯科技工士の技術と労働を保険点数のなかで独立して評価するという課題も放置されたままである。高齢化社会を迎えて、義歯の保険診療の改善が重要になっていることは、中央社会医療協議会の基本問題小委員会報告、同歯科小委員会報告でも指摘されていることであり、引き続き改善が必要である。
 そこで、本年四月の診療報酬に関する疑問点と、厚生省が積極的に推進している八〇二〇(八十歳で二十本の歯を保つ)運動にかかわる問題について以下質問する。

一 四月診療報酬改定について
 1 本年四月の診療報酬改定で、総義歯、及び多数歯欠損義歯の製作料を引き上げながら、義歯の内頻度の高い少数歯欠損義歯の製作料を据え置いたため、多数歯欠損義歯と少数歯欠損義歯とのあいだに著しい不均衡が生じた。なぜ少数歯欠損義歯の製作料を据え置いたのか。
 2 歯科医師の技術料である、診断、型取り(印象採得)、かみ合わせ(咬合採得)などの基礎的技術料をなぜ据え置いたのか。
 3 有床義歯指導料を廃止した理由を明らかにされたい。
二 歯科技工士の評価について
 1 厚生省は、従来より義歯の製作に重要な役割を担っている歯科技工士の保険点数上の独立した評価について、「義歯に関する製作管理及び製作技工は一連の行為であるため診療報酬において歯冠修復及び欠損補綴料として一体的に評価している」との見解を示し、歯科技工士の技術と労働の独立した評価の必要性を認めていない。しかし実際の義歯の臨床では、歯科医師による診断と印象採得をもとに義歯が設計され、その設計に沿って歯科技工士がろう義歯を作成し、歯科医師がそのろう義歯を基に咬合採得を行い、人口歯を配列し、再度歯科技工士の手で義歯が製作されるなどその過程は判然としている。事実、厚生省は昭和六十年の大臣告示によって義歯の製作料には義歯の製作管理と製作技工という二つの要素があり、その配分は概ね三対七であると示している。こうした配分に合理的な根拠があるとするなら、保険点数の中で歯科医師と歯科技工士の行為をそれぞれ独立して評価することは何ら問題はないと考えるがどうか。
 2 義歯製作の実態からいえば、近年は外注技工の割合が増大しており、少なくとも外注化されている義歯製作についての評価は行いうると考えるがどうか。
三 特定療養費について
 1 本年四月から金属床総義歯が特定療養費の対象となったが、その具体的な請求方法は金属床総義歯の自由料金から該当する保険点数を差し引いて患者より請求するという方法になっている。保険医療機関が金属床総義歯を行った場合に保険請求を行う点数には、初診料、再診料、補綴時診断料、印象採得、咬合採得など歯科医師の技術料が含まれている。また当然ながらこれを差し引くべき自由料金にも技術料が含まれている。そうするとこの方式は技術料差額と理解すべきものと考えるがどうか。
 2 昭和五十一年、厚生省保険局長名で「従来の歯科領域における差額徴収に係る通知を本年七月三十一日に限りすべて廃止することとした」との通知を出している。
   これは、歯科の差額徴収に対する国民の批判が高まるなかで、中央社会医療協議会の「歯科の差額徴収は歯科材料費のみに限ること。このため、従来の差額徴収に関する局長、課長通達は廃止し、新たな取り扱いを通達する」との答申を受けて出されたものである。
   その後この保険局長通知が廃止され、また改変されたことはあるか。もし廃止あるいは改変されていないとすれば、今回の金属床総義歯の扱いはこの通知と矛盾すると考えるがどうか。
 3 昭和五十九年五月十日の健康保険法改正にかかわる衆院社会労働委員会での質疑において、当時の吉村保険局長は、「現在のところ、差額徴収の方式を利用して技術料にかかわる差額徴収をやろう、こういう考えはございません」と述べている。今回の金属床総義歯の特定療養費への導入は、国会答弁を一方的に反故したこととなり、国会軽視も甚だしいと考えるがどうか。
四 八〇二〇(ハチマルニイマル)運動について
 1 平成元年に出された「成人歯科保健対策検討会中間報告」において、八〇二〇運動が提唱されて以来、すでに五年が経過している。この八〇二〇を実現する上では、歯科疾患の早期発見、早期治療と予防活動が大きな意義を持っていることは当該報告においても指摘されている。
   また、老人保健法の附帯決議において「老人保健法に基づく歯科の保健事業の確立、特に歯槽膿漏等に対する歯科健診の導入に努めること」(昭和五十七年八月三日参院社会労働委員会)と歯科の保健事業を早期に実施することが盛り込まれながら、未だに歯科検診が基本検診に盛られていないことは厚生省の怠慢と言わざるをえない。老人保健法に基づく基本検診に、歯科検診を追加するべきと考えるがどうか。
 2 厚生省は来年度概算要求に、総合検診と合わせて歯周疾患チェックという項目をあげているが、これは基本検診の検診項目として実施する予定か。もし基本検診の検診項目でない場合は、どの様な方法で実施する予定であるのか明らかにされたい。
 3 昨年提出された、中央社会保険医療協議会診療報酬基本問題小委員会報告書では「小児期の予防や治療がその後の歯の健康に大きな影響を及ぼすと言われている」として診療報酬のあり方を検討していくと述べている。
   予防については、まず老人保健法に基づく基本検診の必須項目に歯科検診を追加し、健康教育など拡充するべきであって、安易に医療保険に予防を組み込むことは国の責任が曖昧になるなど問題が多いと考えるがどうか。

 右質問する。





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