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平成七年十二月二十三日提出
質問第二四号

原子力発電所の地震・地盤に関する質問主意書

提出者  秋葉忠利




原子力発電所の地震・地盤に関する質問主意書


 平成七年九月二十九日、原子力安全委員会の原子力施設耐震安全検討会(以下「検討会」という)は、平成七年兵庫県南部地震を踏まえた原子力施設耐震安全検討会報告書(以下「報告書」という)で「兵庫県南部地震を踏まえても我が国の原子力施設の耐震安全性を確保する上で基本となる指針の妥当性が損なわれるものではないとの結論を得た」としている。
 報告書の検討手法や検討内容に問題があると思われるので、以下質問する。

一 検討会の目的、任務について
  検討会は「兵庫県南部地震を踏まえて」設立されたとある。本来は現行の地震動の評価方法とそれに基づく原発の耐震安全評価が妥当なものであるかどうかを兵庫県南部地震の事実に照らして検証することにあると考えるがこれで良いか。
二 検討会の検討内容について
 1 最大速度振幅について
   各原発の設置許可申請書に用いられている現行の最大速度振幅の算定法に今回の地震条件を入力した場合は観測値と合致するのか。検討報告でこうした評価をしないのはなぜか。
  @ 評価地点に定めた神戸大学で兵庫県南部地震の震源位置でM7・2の地震があったとして現行算定法で算出すると何カインとなるのか。神戸大学は地下何mで開放基盤面の条件を満たしているのか。
    また、地震計設置地点までの増幅率はいくらか。
  A 松村組技術研究所で兵庫県南部地震の震源位置でM7・2の地震があったとして現行算定法で算出すると何カインとなるのか。観測値と合わない理由は何か。
  B 想定した地震(P43に示された7ケース)による神戸大学地点の加速度、速度はそれぞれいくらか。
 2 報告書P13の入倉報告(福島・田中式)について
   この理論は検討報告書のなかでいかなる位置付けがされているのか。福島・田中式を評価するのであれば、各原発についてこの式を用いて再評価すべきでないか。距離の取り方は、震央距離でなく断層からの最短距離とすべきでないか。
 3 応答スペクトルについて
   報告書ではM7・75の想定値とM7・2の観測値を比較している(P47第5 ― 5図)。これでは大崎スペクトルの妥当性を評価できないのではないか。
   大崎スペクトルは兵庫県南部地震で観測値より小さくなり過小評価となる欠陥が明らかになったと考えるがどうか。
   報告書では原発の重要施設の固有周期が短周期に集中している(P19)とされているが耐震設計の対象とされるすべての施設、機器の固有周期はいくらか。
 4 上下動について
   報告書は断層から200km以上離れた観測記録を含む図(P48第5 ― 6図)を示し、水平動と上下動の比率の平均が0・45であることから静的振動について水平動の1/2という現行指針は妥当であるとしている。また、報告書では水平動が最大を示した同時刻での上下動での比率をとってこれが小さいとしている(P51第5 ― 9図)。
   しかし、同じ引用図で断層から20km以内の近距離記録では2/3以上になっており、距離が近いほど上下動の比率が大きくなっていると読み取ることができる。水平動加速度最大値と上下動最大値の近距離記録が示した値を尊重すれば水平動と上下動の観測値の比率は2/3〜1である。
  @ 水平動が最大を示した同時刻での上下動での比率を採用する理由は何か。
  A 観測事実を踏まえるならば、諸外国並に2/3〜1とせねばならなくなると考えるが、なぜ現行指針の1/2で妥当といえるのか。
  B 動的解析にも上下動を含めるべきと考えるがどうか。現行指針で良いならばその理由は何か。
 5 活断層の活動期間を5万年に限定する根拠は何か
   耐震設計審査指針は活断層評価を基準地震動3で1万年、基準地震動銑で5万年に限定している。その理由として「地質学的証拠と工学的判断」とか「大地震の発生がきわめて低い活断層に対して、再びそれを予期することは工学的見地からは必ずしも適切とはいえない」等を上げている。
  @ 工学的判断、工学的見地とはどのような意味なのか。
  A 耐震設計審査指針は1978年に策定され1981年に改定されているが、活断層の活動時期を決定するトレンチ調査が日本で実施されたのは1978年以降であり指針策定には反映されていない。
    トレンチ調査で指針の問題点を示す新たな知見が得られている。例えば、『活断層研究』第11号の「1988年深溝断層(西深溝地区)トレンチ調査」や『活断層研究』第13号の「陸上活断層の最新活動期の表」である。トレンチ調査の結果を踏まえて見直す必要があると考えるがどうか。
  B 活断層の活動度ABCは地震の規模を示すものではなく発生間隔を示すものである。明治以降で地震断層の出現を伴った地震10例のうちA級は2例、B級は兵庫県南部地震の野島断層を含めて4例、C級は5例とされている。
    B、C級を軽視する現行指針の見直しが必要ではないのか。見直し不要ならばその理由は何か。
 6 活断層の延長に関する事項
   検討委員会は活断層の評価として六甲山東麓から淡路島に至る複数の活断層をつなぎあわせて55kmとしてM7・75の地震を想定している。兵庫県南部地震で動いた断層は、神戸側では右横ずれ南東落ち淡路島の野島断層では右横ずれ北西落ちで形態は異なっている。
   しかし、実際の安全審査では個々の断層を性質が異なるとの理由で、単独で評価して小さな地震しか想定していない。敦賀原発では一直線上に並ぶ柳ヶ瀬断層と甲楽城断層を分断し柳ヶ瀬断層のみを評価対象としている。また、柏崎原発では信濃川左岸のA級活断層群のうちの一部の延長17・5km区間のみに分断限定し評価対象としている。
   なぜ、神戸では連続して評価し、実際の原発安全審査では分断して個別評価しているのか。
三 東京電力の柏崎・刈羽原発の地盤・地震問題について
 1 地震地体構造による地震規模について
   柏崎原発で、地震地体構造から想定される地震規模は、通産省パンフ『原子力発電所の耐震安全性』P7で引用している表他1980ではM7・75となっておりM7・75とされるべきと考える。しかし、気比の宮断層にM7・0、長野県北部にM7・5と小規模に想定されているにすぎない。
   なぜ、M7・75としなかったのか。
 2 安田層の形成年代、構造運動、直下断層について
   柏崎原発のすべての炉心直下には安田層を切る断層が存在し、安田層堆積時の構造運動があったことが判明している。これら直下断層の活動時期は安田A3層までを切るもの、A2層を切るもの等が存在することから異なっている。
   安全審査では、安田層の上部を覆う番神砂層を切らないので問題ない。第四紀後期以降の構造運動はないとされている。
   その後、安田層の中から広域火山灰の御岳pm ― 1を含む数種の火山灰が確認された。さらに、近接した調査地点でも同一火山灰の存在標高が大きく異なっている。このことは平成七年七月四日と十一月二十一日に科学技術庁、通産省が参加して柏崎市で開かれた説明会でも問題提起されており、同席の垣見俊弘氏も重大視していたことである。
  @ 安田層は第四紀後期の地層である。安田層を切る構造性の断層の存在を認める一方で第四紀後期の構造運動はないと主張するのは矛盾であり訂正されねばならないと考えるがどうか。矛盾しないならその理由は何か。
  A 安田層中から広域火山灰の御岳pm ― 1が発見された事実は、安田層の堆積時期は十二〜十四万年ではなく八〜十万年であることを示すと考えるがどうか。
  B 近接した調査地点で同一火山灰の存在標高が大きく異なる事実は、原発敷地を含む西山丘陵一帯の地殻構造運動が継続していることを示すものと考えるがどうか。
  C 安田層の形成年代が新しくなり、地殻構造運動の継続が確認されても、直下断層の活動を無視できるのか。無視できるならばその理由は何か。
  D 新たな指摘を踏まえて、国の責任で安田層の火山灰分析や形成年代、構造運動の有無を調査すべきと考えるがどうか。調査不要ならその理由は何か。
 3 信濃川に沿う活断層や地震空白域について
   近年、ユーラシアプレートと北米プレートの境界は佐渡沖からフォッサマグナに至るのではなく、信濃川に沿ってフォッサマグナに至るとの学説が提唱されている。また新潟平野に地震空白域が存在しているとの警告もなされている。
   これらの問題が、柏崎原発の安全審査では検討されていない。
   速やかに検討すべきと考えるがどうか。検討不要と判断するならその理由は何か。

 右質問する。





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